コラム ロジックモデル

組織評価について

ハード型、ハイブリッド型の事業評価には、その事業を運営する組織の評価が密接に関わります。そこで、ここでは簡単に博物館の評価をケーススタディとして、組織評価について説明します。ここでは海外の事例ではありますが、分類などが明確で参考にしやすいアメリカの博物館協会を例として引用しますが、日本の博物館に関する法律等と異なる部分があるため、注意が必要です。

アメリカの博物館協会(AAM)による、事業の評価基準としてはまず、組織が評価をするための核となる質問を2つ挙げています。

1.その博物館は、明文化された使命や目標をどの程度達成しているか

2.その博物館の運営実体は、博物館界で受け入れられている水準と実績をどの程度満たしているか

上記のように、博物館などの公立の組織にはその使命があります。それを果たしているか、またそれがその文化事業の業界内の水準を満たしているかを明らかにすることが組織の評価にとって重要です。

その上で、各組織の「使命、管理運営、コレクション、解説と提示、管理と財務」が、より発展的な組織と、持続的な事業運営のために十全に機能していることを確認し、評価することが重要です。

図表3:アメリカ博物館協会(AAM)による基準認定事業の基準・自己点検項目

核となる質問その博物館は、明文化された使命や目標をどの程度達成しているか
核となる質問その博物館の運営実体は、博物館界で受け入れられている水準と実績をどの程度満たしているか
使命明確な使命を有し、明文化された正式な使命を達成することを目的として、
管理経営陣、スタッフ、財源、コレクション、パブリック・プログラム、諸活動を組織していること
管理運営管理運営の構造とプロセスは、博物館の使命を効果的に前進させていること
管理運営管理経営陣とスタッフは、自分たちの役割と責任について、共通の明確な理解を持っていること
管理運営博物館の将来について計画が立てられるような、最新の適切な情報があること
コレクションの位置づけコレクションおよびまたは有形の資料が、使命にふさわしいものであること
コレクションの位置づけコレクションが効果的に、管理され、収蔵され、安全に保たれ、ドキュメンテーション処理を施され、修復されていること
解説と提示パブリック・プログラムとコレクション、展示は使命を効果的に前進させていること
解説と提示パブリック・プログラムと展示は、アイディアやコンセプトや資料を効果的に活用し、学習と娯楽の機会を提供していること
解説と提示パブリック・プログラムと展示は、適切な調査研究に裏付けられ、効果的に提供されていること。既存の利用者および潜在的な利用者の性格について、効果的に同定し理解していること
解説と提示パブリック・プログラムと展示の開発において、効果的に利用者と関わっていること
解説と提示プログラムと展示について効果的に評価を行っていること
解説と提示プログラムと展示について、効果的に市民とコミュニケーションをとっていること
解説と提示プログラムと展示について効果的に評価を行っていること
解説と提示調査研究活動は学術的に適切な水準に従って行われていること
管理と財務管理と財務
使命を前進させ、かつ、経済力を維持しうる方法で、さまざまなリソースを獲得し、発展させ、配分することができるよう、計画と手続きを開発し管理するリーダーシップが適切に発揮されていること
スタッフは適切な教育と研修と経験を有していること
管理と財務スタッフは適切な教育と研修と経験を有していること

出所:村井良子編著『入門 ミュージアムの評価と改善ー行政評価や来館者調査を戦略的に活かすー』、株式会社アム・プロモーション、2002年、pp12 表2 「アメリカ博物館協会(AAM)による基準認定事業の基準・自己点検1971~」より一部抜粋

往々にして、日本の組織は使命の部分が不明瞭なこともあるため、まずは使命を改めて再認識及び定義し、事業を展開することも必要なのかもしれません。個別の事業評価とは別に、組織評価がなされ、組織の運営が明確化された上で、個別の事業の評価を行う方が効果的であると考えられます。

出所:村井良子編著『入門 ミュージアムの評価と改善ー行政評価や来館者調査を戦略的に活かすー』、株式会社アム・プロモーション、2002年、pp12「アメリカ博物館協会(AAM)による基準認定事業の基準・自己点検1971~」を引用。

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