4章 インパクト・マネジメント・サイクルの回し方

3節 インパクト・マネジメント・サイクルの周期

 前節ではインパクト・マネジメント・サイクルの第1ステージから第4ステージまでの流れを解説しました。本節では、事業や取り組みの周期にインパクト・マネジメント・サイクルをどう適用させていくかについて、3つのパターンを例示することで解説します。

 1つ目のパターンは、事業や取り組みのサイクルをそのままインパクト・マネジメント・サイクルの周期の軸にする方法で、事業や取り組みが一段落するのに合わせて第3ステージ「効果の把握」を実施します。これが基本となるインパクト・マネジメント・サイクルの周期になります。

 例えば、同一の対象者が1年間参加するようなプログラムの場合、その効果がより表れるのはプログラム終了後と考えられるため、プログラムの計画から事後の総括までを含めると、インパクト・マネジメント・サイクルの一周期は1年を超えることになるでしょう。プログラムが連続で行われる場合には、1期目の終了と重なる形で2期目のサイクルがスタートすることになり、そして2期目の途中で1期目のサイクルの総括を行うことになります。総括から得られた学びは2期目のプログラムの運営および3期目のプログラムの計画に反映させていきます。

 この場合、1期目における第1ステージ「計画」は入念に行うことになりますが、2期目以降の計画は、改めてゼロから作業を行うということではなく、必要な点の見直しを中心に行っていくことになるでしょう。

図表7:事業サイクルを軸にした周期の例

 2つ目のパターンは、各ステージの作業を簡略化したり、メリハリをつけることで、インパクト・マネジメント・サイクルを早い周期で回していくという方法です。これは特に事業や取り組みの設計・導入期において有効になりうる取り組み方です。

 この場合、第1ステージ「計画」にあまり時間をかけず、なるべく早いタイミングで、プログラムの実行と効果の把握に取り組んでいきます。プログラムの実行と効果の把握を早い周期で繰り返していくことで、プログラムの緻密化を図っていきます。また、環境の変化のスピードが早い場合にも、迅速にプログラムを見直していけるこのような方法は有効になります。ただし、発現までに時間を要する効果の把握を行うには不向きですので、追加的な調査を実施するなど工夫していく必要があるでしょう。

図表8:回転の早さを重視した周期の例

 3つ目のパターンは、例えば事業や取り組みのフェーズ(関連コラム「事業フェーズの分類」参照)単位など、大きな視点でインパクト・マネジメントサイクルを回していく方法です。1つ目や2つ目のパターンのような周期でのインパクト・マネジメント・サイクルをミクロなサイクルとすると、より大きな視点のマクロなサイクルもそれと同時並行で回していくということです。

 図表9では、事業フェーズの分類(「設計・導入期」、「形成・改善期」、「成熟・普及期」)をマクロなサイクルとして設定する例を示しています。この場合、それぞれの期においてどういう状態を目指すか、それぞれの期に至るために何に取り組む必要があるかを事前に検討し、そして事中・事後には何がどれだけ実現できているか、成功・阻害要因は何か、今後の課題は何かを検証することになります。つまり、事業年度単位のようなミクロなサイクルごとの計画・検証に加えて、複数年単位(図表9では3年単位)で各フェーズの計画・検証を行っていくことになります。これによって、より長期的視点に立って社会的インパクト・マネジメントを実践していくことが可能になります。

図表9:長期視点での周期の例

 以上、3つのパターンを例示することでインパクト・マネジメント・サイクルの周期についての考え方を示しましたが、重要なのは社会的インパクト・マネジメントの目的に合わせて取り組みのスケジュールを計画することです。例えば、予算要求の根拠として用いるなど、評価結果等を特定の目的に活用したい場合には、それを提示する必要がある時期から逆算して、調査等のスケジュールを計画する必要があります。それによってサイクルの周期の設定の仕方も変わりますので、必要なタイミングで必要な情報が得られるかどうかに注意しましょう。

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事業のフェーズの分類

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