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Social Impact Day 2019 開催報告

社会的インパクト評価、マネジメントに関する国内外の最新動向が分かる「Social Impact Day 2019」が開催された。本レポートでは、主に基調講演の内容とパネルディスカッションで共有された4つの実践事例を紹介する。


目次

  • 開催概要
  • Social Impact Day とは
  • 各プログラム
  • オープニング(青柳 光昌氏)
  • 基調講演(クララ・バービー氏)
    「インパクト測定とインパクト・マネジメントのエコシステム形成に向けて」
  • 2018年度事業報告と2019年度事業計画(社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ)
  • インパクト・マネジメント・アワードについて(高木 麻美氏)
  • パネルディスカッション:社会的インパクト・マネジメントの事例紹介

開催概要

<プログラム>

日時:2019年7月2日(火) 13:00 – 16:30
場所:笹川平和財団ビル (東京都港区虎ノ門1-15-16)
主催:社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ、一般財団法人社会的投資推進財団
後援:公益財団法人笹川平和財団
助成:公益財団法人日本財団


Social Impact Day とは

 Social Impact Dayとは、社会的インパクト・マネジメントに関する国内外の最新動向を発信する日本最大級のイベントであり、今年で4回目を迎えた。今年は主催団体が名称を社会的インパクト評価イニシアチブから社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブに改称(2019年1月)してから最初のSocial Impact Dayであり、評価をマネジメントのためのツールとして捉え、目指す社会的インパクトの実現を加速化するために活用していくことについて議論した。

これまでのSocial Impact Day :
第3回(2018年6月27日)社会的インパクト「評価」→「マネジメント」へのシフト

第2回(2017年6月29日)社会的インパクト評価推進に向けたロードマップ

第1回(2016年6月14日))いよいよ動き出す社会的インパクト評価の未来


オープニング

イベントの開会挨拶を行った青柳 光昌氏(社会的投資推進財団 代表理事)からは、欧米では社会的インパクトを「メジャーメント(測定)」するだけでなく、事業に活用する「マネジメント」の概念が進んできており、評価を行うことが目的ではなく、社会的インパクトを高めるためにどのように事業へ反映していくかがポイントであるとの議論が進んでいることが紹介された。本日の議論でも「社会的インパクト評価」のマネジメントへの実装について議論を深めていきたい、との抱負が述べられた。


基調講演

インパクト測定とインパクト・マネジメントのエコシステム形成に向けて」
(Building consensus on impact measurement and management)

クララ・バービー氏
CEO, Impact Management Project

◼️インパクト・マネジメント・プロジェクトとは <当日資料>

 社会的インパクトについて、現在はそれぞれの団体が独自に計測・分析・集計した内容を報告しているのが実態です。自己申告になるので、肯定的なデータや大きな数字が成果として報告される傾向がありますが、報告を読んでいると、それが結局どのくらい良い成果なのか、判断できないことに気づかされます。
 この30年を振り返ってみて、このセクターの未来のために、新たなアプローチの必要性を感じています。団体間のインパクト競争を加速させるのではなく、インパクトを生むために、どうインパクトを明らかにしていくのかを議論していく必要があるのです。
 例えば、現在、世の中には会計基準というものがあります。過去を振り返ると、1920年代には世の中に会計基準は存在しておらず、各企業は異なる方法で会計報告を行っていました。しかしそれでは数値の比較が行えず、また用語の定義や使い方が異なることで共通の理解を進めることが困難でした。そこで会計基準を設ける努力がなされ、現在は、全ての企業は一定の会計基準に則って会計報告を行っています。
 インパクト・マネジメント・プロジェクト(以下、IMP)は、このインパクトの扱いについて共通認識を図っていくために始まりました。財団、ファミリー財団、社会的インパクト投資家、一般の機関投資家、開発援助に携わる諸団体、企業、研究者など、ありとあらゆる立場の者が参画しています。多様な立場の人々が議論していくことが大切だと考えています。 

 当初、IMPは15の組織が集まって協議を開始し、1年半が経つ頃には2000を越える組織が参加するようになりました。分野・業界をまたいで議論すべきという認識が醸成され、この半年で多くの団体の間に共通認識が生まれてきています。インパクトに関するデータ、数字の扱い方、前提、第三者を交えた評価など、いくつかの項目について合意ができてきています。
 日本でもインパクトについて、メジャーメント(測定)からマネジメントへシフトし始めていると聞き、嬉しく思っています。マネジメントの意識をもって、インパクトの測定を行うことはとても重要だからです。

