コラム
因果の連鎖を精緻に考える(PICO / PECO)
医学領域で発展してきたもので、因果の連鎖について、科学的論拠をもとに実証されていることとその次に解明すべき課題を確認する考え方が、「PICO/PECO」と呼ばれます。 これはそれぞれ、P:Patient(誰に)、I:Intervention(何をすると) / E:Exposure(何によって)、C:Comparison(何と比較して)、O:Outcomes(どうなる)の略で、取り組むべき問題を構造化するものです。根拠に基づく医療(EBM、Evidence-Based Medicine)の手順でエビデンスを探す際、「臨床問題の定式化」のために用いる形式と同じです。
(悪いPICOの例) P:障害のある人々に対して I:Aという就労支援プログラムを提供すると C:それをしないときに比べて O:就労率が高くなる |
悪いPICOの例には次の問題点があります。
・障害のある人々とは障害のある人すべてを指しているのか、対象者の範囲がわからない。
・「C:それをしないとき」というのは何か、具体的にわからない。
・就労率がどの程度まで高まれば良いのか、成否の判断基準がわからない。
(改善したPICOの例) P:重度の精神障害のある人々に対して I:Aという就労支援プログラムを提供すると C:既存の「障害者就労移行支援プログラム」という制度事業を実施するときに比べて O:就労率が2倍程度向上する |
良い例に示したPICOでは「P(誰に)」がより詳細に定義され,「C(何と比較するのか)」、「O(どうなれば良いのか)」が明確に示されています。事業や取り組み(プログラム)の社会的インパクトを可視化するためには、このように具体的な要素の設定が欠かせません。
(参考文献)
福原俊一(2017)『リサーチ・クエスチョンの作り方(第3版)』特定非営利活動法人健康医療評価研究機構