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【取り組み事例】Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs

Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGsは、NPO/NGOの組織基盤強化に対して助成するファンドです。2001年に現在のファンドの前身となる「Panasonic NPOサポートファンド」を立ち上げて以降、助成プログラムは毎年改善をはかり、5年ごとに大きく改定しているそうです。

パナソニック株式会社CSR・社会文化部主幹、東郷琴子氏に同ファンドにおける社会的インパクト・マネジメントについてお話しを伺いました。

■カテゴリ

事業分野組織力強化、助成
事業開始年2001年
組織形態株式会社
組織規模2人(協働事務局:7人)

■基本情報

事業名称Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs
(前身プログラム:Panasonic NPOサポート ファンド)
実施地域助成対象団体は日本国内に事務所があること
事業概要世界的な社会課題である「貧困の解消」に向けて取り組むNPO/NGOが持続発展的に社会変革に取り組めるよう、その組織基盤強化に助成を行う。
(前身のプログラムでは、「子ども」「環境」「アフリカ」分野を対象)
運営団体パナソニック株式会社
(協働事務局:国際協力NGOセンター、市民社会創造ファンド、地球と未来の環境基金) 
事業URLパナソニック NPO/NGOサポートファンド for SDGs ウェブサイト
https://www.panasonic.com/jp/corporate/sustainability/citizenship/pnsf/npo_summary.html
NPOサポートファンドの軌跡
https://pnsfkiseki.jpn.panasonic.com/pnsfkiseki/GD7MxF/

■社会的インパクト・マネジメントの概要

はじめたきっかけファンドを立ち上げて10年目の2010年に第三者評価を行い、組織基盤強化の有効性の発信や、よりNPO/NGOの組織基盤強化に資するプログラムへの進化・改善に活かすことを目的に実施。
実践内容・助成先団体は、組織診断(コースを選択)し、組織基盤強化を実践
・助成先団体の事業評価を助成終了後1年半が経過した時点で実施
・助成先団体の協力の下、パブリックリソース財団に委託しSROI評価を実施。SROIのアシュアランスを取得
・助成プログラム自体は約5年毎に見直し、改善するということを継続
取り組んでよかったこと・組織基盤強化に取り組むことが、その団体の主要事業のアウトカム・インパクトの増大につながることが立証され、組織基盤強化の重要性がNPO/NGOセクターに広まりつつあること。
・より効果を高めるために、助成事業に第三者の伴走支援の仕組みを取り入れ成果が出ていること、またNPO/NGO支援組織等に組織基盤強化事業の伴走者としての実践の機会を提供できていること。
今後の課題・設立20年目の節目にあたり、現在の助成スキームの効果についての調査に取り組み始めている。
・SROI評価を経験したことにより、SROI結果の数値をどう読みとるのか、評価の適切な時期や、数値だけでは全てを測りきれない等々の気づきも得られた。そのため多面的な評価手法も取り入れていきたい。
資料URLデータで見る17年の実績
https://www.panasonic.com/jp/corporate/sustainability/citizenship/pnsf/locus.html
NPOサポートファンドの社会的インパクト評価
https://www.panasonic.com/jp/corporate/sustainability/citizenship/pnsf/npo_summary/sroi_report2018.html
http://www.public.or.jp/PRF/SROI_Report_SupportFund.pdf

社会的インパクト・マネジメントの取り組みインタビュー

1、社会的インパクト・マネジメントはいつから、何をきっかけに実践していますか?

 パナソニックは創業以来、常に「人」を中心に、その「くらし」をみつめ、“A Better Life , A Better World”の実現に向けて、事業活動とともに企業市民活動を通じて社会課題の解決や、より良いくらしの創造と世界中の人々の幸せ、そして社会の発展に貢献すべく取り組んでいます。企業市民活動の重点テーマは、グローバルに認知されている社会課題であるSDGsの目標1に「貧困の解消」が掲げられていることと、また松下幸之助創業者の考える企業の社会的使命より、「共生社会の実現に向けた『貧困の解消』」と定めています。

 当ファンドは、NPO/NGOの組織基盤強化に対して助成しています。パナソニックは1990年頃から市民活動団体と協働して自主プログラムを推進し、また社員やOBが継続的に関わっている市民活動団体に資金支援するなど、会社として早い段階からNPOとの接点がありました。そのような中で当時のNPOを見てみると、自分たちの活動を行うのにいろいろなところから助成金を得ているものの、それらは活動などの直接経費には充てられてもスタッフの人件費などの間接経費には充てにくく、また、単年度の助成が多かったために中長期の展望が描きにくいといった、持続可能性が危うい状況にあるように見受けられました。

 組織基盤強化への助成は、人材育成や財政基盤といった組織の根っこのところに栄養を注ぐようなものです。そうすることで根の部分が深く強くなり、幹が太く、木が大きくなり、葉や実といった部分にあたるそれぞれの事業や成果が大きく広がり、社会課題の解決促進につながると考えています。


 現在のファンドの前身となる「Panasonic NPOサポートファンド」は2001年に立ち上げ、子ども、環境分野の団体を助成対象としていました。助成プログラムは毎年改善をはかり、大きく5年ごとに改定しています。社会的インパクト・マネジメントを意識しだしたのは2010年頃です。ファンドを立ち上げて10年目の節目を迎える頃に、助成先の成果報告などから組織基盤強化助成への効果を実感しつつも、これまでの10年を振り返り、助成プログラムとしてより効果を高めていくにはどうしたらよいのか、第三者評価を入れることになったことが社会的インパクト・マネジメントのきっかけです。

 以降、毎年の事業評価や、社会インパクト評価などを行いながら助成プログラムを改善し、より社会課題に貢献しうるプログラムとして進化させてきました。現在の「NPO/NGOサポートファンド for SDGs」は、2018年の創業100周年のタイミングで、世界的な社会課題である「貧困の解消」に取り組むNPO/NGOの組織基盤強化を対象としたプログラムに改定しています。

2、どのように事業のマネジメント・評価をしているのですか?

