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【開催レポート】「現場団体と財団・基金のコミュニケーションと判断軸」(6)[主催チームまとめ]緊急時における社会的インパクト・マネジメントのポイント

社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(以下、SIMI)では、11月27日に、「~緊急時における社会的インパクト・マネジメント vol2~『現場団体と財団・基金のコミュニケーションと判断軸』」を開催しました。
(開催案内はこちら

本開催レポートは、当日のディスカッションを書き起こし、整理したものです。
全6回に分けてお届けします。

【開催レポート】「現場団体と財団・基金のコミュニケーションと判断軸」(1)団体活動紹介「公益財団法人佐賀未来創造基金」
(2)団体活動紹介「NPO法人空家・空地活用サポートSAGA」
(3)団体活動紹介「Yahoo!基金」
(4)パネルディスカッション前編
(5)パネルディスカッション後編
(6)[主催チームまとめ]緊急時における社会的インパクト・マネジメントのポイント


[主催チームまとめ]

緊急時における社会的インパクト・マネジメントのポイント

本イベントは、コロナ禍もしくは自然災害にて緊急支援を行ったNPO事業者、および資金提供を行った財団・基金の方にご登壇いただきました。刻々と変化する状況の中で、どのように事業展開を進め、関係者とのコミュニケーションを通じて活動を進めていったのか。立場の異なるお三方のお話しから、共通する学びと、連携を図るポイントを抽出しました。

本記事は、イベントを主催した社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブの担当チーム(以下、主催チーム)が、イベントでの議論を踏まえて「緊急時における社会的インパクト・マネジメントのポイントは何か?」という整理を試みたものです。まだ議論の途上ではありますが、頻発する自然災害や緊急時の支援の際の参考として、役立てていただければと思います。

※本記事はセミナー主催チームがセミナーでのディスカッションを受けて、緊急時における社会的インパクト・マネジメントを実施する上での、ポイントの整理を試みたものです。 登壇3団体の意図示すものではなく、SIMIの正式見解でもありません。

社会的インパクト・マネジメントとは

「社会的インパクト・マネジメント」とは、事業運営により得られた事業の社会的な効果や価値に関する情報にもとづいた事業改善や意思決定を行い、社会的インパクトの向上を志向するマネジメントのことです。
 活動を行うNPO事業者が、インパクト・マネジメント・サイクルと呼ばれる4つのステージ(計画-実行-効果の把握-報告・活用)をぐるぐる回し、より良い事業を構築し、実施することを通じて、社会的インパクトをより向上させていきます。
 詳細は、SIMIガイドラインおよび実践ガイド10ステップを参照ください。
https://simi.or.jp/social_impact/management

緊急時における社会的インパクト・マネジメントのポイント

 主催チームとして、以下の3点が最も重要なポイントであると考えました。
 登壇者の立場は、NPO事業者・コミュニティ財団・全国規模の基金と立場は異なるものの、これら3点が緊急時における活動において実践されることで、大きな成果につながったと考えます。

  • 平常時から、行政・財団・基金・中間支援団体・現場団体とのネットワークを構築し、日々コミュニケーションを図り、信頼関係を築き、互いに知っておく。
  • 災害発生時に「災害支援プラットフォーム」のような場で情報共有を図り、連携し合いながら、各団体が「被災地・地域の困りごとに自分たちは何ができるか?」を考え、行動する。
  • 過去の経験から学び、次回に向けて仕組みを構築し、活動を追加するなど、改善に向けたアクションへつなげていく。

緊急時において社会的インパクトを生み出すために

ご登壇くださったお三方のお話しを「3つのフェーズ」「3つの立場」という観点で整理しました。

〇「3つのフェーズ」

  • 平常時:普段の活動によって地域の困りごとに対応し、災害へ向けた備えをする時期
  • 緊急時:災害発生などにより支援を展開する時期
  • 振り返り:直面した事象から学びを得て、それを今後へつなげる振り返りの時期

〇「3つの立場」

  • NPO事業者:現場での困りごとに対応し、社会的インパクトを生み出す活動の担い手
  • コミュニティ財団:地域にてNPO事業者へ資金を助成しながら、情報や関係性のハブになる組織
  • 全国規模の基金:全国規模で寄付を募り、情報を発信し、地域の活動を支援する組織

開催レポート本文と併せてお読みいただきながら、緊急時における活動のポイントを掴んでいただけましたら幸いです。

※あくまでも、ある特定の緊急時下において、3団体の方が直面したケースから、主催チームが抽出したものになります。正解ではなく、一つの観点を事例から読み解いたものとしてご覧ください。緊急時において特に顕著となるポイントは青字で示しました。

