コラム

インパクト評価について

評価専門家のあいだでは、「インパクト評価」という用語は、特定の学術的意味をもつことばとして使われています。RCT(ランダム化比較試験)の手法がもっとも知られている「インパクト評価」の手法ですが、そこでは、介入(事業の実施)によって何が起きたかを測る、すなわち介入によるアウトカム(成果)だけを取り出すことを最大の目的としています。その意味で、「インパクト」は「ネット・アウトカム(純アウトカム)」とも表現されます。

 この「インパクト評価」は、評価の科学的な精緻化が進んでいる分野であり、事業とインパクトの間の「帰属性」の検証に重きをおいた方法です。介入があった群となかった群との比較が重要となり、そのため、事業対象に影響をもたらす介入以外の要因を最小化するための技術・手法が開発されています。例えば、就労支援事業の受益者の若者とそうでない若者の間に、そもそも属性(やる気、家族の状況、地域等)の違いがあれば、介入の有無に就労率といった変化の違いを帰属させることはできません。

 このように厳密さを求めた実験的手法を現実の社会課題解決のための介入に当てはめることについては、倫理的側面やコストの面からその活用の限界が指摘されている一方、「インパクト評価」においてもこれらの限界を克服する革新が提案されています。

出所:内閣府社会的インパクト評価検討ワーキング・グループ(2016)「社会的インパ クト評価の推進に向けて-社会的課題解決に向けた社会的インパクト評価の 基本的概念と今後の対応策について-」
https://www.npo-homepage.go.jp/toukei/sonota-chousa/social-impact-sokushin-chousa (2020年4月1日閲覧)
p.35「【コラム2】「インパクト評価」と「社会的インパクト評価」について」を参照。

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