◼️IMPが成し遂げてきたこと

IMPでは今までに以下の点について議論し、合意を図ってきました。

  1. インパクトの5つの観点
  2. インパクト・データ・カテゴリー
  3. ABCアセスメント
  4. 投資家の貢献
  5. インパクト・クラス

これらの5つについて説明します。

1.インパクトの5つの観点

私たちの行動すべては、人々や地球に何らかのインパクト(影響)を与えています。どのようなインパクトであるかを理解するために、5つの観点で見ていくことが必要です。

①どのような成果か(What)
②誰にとっての成果か(Who)
③どのくらいの成果か(How much)
④どのような貢献か(Contribution)
⑤リスクは何か(Risk)

2.インパクト・データ・カテゴリー
 上記の5つの観点それぞれに、インパクト・データ・カテゴリーが存在します。

①どのような成果か(What)
 まず、「アウトカム(成果)」を明らかにします。「アウトプット(結果)」のように数えることが容易な数字だけでなく、その後にどのように行動が変わったかを確認します。例えば、ワクチンの本数は測りやすいですが、本当に確認すべきは、人々が免疫を得ることができたのか、本当にそのワクチンが効果をあげたのか、ワクチンを提供する場にワクチンを必要な人が全員来てくれたのか、です。

②誰にとっての成果か(Who)
 受益者は誰なのか、人々は何を期待しているのか、「本当に人生が変わった」と思っている人は誰か、その人たちにとって必要な活動だったのか、なぜか。こういった質問に答えていく必要があります。

③どのくらいの成果か(How much)
 簡単な例としては、SDGsの指標があります。SDGsの指標の達成について報告する場合は、例えば、雇用者数などの数字をみていくことで、日本とアメリカを比較できます。これは、労働基準や最低賃金など、雇用に関する共通の認識が前提として存在するからです。さらに、以前は最低賃金を満たしていればよかったような場合でも、現在は、「満足しているか」という項目を追加する場合もあります。最低賃金だけでなく、満足できるような賃金水準を定めていくことで、より正確に成果を把握できます。

④どのような貢献か(Contribution)
 活動(事業、介入)が生じた変化に対してどのように貢献したのかを確認します。受益者にどのような変化が生じ、それは活動によって生じた変化なのか。何もしなくても変化が起こったのかもしれません。可能であれば、比較対象群を使って比較します。

⑤リスクは何か(Risk)
 リスクには2つの種類があります。ひとつは、成果が本当に生まれているのか、というデータに関する不確実性です。受益者がいくつかのサービスを同時に受けている場合、当該の活動によって変化したのかを確実に証明することは困難です。もうひとつは、変化が持続しないかもしれない、というリスクです。社会的企業の場合は、収益モデルを維持するために、サービスからドロップアウトしてくれる人がいる方が良いと考える場合があります。変化の効果が持続しないことと企業の収益が上がることがトレードオフになっているかもしれません。

 インパクトを提示する際には、この5つの観点それぞれから説明していくことが必要になります。データを包括的に集めることが難しいことも多く、すべてを揃える必要はありません。しかし、データが収集できない場合には、どんなデータ収集の課題やリスクがあるのかを把握し、明らかにしておくことが大切です。

3.ABCアセスメント
 ABCアセスメントのABCとは以下を指します。インパクトの5つの観点それぞれについて、ABCについて考えます。

A:ネガティブなインパクトを避ける(Acting to avoid harm)
B:ステークホルダーへポジティブなインパクトをもたらす(Benefiting stakeholders)
C:問題解決へ貢献する(Contributing to solutions)

 インパクトは、生じることを意図しているポジティブなインパクトだけでなく、ネガティブなインパクトも含め、すべてを把握していかなければなりません。まず、ABCアセスメントをすることで、活動(事業、介入)からネガティブなインパクトが生まれていないことを明らかにしていきます。そして、AからBへ、BからCへとに、活動をより良いものへ発展させていくのがマネジメントです。インパクト・マネジメントとは、どうしたらインパクトがより良くなるかを常に考えて、活動を運営していくことです。

4. 投資家の貢献
 インパクト投資に関心のある投資家は増えてきており、資金を活用してどのようにインパクトを創出できるのかを知りたい、という意欲が高まってきています。投資家にはいかなる役割があるのでしょうか。以下の4つの戦略を用いて、投資先の活動に影響を与えることができます。