セッションまとめ

■平常時

●NPO事業者

  • 災害が生じる前から行政・財団・支援団体とのネットワークを築き、勉強会・情報収集などを実施。特に、地域のコミュニティ財団と信頼関係を築き、資金調達、事業の進め方、助成金の受け方など活動全般について話すことで、関係性を築いている。
  • 支援対象となる外国人・高齢者・生活困窮者・障害者などの支援団体・行政とのネットワークを構築し、普段から包括支援へ繋げている。
  • 活動の成果を可視化するために、月間目標を掲げ、支援件数を増やせる体制づくりを進めている。1つの事業を大きくすることで、他の事業との相乗効果も期待できる。プロセスを確認するため、相談件数やマッチング件数、要した時間、情報経路などを把握し、件数を増やすために振り返りと改善を図っている。
  • ロジックモデルは、他団体・行政・企業の方に、活動に共感をしていただくためのツール。これによって自団体の行っていることを明確に伝えられ、人的や連携のネットワークが広がり、資金調達にもつながる。


●コミュニティ財団

  • 中小規模の自然災害が同時多発的に起こる前提で備えを始めている。ヒト・モノ・カネ・情報が必要な現場に届けるために「災害支援プラットフォーム」をつくり、地域の支援団体・企業を含めて情報交換・勉強会を開催している。行政とも協定を締結。市民社会組織(CSO)や災害対応のできる団体を誘致するなどしている。財団として基本的には県内の団体にのみ助成するが、外部団体も内部の団体と連携することで、申請可能な仕組みを設けている。
  • 平常時に助成をしている団体のエリアや、その地域の中間支援団体と信頼関係のあるコミュニティを作り、どの団体がどのエリアで活動しているかを把握している。関係性があるため、緊急時に素早い対応が可能となる。

●全国規模の基金

  • 2006年の設立後、多くの災害を経験し、積み重ねによってノウハウを蓄積している。
  • 災害を5つのフェーズに分けて取り組んでいる。災害が起きる前の防災・減災起きたときの緊急支援、被災地の復旧、長い目線で見たときの復興、記憶をつなぎ防災意識を高める啓蒙である。
  • 「復旧」において、ヒトの側面から、被災地とボランティアをマッチングするプラットフォームを運営している。モノの側面から、緊急災害対応アライアンスによりNPOが現地のニーズを掴み、加盟企業が物資を届ける仕組みを構築している。カネの側面から、活動資金を求めている団体へ寄付を行えるプラットフォームを運営している。加えて、「基金」によって、被災地や市民団体を支援している。
  • 平常時にヒト・モノ・カネの支援を行う中で、現場団体の取り組みや実績を把握し、データベースのように蓄積している。災害時には、災害のタイプ・規模・特性などから適切な団体を見つけていくことができる。

■緊急時


●NPO事業者

  • 災害時に何ができるか現場で模索し、まずは現場を知るために被災地ボランティアに参加。
  • 被災直後は毎晩、災害支援プラットフォームの情報共有会議へ参加し、何ができるかを検討。そこで出た他団体からの要望により活動を追加。情報交換によってニーズを把握し、予期していない活動も含め、自団体の強みを活かせる活動を展開。
  • 災害に直面して初めて分かることも多いため、想像して準備しておくと同時に、予期しないニーズに対して柔軟に前向きに、対応を検討する。支援の要望を受けた時に、できるか分からないことでも断らずにネットワークを駆使して対応を試みる。平常時に構築したネットワークと関係性があれば、何とかなることも多い。一方で、専門外の分野に踏み込むことは慎重に判断し、ネットワークの中で相談しながら進めていく。被災者の全てを担えるわけではない。
  • 行政や大きな団体がカバーできない部分を小さい地域のNPOが担い、被災者の代わりに支援要請をあげていく。見えにくいニーズを拾い、行政・財団へ伝えていく。復旧の支援地区から外れている地域へ、専門知識を活かした現場調査とヒアリングを行い、現状を報告し、行政と共に支援を届けるなど。