 当ファンドはパナソニックが単独で行っているのではなく、NPO/NGOの現場に即した有効なプログラムとするためにNPO中間支援組織と協働してプログラムを企画開発・運営しています。そして助成先とは、助成候補となられた時から現地を訪問し、贈呈式や中間インタビュー、助成終了時の成果報告会等の機会や、事業内容の変更等に年間を通じて相談にのるなど、顔の見えるコミュニケーションを重視しています。

 以前から助成先のアウトカムについて意識しており、申請書に助成事業の達成度を測るための評価方法や指標を書いていただくようにしていました。2010年に第三者評価をした際にも、組織が強化されたことによってアウトカムやインパクトが拡大しているのかということを調査してもらいました。その調査で組織基盤強化が主要事業のアウトカム、インパクトの増大につながっているということが分かりました。以降、毎年事業評価を実施して、組織運営上の課題がどれだけ解決されたか、さらに主要事業のアウトカム・インパクトが拡大しているかを見ています。また2010年には、それまでの選考委員会での議論などから、NPOの皆さんがご自分たちだけで組織運営上の課題を抽出し優先順位をつけ、解決策を考えていくということが難しいのではないかという課題認識もありました。

 そこで、2011年からには、助成プログラムに新たに「組織診断」と「第三者の伴走支援」の仕組みを取り入れるようにしました。当時は組織診断を必須としたことが時期尚早だったこともあり、2013年からは組織診断から始めてもよいし、既に組織診断のようなことをご自分たちでしていて組織課題が明確であり、合意もとれている場合には組織基盤強化から始めてもよいという2つのコースを設けました。今では、組織診断からしっかりと取り組みたいと申請される団体が増えてきています。

 団体内で組織課題への問題意識のベクトルがそろっていると、その先の基盤強化に取り組みやすい傾向にあります。組織内でも組織課題に対する温度差や認識がずれることもあり、ベクトルを合わせることは重要です。皆のベクトルを合わせ、納得して組織基盤強化に取り組んでもらうために組織診断を奨めることもあります。

 組織診断の方法は団体に伴走するコンサルタントにお任せしています。診断では組織を取り巻く事項全体が対象です。チェックリストを使うコンサルタントもいれば、個々のスタッフへのヒヤリングなどを通じて組織診断するコンサルタントもいます。そのコンサルタントの選定については、応募いただく団体に自分たちで探していただいています。

3、助成先団体の事業評価と、事業への組織基盤強化の貢献について、具体的に教えてください。

 助成事業が終了した時点で、助成先、選考委員、そして事務局が一堂に会する成果報告会を開催し、組織基盤強化の取り組みや成果を共有しています。また事業評価については、助成事業が終了して1年半が経過した時点で行い、財政規模などの定量的な部分での調査と「申請当時に抱えていた組織運営上の課題がどれ位解決されたか」「組織能力の定量的変化」や「主要事業のアウトカム・インパクトがどのように拡大したか」を見ています。

 さらに助成終了後3~5年が経過している団体に「組織基盤強化ワークショップ」での事例発表をお願いしています。このワークショップでの発表を聞いて、担当者として組織基盤強化の効果を改めて強く実感しました。毎年の事業評価は助成終了後1年半の時点で行っていますが、組織基盤強化の効果を助成先団体が実感するには3年位の時間が必要だと思っています。発表を聞いていると、どの団体も組織基盤強化の取り組みが自分たちの言葉で言語化され、継続して組織基盤強化に取り組まれているなど、団体の文化として根付いています。

 また、これまでにも事例レポートを作成し、助成先の取り組みを広く紹介してきましたが、より具体的に社会課題解決にどう貢献できているのかを可視化したいと考え、3団体を対象にSROI(Social Return on Investment、社会的投資収益率)で測ることにし、そのうちの1事例についてはイギリスのSocial Valueよりアシュアランス(保証)も獲得しました。実際には、アシュアランスの取得には時間がかかりました。組織基盤強化に取り組む前の組織の状況や数値などのエビデンスをきちんと持っておく必要があったためです。組織評価の各項目について、助成開始前の状況を思い出して書いてもらうということをしなければならず、またその妥当性を立証することが大変でした。この経験により、事前の状況や変化を見る指標、数値を持っておくことが重要だと分かり、現在は助成事業の開始時に組織状況の調査を行うようにしています。

4、課題や今後の展望について教えてください。

 2001年から組織基盤強化支援にこだわって取り組んできて20年目を迎えました。この20年で「組織基盤強化」という言葉も広がってきました。20年目の節目にあたり、現在の助成スキームである「組織診断」「第三者の伴走支援」の効果についても調査しようと取り組み始めています。またSROI以外の社会インパクト評価も実施してきましたが、いろいろな評価手法を用いて多面的に組織基盤強化助成の効果を示し、その有効性を広くお伝えできたらと考えています。あわせて、助成先に伴走するコンサルタント人材の育成も急務です。さらに「貧困の解消」に貢献しうる助成プログラムとして、組織基盤強化支援を通じて貧困の解消に向けて、何がどれだけ貢献できたのかの指標づくりにも取り組んでいきたいと思っています。

インタビュー実施日: 2020年5月12日
インタビュイー  : パナソニック株式会社 ブランドコミュニケーション本部
           CSR・社会文化部 主幹 東郷琴子氏
インタビュアー  : ケイスリー株式会社 熱田瑞希
           EY新日本有限責任監査法人 高木麻美
           株式会社ユニアス 山中資久

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