Social Impact Day 2025 SIMIからのお知らせ セミナー・イベント情報
【ご一読ください】Social Impact Day 2025 基調講演の事前配布資料:ベータ・アクティビズムを理解する~「私たちは今やみなベータ・アクティビストである」とは?
いよいよ Social Impact Day 2025 の開催が近づいてまいりました。
開催に先立ち、5月14日(水)10:00~11:00 の基調講演「ベータ・アクティビズムへの招待〜資本主義の土台を動かす」に向けて、皆さまにより深く内容をご理解いただけるよう、以下の資料を事前配布いたします。
講演当日の理解をより深める一助となれば幸いです。
ぜひご一読のうえ、当日ご参加ください。
ベータ・アクティビズムを理解する〜「私たちは今やみなベータ・アクティビストである」とは?
SIMI代表理事 今田克司
「インパクト・エコノミーの地殻変動」を全体テーマとするSIMI Social Impact Day 2025において、5月14日のオープニングの基調セッションには、『「良い投資」とβアクティビズム』(*1)を書いたジョン・ルコムニク氏とジェームズ・ホーリー氏が登壇します。テーマは「ベータ・アクティビズム」。金融関係者には馴染みのある用語かもしれませんが、金融に直接携わる人々以外に、これはどのような意味があるのでしょうか?
「アクティビスト」ということばから好ましいニュアンスを感じる人は多くないかもしれません。そのまま訳せば「活動家」。投資の世界では、「物言う株主」とも呼ばれ、企業のガバナンスや経営全般に意見する投資家を指し、NGOの世界では、自分たちが信奉する世界観・価値観に沿って声明を出したり、示威行動で人々の関心を引き付けたりする行為者を指します。どちらも、自らの行動で大きな組織や社会に変化を促す点で一致していますが、「和を以て尊しと為す」日本においては、疎まれてしまう傾向があるようです。しかし、市民一人一人の行動によって世の中が変わる。これを構想するのは、ごく普通のことに思えます。
とはいえ、投資家の従来の「アクティビズム」は、結局は相手企業の経営改善により株価の上昇を狙うもので、私益を追求するものだと言えるでしょう。これは「アルファ・アクティビズム」と呼ぶことができます(*2)。一方、今回テーマとなるのは、「ベータ・アクティビズム」。投資の世界では基礎知識で扱われ、個人投資家向けの解説も多い「アルファ」と「ベータ」、今回の基調セッションでも展開される議論の基本となるものなので、まずこれらを押さえておきましょう。
「アルファ」:投資収益率が、どれだけ市場平均(ベンチマーク)の収益率を上回っているのかを示す指標。
「ベータ」:投資収益率の市場平均(ベンチマーク)の収益率に対する感応度を表す。市場感応度ともいう。ベータが1より大きいほど市場の変化に対する感応度が大きく、市場ポートフォリオよりハイリスク・ハイリターンの傾向があ(る)。(*3)
つまり、アルファは、個別銘柄やポートフォリオのリターンが、ベンチマークをどれだけ上回ったかを示す指標で、ベータは、個別銘柄やポートフォリオの収益が、市場全体の変動にどの程度敏感に反応するかを示す指標と説明されます。単純に言えば、あるファンドの年間リターンが10%で、市場の年間リターンが3%だった場合、このファンドのアルファは7%になります。運用者が市場のリターンを7%上回るリターンを上げたことになります。そして、これらの源となっているのが、のちにノーベル経済学賞も受賞したハリー・マーコウィッツが1952年に提唱した「現代ポートフォリオ理論(MPT)」と、それに続く「資本資産価格モデル(CAPM)」と呼ばれるものです。
さて、ここからはルコムニク氏とホーリー氏の解説になります。詳しくは著書に書いてありますが、Social Impact Day の基調セッションにおいても「市場はあなたの投資に影響を与えるが、あなたの投資は市場に影響を与えない」という「MPTのパラドックス」が紹介されます。つまり、MPTでは、ベータは所与として扱われるということです。
「ベータ・アクティビズム」とは、これに異を唱えるものです。個々の投資行動がベータに影響を与える、そしてそれは、投資額が大きければ大きいほどそうである、という論は一見当たり前に思えますが、投資の世界の定式ではそのように考えられてこなかったということです。そして、「ベータ」は、システマティックな市場リスクとも呼ばれ、それは環境、社会、金融システムにおけるシステミック・リスクに起因すると説明されます。
システマティック・リスク:リスク分散不能な投資リスク(市場リスク)
システミック・リスク(またはシステム・リスク):環境、社会、金融システムに起因する(またはそれらに影響を与える)リスク(*4)
ルコムニク氏とホーリー氏は、著書において、気候変動、ジェンダー・民族・人種の多様性の欠如、薬剤耐性菌の増加といったシステミック・リスクの低減に取り組むことでシステマティック・リスクに対処しようとする「ベータ・アクティビズム」を紹介しています。持続可能で公正な社会を構築しない限り、投資家や企業にとっての生命線である市場リスクは減らすことができないし、そうであれば、社会システム全体が抱えるリスクに正面から取り組むしかない、というメッセージです。
Social Impact Day の基調セッションでも「今日の投資家は意図的にシステムにインパクトをもたらそうとしている」、「ベータ・アクティビズムは、しばしばシステム・レベル投資への「入り口」となる」という解説がありますが、金融や投資の世界がこのような気づきをもった今、金融や投資に直接携わらない人々は、この「気づき」に共鳴し、社会システム全体が抱えるリスクを様々な角度から読み解き、解説し、「ベータ・アクティビズム」をともに進めていくことが求められています。市民一人一人の行動によって世の中が変える。そう、著書にあるように、「私たちは今やみなベータ・アクティビスト」なのです。
(*1)ルコムニク、ホーリー(2022年)『「良い投資」とβアクティビズム』日本経済新聞出版(原著、Moving Beyond Modern Portfolio Theory – Investing That Mattersは2021年)
(*2)同上。監訳者(松岡真宏氏)解説 p.228。
(*3)企業年金連合会用語集より(https://www.pfa.or.jp/yogoshu/)
(*4)ルコムニク、ホーリー(2022年)pp.10-11(原著では p.2)。
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