コラム

事業フェーズの分類

全ての事業がそうとは限りませんが、例えばEBP(Evidence-Based Practicies:科学的根拠に基づく実践)のような効果的なプログラム(事業モデル)を形成しようする目的で社会的インパクト・マネジメントを行うとき、対象事業のフェーズを踏まえた上で評価活動に取り組むことができます。これは、事業のフェーズの違いにより、課題や必要とされる取り組みが異なるからです。

ここでは例として、事業のステージを「設計・導入期」「形成・改善期」「成熟・普及期」の3つのフェーズに分けて解説します。

●「設計・導入期」

事業を計画し、実行に移す段階です。解決されるべき社会課題のいくつかには有効な事業・プログラムが存在しない場合も多々あります。こういった場合には、新たな事業・プログラムが設計される必要があります。そのため「設計・導入期」では、社会課題やニーズを反映させた事業目標を設定し、有効性の高い事業戦略を策定するために、社会課題の分析や、事業戦略の妥当性の検証に力を入れます。一方で、事前の綿密な計画作りに時間をかけるよりも、実際に事業を試すことで事業対象者からの反応を得て、事業戦略や提供サービス等の内容をより良く改善していく手法も推奨されます。

●「形成・改善期」

改善を繰り返すことで、事業形成を進めていく段階です。例えば「設計・導入期」を経てつくられた事業であっても、必ずしも初めのうちから社会課題の解決に向けて大きな効果を生み出せるわけではありません。こういった場合には事業の「トライ・アンド・エラー(試行錯誤)」を繰り返し、少しずつでも効果的なプログラム(事業モデル)へと近づけていかなければいけません。そのため「形成・改善期」では、特に事業の質に関する情報を収集し、改善点を探ります。また、気づきや学びを組織メンバー間で共有し、知識やノウハウを蓄積していきます。

●「成熟・普及期」

確立された事業内容について、その拡大や普及に取り組む段階です。例えば「形成・改善期」を経て、ある一定の効果を生み出せる事業がつくられたとしても、それがある特定の地域、あるいは特定の事業者のみで展開される実践であっては、全国の様々な地域に存在する社会課題そのものの解決は望めません。そこで、例えば制度化を図るなどしてこの事業を全国の必要とされる地域や実践現場に普及していくための取組みが必要になります。そのため、この段階である「成熟・普及期」になると「設計・導入期」や「形成・改善期」を含めた十分なデータが蓄積されているので、事業の効果についての分析をより厳密な形で行い、事業拡大や政策提言の判断材料とします。

 このようにして、必要であるならば、社会的インパクト・マネジメントの手法を活用してEBP(Evidence-Based Practicies:科学的根拠に基づく実践)のような効果的なプログラム(事業モデル)を構築し、これを普及することもできると考えられます。

事業のステージの分類方法は、大島巌・源由理子・山野則子・贄川信幸・新藤健太・平岡公一共編著(2019)『実践家参画型エンパワメント評価の理論と方法~CD-TEP法:協働によるEBP効果モデルの構築』の「4段階のステージ(効果モデル形成・発展ステージ)」を参考にしている。

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