コラム
創発的戦略
社会的インパクト・マネジメントは、「評価の視点」と「意思決定の視点」から成ります。外部環境の変化がはげしく先の見通しを立てづらい状況下で、事業・取り組みをどのように行っていくか、状況に応じて適応させていくかについて、「評価の視点」としてDE(発展的評価)を紹介しましたが、「意思決定の視点」として「創発的戦略」の考え方が有用です。
「創発的戦略」とは、時間の経過とともに「出現、発現」(emergence)してくる戦略、もしくは当初実行に移されたときの戦略とは原型をとどめないほどに変容した戦略や打ち手のことを指します。あらかじめ意図して計画的に実行する「意図的戦略」に対して、「創発的戦略」は当初計画されていた戦略が日々直面する状況や問題に対応を繰り返す中で出現してくる戦略であると言えるでしょう。
事業や取り組みが当初の計画通りに進むことは、ほぼないと言ってよいでしょう。この時に必要になるのが、社会的インパクト・マネジメント原則の中の「状況適応性の原則」の考え方であり、「創発的戦略」の視点です。
状況変化に適応していくためには、組織の学習が重要です。状況変化に応じて新しい戦略が出現するように、学習する組織(別コラム「組織能力の構築と学習する組織」参照)として、出現する状況に適切に対応し、マネジメントを行うことが不可欠です。
複雑で外部環境の変化が激しい状況において社会的インパクト・マネジメントを実行していくためには、「創発的戦略」の視点をもち、組織が学習をしながら新しい戦略を創造していくことが求められます。
(引用・参考文献)
『戦略サファリ 戦略マネジメント・ガイドブック』(ヘンリー・ミンツバーグ著)東洋経済