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【開催レポート】「現場団体と財団・基金のコミュニケーションと判断軸」(1)団体活動紹介「公益財団法人佐賀未来創造基金」
社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(以下、SIMI)では、11月27日に、「~緊急時における社会的インパクト・マネジメント vol2~『現場団体と財団・基金のコミュニケーションと判断軸』」を開催しました。
(開催案内はこちら)
本開催レポートは、当日のディスカッションを書き起こし、整理したものです。
【開催レポート】「現場団体と財団・基金のコミュニケーションと判断軸」
(1)団体活動紹介「公益財団法人佐賀未来創造基金」
(2)団体活動紹介「NPO法人空家・空地活用サポートSAGA」
(3)団体活動紹介「Yahoo!基金」
(4)パネルディスカッション前編
(5)パネルディスカッション後編
(6)[主催チームまとめ]緊急時における社会的インパクト・マネジメントのポイント
山田 健一郎氏
公益財団法人佐賀未来創造基金 代表理事
〇平時の準備とこれまでの佐賀の流れ
山田)これまでの動き、前提としてですが、東北の支援であったり、熊本地震の県外支援などをやってきています。佐賀では市民社会組織のことを「CSO」と呼んでいますが、「CSO誘致」もやっていて、災害対応できる団体さんがどんどん佐賀に来てくださっています。最近もジャパンハートさんに来ていただいて、今後医療とかコロナ対応のこともやろうということで話しておりました。
そういう中で、私がかねて副委員長を務めている「佐賀災害支援プラットフォーム」という、今は企業等を含めて約50団体が入っている災害支援のプラットフォームも作りました。ヒト・モノ・カネ・情報がちゃんと必要な現場に届くということを目的に繋がっていく、ということをやっています。
〇令和元年佐賀豪雨災害(2019年8月27日発災)
平時は、勉強会などの定期的な集まりをしている中で、県外支援を結構行っていたのですけれど、令和元年の佐賀豪雨災害で、私たちの県で発災するという状況になりました。特徴的だったのが、災害に加えて重油被害もあったことです。
規模的には地震とかと比べると大きくはないですけれど、地域はかなりダメージを受けています。こういう中小規模の災害がこれから同時多発的に起こってくるという状況が来ていると思っています。
発災から1ヶ月後ぐらいの状況ですが、支援の担い手が少なくなる一方で、いろんな課題は残り続けていました。私たちの財団でも、関連しているコミュニティカフェが浸水したり、車2台が動かなくなったりしました。
〇行政(佐賀県)や多様な民間支援団体との連携
行政との連携という点ですが、協定も結んでいるので、佐賀県の災害対策本部会議に私たちは初日から出席することができました。そういう中で情報を取っていくということをしています。また多様な民間支援団体とも、被災されたところの課題などを共有するための会議を定期的に開催しています。佐賀では「葉隠」という名前が地元に根付いていますので、「葉隠会議」と呼んで情報共有会議を実施しています。
基本的にはこの情報共有会議などのコミュニティで課題やニーズの共有、担い手との関係性を構築していく、前提としての信頼関係を作っているというところが、私たちの財団が助成する上での一つの判断軸になっています。
〇災害対応時の助成とファンドレイジング
「佐賀災害支援プラットフォーム」、SPFと呼んでいますが、SPFと連携して「佐賀災害基金」を作りました。寄付累積として149件で約993万554円のご寄付があり、助成実績は53件で約776万2,488円となっています。まだ被災状況が回復していないところが多いので、ご支援を未だにさせていただいております。また、平時の助成先と連携した助成金の広報や、現地の調査もしています。
〇災害対応時の緊急助成事業
災害対応時の緊急助成事業のあり方については、まだ全然完成でも何でもなく、やったことを記録しているという状況です。緊急時としては、財団持ち出しで200万円分ぐらいまでは助成しようと、身銭を切ってやろうということでやりました。その時点では寄付自体は数十万円しか集まっていませんでしたが、現在は先ほどお話したように約990万円のご寄付をいただいているので、先に出して何とか追いついたという状況です。原則10万円を上限に助成しています。
