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【開催報告】資金提供者WGセミナー 「資金提供者の社会的インパクト・マネジメント・セミナー」

社会的インパクト志向に基づく評価や事業づくり(マネジメント)に興味関心を持っている金融機関や助成財団等の資金提供者様を対象に、「資金提供者の社会的インパクト・マネジメント・セミナー」が開催しました。セミナーの前半では社会的インパクトの概念や、そのマネジメントや評価の考え方や活用について解説し、後半では、社会的インパクト・マネジメントの事例紹介として、新生企業投資のインパクト投資ファンド、JPモルガン助成プログラムの事例が紹介しました。当日の状況について、以下の通り報告します。

開催概要

  • 日時:2019年9月26日(木)13:00~15:00
  • 場所:日本財団ビル2階会議室3
  • 主催:社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)
  • 共催;日本財団CANPANプロジェクト
  • 協力:一般財団法人社会的投資財団

目次

  • SIMIとインパクト・マネジメントについて(社会的投資推進財団 小柴 優子氏)
  • 事例紹介①(新生企業投資 高塚 清佳氏)
  • 事例紹介②(Social Value Japan 伊藤 健氏)
  • パネルディスカッションおよび質疑応答

SIMIとインパクト・マネジメントについて
社会的投資推進財団インパクトオフィサーの小柴より、SIMIの設立背景及び事業内容について紹介した。そののち社会的インパクトマネジメントとは何か、どのように実践するかについて、当財団が最近実施したインパクトマネジメントの例としてヘルスケアニューフロンティアファンドのインパクトレポートの事例を交えながら説明を行いました(当日資料)。

事例紹介①
新生企業投資株式会社 インパクト投資チーム シニアディレクター 高塚氏から、インパクト投資の1号ファンドおよび2号ファンドの取り組みをご紹介いただきました。

事例紹介②
特定非営利活動法人 Social Value Japan 代表理事 伊藤氏から、J.P.モルガンによる認定特定非営利活動法人育て上げネットの助成への支援の事例をご紹介いただきました。利用者から取得したデータと就業結果への関係性について分析した活動を、インパクト・マネジメントが事業者の活動にどのように役立つのか、という観点からご説明いただきました。

パネルディスカッション・質疑応答
高塚様、伊藤様、ケイスリー株式会社 代表取締役 幸地様の3氏によるパネルディスカッションおよび会場参加者との質疑応答を実施いただきました。

  •  インパクト投資を実施した経緯は?
    (高塚)エクイティ投資の投資家たちは、自分たちが投資したリスクマネーが社会にどのように還元されているか、日頃から考えている。社会課題という需要に供給を与えれば持続可能性が高い事業ができると考え、そこに投資をしたいと思った。
  • インパクト・マネジメントに対する事業者の反応は?
    (高塚)投資した結果を示すために、インパクトを評価し説明する責任がある。ただし、評価にはコストがかかり投資先を巻き込まざるを得ない。投資先が評価を実施するインセンティブをいかに設定するか、意識しないと継続は難しいと実感している。
  • インパクトの測定からマネジメントへ
    (伊藤)育て上げネットのご担当者は、蓄積したデータを事業に生かし切れておらずもったいない、という意識をお持ちだった。データの分析結果とサービスを上手く接続できた。
    (幸地)ある一つの組織で二つの事業のインパクト評価をした経験がある。一方の事業については評価を目的の設定に生かしたい、もう一方の事業については説明をしたいと考えられていた。結果、前者は上手く回った。単に説明責任を果たすだけでなくインパクトの拡大を目指しているならば、目的の設定が大事である。
  • インパクト投資を実施する投資家の優位性とは?
    (高塚)投資先によっては優位性があると思う。社会的なミッション達成を、一緒に考えくれる投資家は少ない。実際、ある投資先については、ヘアカットされず(希望の金額が減額されず)投資できた。
  • インパクト投資のリスクとは?
    (高塚)インパクト投資は寄付ではなく経済性を伴うことが前提である。経営状況が悪いので追加投資をしてほしいと要望を受けても、難しい。インパクト投資家であって、寄付ではないということを投資先に説明することでミスコミュニケーションを防いでいる。また、社会性と経済性が正の相関関係のあるところに投資するのだが、投資先が事業をピボットした場合、正の相関関係でなくなってしまうというリスクもある。
  • 時代のコンテクストが変わると、社会的な組織と営利組織の差別化が難しくなってこないか?
    (高塚)会社が中長期でどこを目指しているか、常に確認すべきと思っている。また、社会性が高い事業が経済的に自立することが重要だと考えており、その過程で一定程度営利の要素が必要だと整理している。
  • 他の投資家とどのように対話しているか?
    (高塚)他の投資家の役割プラスアルファでインパクト評価を行っており、私たちが投資している範囲では、今のところ概ね他の投資家から喜ばれていると思っている。
  • 新生銀行の2号ファンドは、ファンド内でインパクトに関する考え方をすり合わせたか?
    (高塚)共同GPであるみずほ銀行、SIIFとはすり合わせを行った。運営の関係上、他のLPは意思決定には関わっていない。ロジックモデルを作成し、短期・中期の評価を行い、年に1回レポートを出す予定である。
  • ソーシャルIPOとは?
    (高塚)社会性に着目したIPOである。GSGのソーシャル・エクイティファイナンス分化会では、東京証券取引所や証券会社が、対象企業にソーシャルのフラグを立てながらIPOすることが出来ないか、といったことを検討している。社会性を数値化することで、安定株主がつくなど、上場後の時価総額の安定・向上につなげられれば、といったことを考えている。
    (伊藤)社会性がバリュエーションにどのように跳ね返るか、ということが問題である。ESG投資の領域では、社会性が株価に影響するということが認知されている。
    (幸地)社会性と収益性の関係性について、検討を行っているか?
    (高塚)検証はまだ行っていない。ただ、スタートアップの二大課題である資金調達と人材調達について、インパクト投資は資金や優秀な人材を集める傾向にある。そういった点からだけでも、企業価値の向上に貢献できているだろう。また、いかに評価の横串を指すかという点について、ESG投資の世界では手法が確立してきている。野村ホールディングスはデューデリジェンスをする際に、社会性も織り込んだあらゆるファクターをCFに転換していると聞いた。インパクト投資についても同様のことが出来ると面白い。
  • 他領域との接続について
    (伊藤)フィランソロピーセクターとの接続が重要。既存のマーケットに乗るだけでなく、インパクト評価を実施することで社会的価値を定義し、投資に繋がるようなロードマップを描きたい。
    (高塚)経済性と社会性のバランスの取り方はプレイヤーによって異なるが、多様なプレイヤーが入ってくることが重要である。その際、共通言語となるのがインパクト投資やインパクト・マネジメントであるだろう。
    (幸地)フィランソロピーのお金や投資家のお金が混ざり、境目が無くなっていくだろう。
  • 最後にメッセージを一言
    (高塚)インパクト投資についてはまだ道半ばだと考えている。立場が違う中でもプレイヤーが増えたらエコシステムができる。社内でもいろいろな制約があると思うが、ご興味を持ったかたは是非ご一緒いただけると嬉しい。
    (伊藤)エコシステムビルディングが重要であると思う。単体の組織で考えることはできない。

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