3章 社会的インパクト・マネジメントの実践とは
社会的インパクト・マネジメントは、いかに実践するのでしょうか。SIMIでは、以下に示すやり方を推奨します。基本的には、「インパクト・マネジメント・サイクル」を回し、そこに評価の諸作業(社会的インパクト評価)を組み込むことです。
1節 インパクト・マネジメント・サイクル
インパクト・マネジメント・サイクル
「インパクト・マネジメント・サイクル」とは、事業や取り組みを運営する際のマネジメント・サイクルの一種で、以下の4つのステージとそれを支える要素から構成されます。
- 第1ステージ:計画(Plan)
- 第2ステージ:実行(Do)
- 第3ステージ:効果の把握(Assess)
- 第4ステージ:報告・活用(Report & Utilize)
- すべてのステージを支える要素:組織文化・ガバナンス(Culture & Governance )
図表2:インパクト・マネジメント・サイクル
インパクト・マネジメント・サイクルを効果的に回していくことは、いわゆる事業のPDCAサイクル、あるいはOODA(Observe、Orient、Decide、Act)ループを回していくことと同様と考えられます。PDCAサイクルもOODAループも、学び・改善の体系を作るという基本では同じで、インパクト・マネジメント・サイクルには、社会的インパクトの向上を図る観点から、次の3つの特徴があります。
(1)社会的インパクト評価の活用
社会的インパクト・マネジメントの目的1(意思決定と改善)にもとづき、確たる情報に基づいて意思決定を行い、それを事業や取り組みの改善に生かすという明確な意志と実践をもつことが求められます。この意思決定には、一回のサイクルで一回その機会が出現するような大きな意思決定と、サイクルのそれぞれのステージにおいて出現する小さな意思決定の機会の両方が含まれます。これを可能にするのが、各ステージにおける社会的インパクト評価による「事実特定」と「価値判断」です。
(2)サイクルからスパイラル(螺旋)へ
サイクルを回していく中で、場合によっては単一事業の枠を超えて複数事業を単位として考えたり、関わる組織・人々を広げたりして、より本質的な事業や取り組みを発見・展開させ、地域・社会全体でサイクルを回していくという意識を持つことが重要です。つまりインパクト・マネジメント・サイクルとは、一事業のサイクルではなく、最終的な社会課題解決や社会価値創造を志向して、社会として総合的に取り組むためのサイクルの発展(スパイラル)として捉えることが必要です。そのため、各ステージで取り組む内容や、それぞれに関わる組織・人々の多様性などが、スパイラルを描くように変化・拡大・発展していくことが望まれます。
(3)組織文化・ガバナンスの重要性
このスパイラルを拡大していくためには、それを実現するための組織のキャパシティの向上が必要になります。具体的には「組織文化の醸成」と「ガバナンスの構築・整備」です。社会的インパクトを向上していくためには、事業や取り組みそのものだけでなく、それを実現するための組織面のキャパシティ向上も同時に考えていくことが重要です。