コラム

インパクト考察の留意点

 事業において発生したと想定されるインパクトの大きさについては、いくつかの留保をつけて考える必要があります。以下のような要素について、インパクトが過大に、あるいは過小に評価されてしまうリスクも考慮することが必要とされています。

・デッド・ウェイト(死荷重)

 「プロジェクトや事業を実施しなかったとしても、発生したと思われるインパクト」がデッド・ウェイトです。例えば、景気回復局面において、就業率がそれに比例して改善した場合等のケースが考えられるでしょう。対照群を設定してのインパクト評価の場合には、対照群のインパクトを介入群のインパクトから差し引くことでデッド・ウェイトを除外することができますが、それ以外の場合にも、何らかのデッド・ウェイトの想定をすることが適切な場合があるでしょう。

・ディスプレースメント(代替率)

 「介入によって発生するポジティブなインパクトと同時に、ネガティブなインパクトが発生する割合」がディスプレースメントです。例えば、就労支援のプロジェクトの実施によって、就労意欲を喚起される受益者もいれば、逆に自信を失ってしまう受益者もいるというように、一つの介入においても、ポジティブとネガティブなインパクトが発生することはよくあります。このうち、ネガティブなインパクトは特に見過ごされがちですが、社会的インパクト評価においては、こうしたネガティブなインパクトについても評価の対象とすべきでしょう。

・ドロップ・オフ(逓減率)

 「長期間、特に複数年にわたって発生するインパクトが、その効果を徐々に失ってゆく割合」がドロップ・オフです。例えば、何らかのトレーニングを実施した場合に、介入によって発生するインパクトは、実施後の時間が経過するにしたがって逓減することが想定されます。こうした逓減するインパクトについては、一定期間ごとに逓減割合についての想定を設定することができるでしょう。

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