●コミュニティ財団

  • 基金として支援するかどうかの決定は、県の災害対策本部会議と民間の情報共有会議の中で被災状況を判断して少人数で決定。災害の規模にもよるが、現場の課題・ニーズと、活動の担い手が見えれば判断する。可能であれば、現地に入って被害状況を確認し、現場に来ている団体と情報交換し、専門家の方の意見を聞く。
  • 助成タイミングは早い方が良い。現場団体をバックアップするためには、寄付を集める前に助成金を出さないと間に合わない。数十万円の助成金ということもあり、申請受付から1週間以内に採択して入金する。今までの経験から、財団の持ち出しで200万円分ぐらいまでは助成すると決めている。情報共有会議で被災者の多様なニーズが上がってくる中で、財団として待っているだけでは支援活動が届かないと判断し、財団から現場団体へ「これできますか?」といった逆提案や打診といった相談をしていくこともある。
  • 助成先はウェブサイトにて報告。助成金の使途は数十万円の助成額ということもあり、活動が現場の課題にフィットしていれば、制限を設けずに助成している。用途の自由度を高くし、団体の緊急支援活動を通じて、現場のニーズを把握している。緊急支援は、市民の安全と衣食住が優先されるので分かりやすい活動になる。詳細の把握や評価をすることより、地域の困っている方へ支援する活動を少しでも後押しをすることを考えている。
  • 緊急支援においては、次のフェーズのためのニーズを拾う必要もあり、先行投資の側面もある。小さな資金で、被災者の困りごとに対応し、団体と関係性を築き、現場のニーズを掴むことができる。情報共有会議で活動報告をしてもらい、困りごとが解決されたかを把握し、報告書は極力簡単なものにしている。「目の前の困っている人たちが助かっている状態を作り続けられるか?活動を適切に展開できているか?」ということが非常に重要。
  • 過去の経験から、フェーズに応じたニーズの仮説を立てており、例えば炊き出し、泥かき、復旧・復興など、活動が変化していく。プロジェクト型・拠点型など予測しながら、マッチするかを現場の団体に確認しながら助成の仕組みを進めている。
  • 寄付集めは、平常時は寄付を集めて助成する仕組みだが、災害時は助成をしてから寄付を集める。サイトの開設速度によって寄付の集まり方に違いがあるので、1時間でも早く開設する。失敗しては改善する、というサイクルを繰り返している。
  • 行政に動いてほしいと感じる時は、エビデンスを集めて提言する。制度でできるものは制度で、できないものは民間・地域で対応する。足りないものを一つひとつ補っていく中で、「これが足りない」というものが明らかになり、それを改善していく。「その地域のためになる、困っている人が助かる」という活動を軸に、一歩一歩進めている。
  • 団体内部のマネジメントとして、災害時は職員の労働が過剰になり、心理的負担も大きくなる。フレックスやリモートワークを組み合わせ、実働が進むような体制作りが不可欠。災害支援では支援者側のバーンアウトも生じる。財団業務は激務だが、現場に行って活動している団体に会い、地域のおじいちゃん・おばあちゃんが助かっていることに元気をもらい、「頑張ろう」と思える。その目的がぶれなければ大丈夫。

●全国規模の基金

  • 仕組みとして、緊急支援として短期的なものでは1週間から3ヶ月、復興支援は長期的で数ヶ月から数年という単位で実施。被災者に対する義援金と、被災地で活動する団体への支援金の2つがある。被災状況調査といった後年に活きる調査案件に助成することもある。
  • コロナ禍では、寄付・助成先として、医療関係・病院、自治体、NPOなどへ資金を提供。
  • 寄付サイトの展開のスピードによって一般からの寄付額が変わってくるため、どうクイックに動くのか、変化する現在の状況に対応し続ける必要がある。大きな決定には理事会を通すが、クイックに動くときには書面決議のような形で一定数の理事が承認する体制を作っている。
  • 2020年5-6月「命を守る人を支えたいコロナ医療支援募金」は、著名YouTuberの発信により21万6,000人から寄付を集めた。若年層に対するリーチの強さ、広さがあった。
  • 助成先からは報告書や報告会で活動を報告してもらう。あまり細かい報告は求めておらず、お金の使い道を指定するより、目的にコミットしていれば、基本的にはお任せしている。使途を報告いただくよりは、活動の結果どうなったのかを報告いただいている。報告内容を、次の災害が起きたときの支援活動や、長期で支援が必要な場合の次フェーズへの活動のヒントにしていっている。
■今後へ向けて

●NPO事業者

  • 「災害支援プラットフォーム」により、様々な団体と繋がり、会議や研修を行い、できなかったことを実現する取り組みが加速している。
  • 平常時から支援が必要な方は災害時により支援が必要になる。自団体のネットワークをより強化し、災害時に支援が届く体制を作りたい。関わっている協議会でも、平常時だけでなく、災害緊急時のことも検討するようになった。専門性のある方たちとチームをつくるなどして連携し、この経験を生かしながら体制を作る。この経験やスキルを共有したり活かしてもらえるように、若い方たち巻き込んでいく。
  • 緊急支援を手探りで進める中で、自団体に不足していることが見えてきた。リソース、情報量、業界との連携、実行のための許認可など、平常時に準備していく。そのために手掛けている自主事業により注力していく。
  • コロナ禍が続く中で要支援者が増えている。支援の方法やアプローチも多様になり、新しい仕組みを生み出してニーズに応えていく。

