6章 社会的インパクト・マネジメントの実践ステップ
本章では、より具体的にインパクト・マネジメント・サイクルを回すことを、以下の7つのステップで説明します。
図表12:社会的インパクト・マネジメントの実践ステップ
Step 1: 社会的インパクト・マネジメントの目的設定
1.実践目的の設定
第一歩として行うべきことは社会的インパクト・マネジメントを実践する目的の設定です。2章で社会的インパクト・マネジメントを実践する目的を紹介しましたが、組織としてどういう課題を抱えているか、何に力を入れるべきかはそれぞれで異なります。実践する目的が明確でないと、形だけの役に立たない取り組みになってしまったり、過剰な取り組みになってしまうおそれがあるでしょう。4章4節で解説したように、長期的な視点で、どうなっていくために社会的インパクト・マネジメントを活用するのか、そのために何に力を入れるべきかをよく検討しましょう。
このステップはインパクト・マネジメント・サイクルのいずれかのステージに位置づけられるものではなく、その実践の前提となるようなステップです。社会的インパクト・マネジメントに取り組もうとする前段階に限らず、組織や事業の状況等に変化があった場合など、継続的に確認していくことを推奨します。
2.組織・事業の現状把握
実践の目的設定のために必要な一つの要素が、組織および事業や取り組みの現状把握です。目的設定を適切に行うには、組織や事業の特性や状況、課題等を確認することが重要になります。
現状把握の過程を通して、組織や事業の運営によって、「どのような事柄についての学び・改善を生み出したいのか」、「誰に対してどんな情報を伝えたいのか」などについて検討し、社会的インパクト・マネジメントを実践していく上での目的意識を明確にします。
意思決定の視点 | 評価の視点 |
【目的】 ・組織の理念や方針、目標を明確にする 【作業例】 ・右側(評価の視点)から得た情報をもとに組織の理念や方針、目標を明確する(改訂か継続かを意思決定する)。 | 【目的】 ・組織が目指す目標が、社会的に重要かどうかを見極める(判断する)。 【作業例】 ・行政資料や研究知見を参照し、組織の理念や方針、目標が妥当な内容であるかを検証する。 ・様々なチャンネルを活用して類似の理念・方針 ・目標を掲げる組織がどの程度存在するかを確認し、その中での組織の位置を検証する。 ・アンケートやインタビュー調査等を行うことで、組織の理念や方針、目標が妥当な内容であるかを検証する。 |
図表13:実践 Step1 社会的インパクト・マネジメントの目的設定
組織および事業・取り組みの現状把握において確認すべきポイントの例を以下に示します。組織文化・ガバナンスについての詳細は5章をご覧ください。
組織理念・目標 | 組織として、どのような理念や方針、目標を持っていか? 社会的インパクト志向は、組織の理念や方針にマッチするか? |
組織および 事業のステージ | 組織は現在、どのようなステージにあるか? 課題は何か? 社会的インパクト・マネジメントの対象となる事業は現在、どのようなステージにあるか? 目標とそこに至る課題は何か? |
利用可能資源・ 協力体制 | 利用可能な経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)は、何が、どの程度あるか? 調査・分析に関する知識やスキルを組織メンバーは持っているか? どのような組織内外の協力体制があるか? |
組織文化・ガバナンス | 組織の理念や方針、目標は、組織メンバーに浸透しているか? 社会的インパクト志向について、組織メンバーは理解を示しているか? 組織内にインパクト・マネジメントのリーダーや責任者はいるか? 各ステークホルダーをどのような存在として位置付けているか? 組織・事業についての意思決定の主体は誰か? 評価情報を共有・報告すべき対象は誰か? |
組織や事業を取り巻く環境 | 事業の受益者を取り巻く状況・環境はどのようになっているか? 事業のステークホルダーには、どのような人・組織がいるか? 自団体と同様の受益者を対象として活動する組織はあるか? 上記があるとしたら、どのようなパートナーシップや役割分担をおこなうことが全体最適か? |
社会的インパクト・マネジメント原則の留意点
a. ステークホルダーの参加・協働 | 【意思決定の視点】 組織や事業を取り巻く外部環境の分析にあたっては、その問題に関わるステークホルダーを特定して、どのようなパートナーシップや役割分担をおこなうことが全体最適かを考えること。 |
b. 重要性 (マテリアリティ) | 【意思決定の視点】 当該事業・取り組みについての社会的インパクト・マネジメントの実践は、組織全体の戦略や理念において、どのように位置付けられるのか、整合性が取れているものなのかに留意すること。 |