①シグナルの送信
 投資家は、特定の投資先に投資するしないのシグナルを送ることで、投資先のインパクトを求めることができます。しかし、シグナルだけでは十分ではありません。

②積極的な関与
 投資家は専門知識、ネットワーク、影響力を活用して、企業が社会や環境に与える影響を改善できます。関与(エンゲージメント)には、企業との対話、業界標準の作成、取締役会への参加、実践的なサポートなど、幅広いアプローチがあります。

③資本市場の形成
 投資家は、インパクト投資を行う市場を形成することで、新しい機会を生み出すことができます。より長期、より複雑で、リターンに見合わないリスクがあると考えられがちな投資を実施していくことも不可能ではありません。

④柔軟な資金提供
 企業のインパクト創出をサポートするために、通常よりも低い財務リターンであってもリスクを調整し、投資していくことの意義を認識できます。

5.インパクト・クラス
 ABCアセスメントと投資家の4つの戦略を組み合わせることで、インパクト・クラスを明確にすることができます。

◼️ 今後、IMPが目指すこと
今後、この流れを推し進めていくために、IMPとして取り組んでいきたいことを紹介して、講演を終わりにします。IMPでは2000を越える様々な組織・機関と連携しており、どの立場から見ても理解できるような基準を、今後2年間かけて整えていくことで合意しています。

インパクトに関するもっとも大切な原則は、「価値を可視化すること」です。インパクトを示す際に、データだけでなく、何が基準になっているのか、ボンネットを開けて中を見えるようにしていく必要があります。
 その意味で、「プロセスを設置する」ことが必要です。投資家、投資先双方が、インパクト・マネジメントのプロセスを明確化・透明化することが求められます。
 次に、パフォーマンスとして、何を「測定・開示する」のか、何を報告に入れるべきなのか、サプライチェーンの中のどこで実施するのか、ESGの諸概念を活用して分析フレームワークを決めていくことが必要です。
 それによってベンチマークを定め、パフォーマンスを「比較する」ことができるようになります。個々の項目をベンチマークするのではなく、インパクトの指標に沿ってベンチマークしていくのです。例えば、ABCアセスメントの「A:ネガティブなインパクトを避ける」だけを実施していても、それが分かるように記載されていれば、問題はありません。
 このように基準を設けることで、個々の企業の取り組みを、比較できるようにし、それが事業の「改善につながる」ことになります。
 このようなビジョンと計画に従い、IMPではすでに実践促進(「プロセスを設置する」)、パフォーマンス測定・開示(「測定・開示する」)、ベンチマーキング(「比較する」やレーティング)の分野で作業部会が走り始めています。
 日本のみなさん、これらの未来に向けた取り組みに、ぜひご参画ください。


2018年度事業報告と2019年度事業計画
社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ

<当日資料>

社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)は2016年に設立したネットワーク組織である。2019年1月に社会的インパクト評価イニシアチブから改称した。社会的インパクト評価、マネジメントの推進を図っていくためのネットワークで、162団体が加盟している。
 2016年の立ち上げ以降、2020ビジョンを策定し、「文化醸成」「インフラ整備」「事例蓄積・活用」におけるアクションプランを掲げている。アクションプランをもとにワーキンググループ(以下WG)単位で議論、活動してきた。この1年の活動としては、昨年のSocial Impact Dayで発表した通り、「評価」から「マネジメント」へのシフトを図り、概念の再整理として、基本原則、フレームワーク、ガイドラインをとりまとめた。
 2019年度も引き続き、WGを中心に活動して、各WGの横断的な活動も行なっていく予定である。2020年後のロードマップ作成にも着手する。社会的インパクト・マネジメント実践事例を増やしてゆき、社会的インパクト・マネジメントをより広く知ってもらう活動にも注力する。
 各ワーキング・グループの活動については資料を参照いただきたい。


 インパクト・マネジメント・アワードについて
高木 麻美氏

事例蓄積WGでは、社会的インパクト・マネジメントをやっていきたいと思っている人へ向けて、1,000の事例を収集、サイト上で公開し活用することをゴールに活動している。
 社会的インパクト・マネジメントを広げる雰囲気作りも含めて、アワードの開催を検討している。優良事例だけでなく、スタートアップの事例も奨励することを目指し2つの賞の設置を検討している。今年の秋から冬にはアワードの概要決定・公表を行い、来年のSIDでアワードの発表を目指している。是非、応募を検討していただきたい。


