3章 社会的インパクト・マネジメントの実践とは
2節 社会的インパクト評価
社会的インパクト評価
<定義>
社会的インパクト評価とは、「社会的インパクトを定量的・定性的に把握し、当該事業や活動について価値判断を加えること」です。この定義は、内閣府による「社会的インパクト評価の推進に向けて―社会的課題解決に向けた社会的インパクト評価の基本的概念と今後の対応策について―」(2016年3月)の定義を踏襲しています。
SIMIでは、社会的インパクト評価を社会的インパクト・マネジメントの実践においてより効果的に用いるために、以下の2点を提唱しています。
(1)取り組みの有効性を体系的に調査して評価を行うこと
「取り組みの有効性を体系的に調査して評価を行う」という考えは、評価研究での「プログラム評価」の考え方に準じており、社会的インパクト評価でもその考え方を活用します。
社会課題解決や社会価値創出を目的とする単一または複数の事業や取り組みが、社会全体や事業対象者のニーズに合致するよう設計・実施され、目的どおり社会的インパクトを生み出してゆくためには、事業の設計のロジックや実施プロセスの妥当性、成果などに関する例えば次のような問いに答えてゆくことが必要です。
- 事業目的は社会のニーズ(社会課題)に対応しているか
- 事業目的達成に向けて計画されている事業内容は適切か
- 事業は計画どおりに実施されているか
- 事業実施により期待どおりの成果が生まれているか
- 投入した資源は効果的に活用されているか
社会的インパクト評価により、ロジックモデルに代表される因果関係の整理や戦略の図示化と指標の設定、データ収集と分析などを通じて、これらの問いに関する情報を提供し、事業目的の達成に向けた「インパクト・マネジメント・サイクル」の実践を支援することが可能になると考えられます。
図表3:インパクト・マネジメント・サイクルにおける評価
(2)「社会的インパクト・マネジメント原則」にしたがって評価を行うこと
社会的インパクト評価は、プログラム評価の考え方や手法を活用して、インパクト・マネジメント・サイクルを実践する上で必要な情報を提供します。この際、留意すべき点を、SIMIでは「社会的インパクト・マネジメント原則」(図表4参照)にまとめました。「社会的インパクト・マネジメント原則」のうちのはじめの「6原則」は、社会的インパクト・マネジメントにおいては必須であり、あとの「2原則」は、社会的インパクト・マネジメントの目的に応じて適用すべき原則としています。
これらをすべて満たさなければ「社会的インパクト・マネジメント」を実施していることにならないというわけではありませんが、これらの原則を満たすことで、事業や取り組みに関わるステークホルダーにより適切な情報を提供することができ、社会的インパクト・マネジメントのより効果的な実践につながります。
図表4:社会的インパクト・マネジメント原則
なお、「社会的インパクト評価」は、プログラム評価の枠組みにおける「インパクト評価」とは、概念の生成過程や概念規定が異なるものですので、前者を省略して「インパクト評価」と呼ぶことには注意が必要です。
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