4章 インパクト・マネジメント・サイクルの回し方
2節 インパクト・マネジメント・サイクルの4ステージ
本節ではインパクト・マネジメント・サイクルの4つのステージについて概説します。3章2節で触れたように、社会的インパクト評価の諸作業がこれら4つのステージに組み込まれています。
図表6:インパクト・マネジメント・サイクルの4ステージ
第1ステージ:計画(Plan)
本ステージでは、事業や取り組みの目的・目標を設定し、それを実現させるための戦略と計画を策定します。4つのステージのうち、本ステージが社会的インパクト・マネジメントにとってもっとも時間と労力を使うステージになります。
(主な内容)
- 解決を目指そうとする社会や地域の問題の実態や要因を解明するために、情報収集や調査を行う。
- 取り組む課題を特定できたら、事業や取り組みの目的・目標を設定する。
- 目的・目標を実現させるための戦略を策定し、あわせてその妥当性を検証する。
- 事業や取り組みの実行手順や予定について定めた事業計画と、SIMの目的および事業や取り組みの目的に応じたデザイン、予定について定めた評価計画を策定する。
第2ステージ:実行(Do)
本ステージでは、事業や取り組みの実施を進めるとともに、その状況をモニタリングしながら、データを収集していきます。本ステージにおいては、事業実施を第1ステージの作業を土台として、細心の注意を払って着実にしていくことが肝要です。
(主な内容)
- 事業や取り組みを実施する。
- 事業は計画どおり実施されているか、事業による結果(アウトプット)は出ているかを確認する。
- 実施体制の適切性についての検討や、アウトプットの生成に影響を与えた貢献・阻害要因の検討も行う。
第3ステージ:効果の把握(Assess)
本ステージでは、事業や取り組みの実施や調査を通して収集したアウトプット指標やアウトカム指標に関するデータを分析・検証します。本ステージの内容は事業や取り組みの実施が一段落ついたところでの実行が想定されますが、適時適切に改善を行っていく上では第2ステージと並行して行うことが有用になります。
(主な内容)
- 収集したデータの検証・分析を行い、事業や取り組みの実施により実際にどのような変化が生じたかを確認する。
- 分析結果に基づいて、事業の進捗の見極めや、社会的インパクトを向上させるための手段の検討を行う。
- 必要に応じて、投入されたインプットとアウトカムとを比較することで事業の効率性を確認する。
- 事業目的やアウトカムの想定が、社会的インパクトの向上のために正しかったかを確認する。
第4ステージ:報告・活用(Report & Utilize)
本ステージでは、分析結果を開示・報告し、意思決定へ活用することで、事業や取り組みの改善や関係者とのコミュニケーションを図ります。本ステージにおける作業を通して第1ステージから第3ステージまでの学びを改めて整理し、次なるインパクト・マネジメント・サイクルにつなげていきます。
(主な内容)
- 事業や取り組みの結果は、社会的インパクト・マネジメントの目的に応じて、事業報告書や評価報告書(「インパクト・レポート」等の名称を用いる)を通して内外で共有する。
- 今後の事業や取り組みに反映すべき内容を整理し、団体内・関係者間で共有をする。
- データの分析結果をもとにして、より価値を生み出すために、事業や取り組みの内容の改善や変更の必要があるかの意思決定を行う。
以上が各ステージの概要です。6章ではステップに分けることで、取り組む内容やポイントをより具体的に解説しています。
前節でも図表5で示したように、各ステージ、また6章で解説する各ステップは必ずしも一方向に進むものではなく、必要に応じて往復するものです。例えば、策定した戦略の妥当性を検証する中で、設定していた目標が不適当であることがわかった場合には、問題分析に立ち返ることが考えられます。また、事業や取り組みを実施する中で、環境に変化が生じた場合には、事業計画を再検討することにもなるでしょう。各ステージや各ステップの流れはあくまで基本的なものですので、必要性や状況に応じて「今は何に取り組むべきか?」を判断することが肝心です。