●コミュニティ財団

  • 連携すること。全国規模の大きな財団・基金、県外から来る災害NPOなどと連携し、当事者の困りごとが解決されることが大事。現場団体をバックアップするためには、寄付を集める前に助成金を出さないと間に合わない。地域の財団として、良い助成金の設計をして、現場の団体へ資金を届ける。それが活用され、地域の困り事が助かる、というサイクルを回していく。
  • NPOを誘致して来ていただいており、プロフェッショナルな災害支援の団体から多くを学んだ。また現場団体とコミュニケーションを密にすることで、被災地の情報やニーズをいち早くキャッチし、助成金の出し方に反映させていくことができる。このサイクルが非常に速くて近いので、早く改善できる。現場団体と現場を見ながら話ができ、改善の手応えを感じられる。
  • 寄付集めは、情報収集と信頼性の担保をしながらかなりスピード感をもって進められたが、まだサイトのオープンまでに数日かかり遅い感触があったので改善したい。
  • 助成を出すスピード、特に初動の判断タイミングはもっと上げていきたい。
  • 「社会的インパクト評価」ではなく「マネジメント」ということで、言語化・可視化する大切さもあるが、地域の中では目の前の人の困りがどう解決されていくか、足りないところへ届けることへチャレンジしている。事業を改善することが大事。ロジックモデルは、中長期から見て進むべき道を示す地図。自団体が、地域の課題を目の前にして、辿り着きたいところへの道筋を明らかにできる。団体内部におけるコミュニケーションとして、関係者や金融機関も巻き込んで作ることにも意義がある。休眠預金事業においても団体と共に制作し、内部・外部への発信ツールとしていく。

●全国規模の基金

  • 幅広い団体のリストはあるが、地域の災害においては地域に密着した活動をしている団体についてはキャッチしきれない。地域のNPOとのリレーションが必要で、そのために地域のNPOを良く知っているコミュニティ財団や中間支援団体との連携が大切。より細かく幅広いリレーションを築いていくために、CSOリレーションズ・マネージャーという役割を設け、CSOとのネットワークを広げていく。
  • 一般寄付を募るためにはモメンタム(場の勢いや方向性)が大切。いつ、どんな情報と組み合わせて、誰へ向けて、誰が伝えるのかを工夫していくことで、寄付の集まり方が変わる。若い方やZ世代は社会貢献意欲が高く寄付のハードルが低い層ではあるが、著名YouTuberによって支援の輪が広がった。誰が伝えるかによって届く層が変わるというマーケティングの観点に近い学びがあった。
  • ある程度フェーズを分けて資金を使っていく。その時には予想できなかったことが2ヶ月後に起きる可能性もある。長期的な視点で見て、フェーズを意識しながら、別の支援が必要な状況で資金を出せるような体制や工夫をしていく。
  • 社会貢献活動の気持ち重視の部分と、その気持ちを基金として最大の効果を上げるためのロジックをどう作り、PDCAに繋げて形にしていくか。活かしていきたい。

緊急時に複数の立場である組織やステークホルダーが、どのように役割を果たしながら連携し、社会的インパクトを生み出していくのか。まだ議論の途上ではありますが、緊急期の痛みをできるだけ和らげながら支援を行っていくために、参考にしていただければと思います。他組織の事例から学び、自団体や地域における備えを見直していくことで、いざその状況に直面した際に、予測しながら活動を展開していけるのではないかと考えています。
これらの整理が、少しでも皆さまの活動の一助になれば幸いです。今後もイベントを通じて、緊急時および平常時における社会的インパクト・マネジメントについて、皆さまと学びを深めていけたらと考えています。

(おわり)


【開催レポート】「現場団体と財団・基金のコミュニケーションと判断軸」(1)団体活動紹介「公益財団法人佐賀未来創造基金」
(2)団体活動紹介「NPO法人空家・空地活用サポートSAGA」
(3)団体活動紹介「Yahoo!基金」
(4)パネルディスカッション前編
(5)パネルディスカッション後編
(6)[主催チームまとめ]緊急時における社会的インパクト・マネジメントのポイント

社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)
緊急時における社会的インパクト・マネジメントを検討するタスクフォース
メンバー:山中資久、高木麻美、大沢望、川合朋音、高山大祐、土岐三輪

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