コラム
発展的評価
社会的インパクト・マネジメント原則のひとつに「状況適応性」があります。この「状況適応性」への理解を深めるために、外部環境の変化や内部体制の変更に応じて柔軟に意思決定を支援する評価アプローチである発展的評価(Developmental Evaluation:DE)があります。
DEは、提唱者のマイケル・クィン・パットンによって、次のように定義されています。
社会イノベーションなど、目的が固定されているというよりも目的自体が変化し、時間軸もあらかじめ設定されているというよりも流動的で前進的な対象を評価するための評価のやり方である。そこから得ようとするのは、外部への説明責任というよりも、イノベーションや変化から学習することである。
『Developmental Evaluation: Applying Complexity Concepts to Enhance Innovation and Use』(The Guilford Press.)より
DEは、事業や取り組み(プログラム)のアカウンタビリティ確保のための評価である「総括的評価」(Summative Evaluation)、プログラムの改善に用いられる評価である「形成的評価」(Formative Evaluation)と対比して説明されることもあります。
DEは、これらの従来型評価では対応しきれない状況や対象にあてはめられてその威力を発揮します。例えば、従来型の評価は、計画時にあらかじめ想定されたプログラムセオリーに基づく目標が定まっていて、その目標が達成されたか否かを比較的安定した状況下において判断することを得意としています。しかし、外部環境が複雑で事業や取り組みが良くも悪くもたくさんの創発(emergence)の影響を受ける状況にあったり、事業を推進している主体が試行錯誤を繰り返しながらイノベーションを目指しているがゆえに、あらかじめ目標を詳細に立てられなかったりする場合においては、従来型評価の枠組みやプロセスがあてはまらなくなります。
このように不確実性が高く、先の見通しが立てづらい状況における社会的インパクト・マネジメントの実践では、DEの視点が役に立つと考えます。
DEについての詳細は、株式会社ブルー・マーブル・ジャパンのウェブサイトに掲載されている「DE引き出し集」をご覧ください。
(引用・参考文献)