パネルディスカッション
社会的インパクト・マネジメントの事例紹介

登壇者

幸地 正樹氏 ケイスリー株式会社 代表取締役
大久保 亮氏 株式会社Rehab for Japan 代表取締役
岩本 真実氏 K2インターナショナルグループ / NPO法人ヒューマンフェローシップ 代表理事
高塚 清佳氏 新生企業投資株式会社 シニアディレクタ

後半のパネルディスカッションでは、最初に、幸地 正樹氏(ケイスリー株式会社 代表取締役)より、社会的インパクト・マネジメントについての説明がなされた。
 社会的インパクト・マネジメントは社会的・環境的な変化を可視化(定量・定性)し、そのプロセスと結果を事業改善・意思決定に活用することである。社会的インパクト・マネジメントは、民間事業者(営利・非営利)、資金提供者、行政、中間支援組織など、多様なステークホルダー取り組むべきであるとし、それぞれが取り組んでいる社会的インパクト・マネジメントの事例紹介が行われた。 

◆幸地 正樹氏 ケイスリー株式会社 代表取締役 <当日資料>

ケイスリーは2018年度より神奈川県と「SDGs社会的インパクト評価実証事業」を実施している。「SDGs×評価×金融のエコシステム形成 」というビジョンのもとに、多様なステークホルダー間(事業者、市民・消費者、資金提供者、行政)の対話・活動による SDGs達成に向けた持続的な価値の創出を目指している。 社会的インパクト評価を用い、SDGs達成に向けた変化の可視化をし、事業の改善、経済的価値との融合(資金提供)につなげ、組織価値の向上と持続可能性の向上につなげる。2018年度は主に事例の実証や「評価実践ガイド」の作成等を行った。2019年度は、社会的インパクト・マネジメントの現状と実態を紹介する事例集の発表、人材育成のための実践者育成プログラムなどを実施する。

◆大久保 亮氏 株式会社Rehab for Japan 代表取締役 <当日資料>

 当社は、デイサービスの個別機能訓練加算ソフトを提供している。社会的インパクト評価においてはスタート段階ではあるが、統計をいかにマネジメントに活かしていくかを検討している。
 リバビリ専門家の不足などの課題を抱えている介護現場において、個別機能訓練計画書の自動作成、リハビリプログラムの自動提案を行っている。同社のサービースの普及により、1)デイサービス施設における介護人材の不足、2)介護現場の労働生産性向上、介護の質の向上、という社会課題の解決を目指している。

◆岩本 真実氏 K2インターナショナルグループ / NPO法人ヒューマンフェローシップ 代表理事 <当日資料>

K2インターナショナルグループは1989年より活動を開始。生きづらさを抱える若者の住まい、仲間、仕事を支援している。当法人は、モデル事業としてSROI評価に参加(2014年)したのをきっかけに社会的インパクト評価を知った。当時は社内での社会的インパクト評価への認知は全くなかったが、新たな視点を与えられ、社内効果は大きかった。
 同年に自主事業として、SROI評価報告書の作成に取り組み、社内データのクラウド化をスタートさせ、徐々に業務改善、データの蓄積・分析に慣れていった。その後、内閣府「社会的インパクト評価の実践による人材育成・組織運営力強化調査」に参加(2017年)し、調査分析を行い、実際に活動の様々な場面でデーターを活用するとともに当事者向けの冊子の作成もした。そして、2018年より神奈川県の「SDGs社会的インパクト評価実証事業」に参加したことにより、事業の課題発見の機会となり、1事業を終了するという事業の見直しを行った。
 今後は、団体としてはデータ収集から評価までを日常的な業務フローに取り込むことを目指している。なお、「若者支援」の評価指標が曖昧であること、社会的インパクト評価が実際の行政との連携事業などで活用されていないことに課題を感じており、業界団体全体での評価指標の検討や、委託・連携事業の事業評価への社会的インパクト評価の導入など、関係団体と共に協議していけると良い。

◆高塚 清佳氏 新生企業投資株式会社 シニアディレクター 

 新生企業投資は新生銀行の100%投資子会社である。邦銀初のエクイティ投資家としてインパクト投資を実践している。「働く人」を中心に据え、子育てや介護など多様なライフイベントを 経ながらも「働き続けられる」社会の実現を目指し、日本政府によるSDG推進施策の1つ目である「People:あらゆる人々の活躍の推進」に取り組んでいる。
 2017年に1号ファンド(子育て支援ファンド)を国内の子育て関連ソーシャルベンチャーに投資した。本年6月に設立した2号ファンドは共同GP運営体制で社会的投資推進財団(SIIF)と運営している。外部投資家の参加型で、エコシステムの構築を目指すと共に、投資先に加え、ファンドが 創出するインパクトも可視化する予定である。 「ソーシャルIPO」の取り組みを通じ、社会性評価の積み重ねを資本市場における経済性に転換することを目指す。

各事例の取り組みの紹介後、以下のテーマについて議論が交わされた。

1. 社会的インパクト・マネジメントを実施することによる効果は何か。

岩本:支援している若者の家族への調査を実施することにより、悩みを可視化することができた。ロジックモデルを通して、事業の課題、強み弱みを可視化することができ、優位性のある事業に特化する判断ができるなど、重要な意思決定をする機会になった。データ収集の作業は日常業務にルーチン化されているが、評価まで組み込まれていないのが課題である。

大久保:介護業界がアウトカム志向になっていることから、事業者として生き残るための競争優位性を保つため、社会的インパクト・マネジメントを実践している。介護スタッフとエンジニアなど社内のコミュニケーションの軸になっている。

高塚:インパクト投資を受けることにより、マネジメントに社会的インパクト評価を取り入れるきっかけになる場合がある。社会的インパクト評価は組織の長期的なビジョンをぶれさせないツールになり得ると考える。

2. 誰が社会的インパクト・マネジメントを推進しているのか。

大久保:まだマネジメントまでは行きつけていないが、開始の決定は代表が進め、マネージャーへ協力を依頼している。

岩本:組織内に段々と広がっていったと感じるが、最初にしかける人は必要であり、マネージャーが担っている。社会的インパク評価の手法を身につけることで、成果を可視化するくせがついた。

高塚:投資家と投資先の会社と協力して推進しているが、経営陣にロジックモデルを提示するなどは、投資家側の主導で行なっている。2号ファンドではSIIFとの協働もあり、IMPなど社会的インパクト評価のフレームワークを参考にしグローバル・スタンダードも意識した提案をしていこうとしている。

3. 社会的インパクト評価、マネジメントを実践する上での課題はなにか。それをどの様に乗り越えようとしているか。

岩本:行政委託事業の報告書は従来のものと変わりない。そういったところにも社会的インパクト評価の結果を示していけると良い。評価結果を発表する場所がなかったり結果を十分に活用ができていない。もう少し外部にアウトプットができると良い。若者支援の業界全体での社会的インパクト評価への認知が高まり、業界全体として取り組み、インパクトまで生み出すことができると良い。

大久保:開始したばかりなので想像の範囲だが、評価ができる資金と人材の確保だと思う。事業のスタートアップの段階において評価人材を雇用する、外部専門家を確保するのは難しいと感じている。

高塚:課題はたくさんあると思うが、主に2つある。1つ目は今までは投資先会社の個別の評価はしてきたが、今後はファンドとして創出しているインパクトをいかに可視化していくかという点である。
 2つ目は、資金や人材がないと言われる中でも、社会的インパクト評価を行なっているからこそ生み出せる価値を創出しているソーシャルIPOを実現させ、社会性をいかに経済性に転換できるかを示せるかである。社会的インパクト評価を使って事業の持続可能性につながることを証明できれば、社会的インパクト評価を行うインセンティブになるのでという仮説を持っており、それを示していきたい。

4. 社会的インパクト評価に取り組みたくなるメッセージを一言

大久保:会社として高齢者を元気するためのプロセスとアウトカムを提示していきたい、そのために社会的インパクト・マネジメントを実施していく。

岩本:取り組みにより組織内部に変化が生まれている。社会的インパクト評価、マネジメントの資料を活用し、取り組む人が増えてほしい。

高塚:それぞれの会社の立場、インセンティブに準じて始めるのが良い。インパクトを可視化することが、内部のコミュニケーションツールとなりえる。


質疑応答

Q1: 社会的インパクト評価、マネジメントに取り組みたい時はどこに相談すれば良いか。
A1: 現在、様々な団体が社会的インパクト評価、マネジメントに関する研修を実施しているのでそれに参加するのもよい。また、SIMIが研修を実施している団体や研修内容についての紹介や相談にのることはできる。

Q2:インパクト投資はこれまでの投資と何が違うのか
A2:経営者自身がロジックモデルなどを使って事業のアウトプットと長期アウトカム、会社のミッションがつながっているかを確認し、経営判断の軸を持てることだと思う。インパクトを可視化することにより、ミッションに則した事業活動ができているかを社内共有できるメリットがある。

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