県内団体の連携団体として、県外の支援団体が入ってくる場合があります。私たちは佐賀県所管の公益財団法人のため、佐賀の団体にしか助成できないのですが、連携申請によって県外団体も活用できたり、SPFと連携して経費精算できる形を可能にしています。
特徴的というほどでもないですが、1週間以内に採択から助成実施、入金しています。その間に現地ヒアリングや電話をして状況や申請内容等の確認をします。あえて制限を設けず用途の自由度を高くして、緊急支援活動やニーズ把握をしています。
あと、審査会での申請案件でそのままでの採択が難しかったものも、すぐには不採択という形にはせずに、条件付採択という形にして足りない部分を伴走支援で付加していくことにしたり、保留案件にして事業内容などをブラッシュアップして再審査するなどにしています。また、情報共有会議等で共有してもらって見直して改善しつつ、こちらから逆提案をさせていただいたりもしています。
あとは補足になりますが、資金以外の物資とかは「スマートサプライ」であったり、岡山NPOセンターの皆さんなど、いろいろな方々に助けていただいて支援活動を行っているという状況です。
〇助成事業をしながらの並行した寄付集め
初動のスピード感と平時の準備の大切さがあります。寄付集めで、同じような内容でも、4日ぐらいの差で2倍ぐらい、集まった寄付金額が違いました。同じ目標金額の300万円で、一方はもうすでに達成していて、もう一方はなかなか最後まで達成できずに厳しかったことがあります。平時では寄付を集めて助成するというのが私たちのサイクルですが、災害時は助成をしながら寄付を集めるということをしいます。
発災後からの流れですが、8月27日に被災して、8月30日に寄付募集を開始して助成をしました。もちろん私たちも助成をした団体とも連絡をとりながら、未だに支援活動を続けています。
〇助成事業を行いながらの現状分析と今後の戦略立案
緊急時に限らずですが、助成事業はまずは地域の目の前の課題とこれから表層化される課題の両方を解決していかないと、いくらお金を出せたとしても意味がないと私は思っています。緊急時は助成事業を行いながら、地域の現状と課題の分析と今後の戦略立てをしています。今回の佐賀の場合は5つの市町がかなり被害を受けたので、SPFを入れて必要な資源や担当の人とかを置いて、課題とニーズと担い手を見つけて、それに対して必要な分のお金を出すということを行政や社協とも連携しながらやるという形を、一応仮説を立てて今も継続して実施しています。
〇平時の助成団体と災害助成
NPO法人空家・空地活用サポートSAGA、通称「そらそら」さんです。平時の助成事業(休眠預金を含む)では、円卓会議、空き家の白書、リノベーション、シェアハウス、空き家の助成事業などを一緒にさせていただいています。
ここは、平時には外国人向けのシェアハウスをしているような建物を、災害時にはNPO法人災害救援レスキューアシストさんに支援活動の拠点として提供していました。安定した被災者への支援活動を行うためには非常に大事なフォローアップの活動だと思いました。被災者の支援活動をする「支援者の拠点」が必要だということで、その課題に対して空き家を一時的に提供していただくという、緊急時の即座で柔軟な変化とか深化、対応が非常に効果を生んだ一例です。葉隠会議に参加していただき、ニーズとシーズを結びつけて、より円滑で効果的な支援活動を行うことができていることは地域にとっては非常にありがたいことです。
また、そらそらさんには、被災地域での家屋や要配慮者などの個別相談やヒアリングなども行われていました。平時の活動を応用して緊急時での支援活動に直接的・間接的に貢献される活動に助成をさせていただいているという状況です。平時の活動や関係性が緊急時に活きてくるということを改めて感じました。
〇教訓・気づき
緊急時の対応としては、私自身は審査には入らず、審査会に持っていくまでの、課題や現状確認、そして、案件形成やブラッシュアップを担当しています。1団体のみではなかなか課題解決や事業実施などが難しい場合もあるので、団体同士をマッチングしたり、コレクティブインパクト型などのチームを作って支援しています。とにかく、みんなで考えて皆でチャレンジしていくということですね。地域ですので。
失敗やできていないことが結構多かったので、災害時に反省した経験を活かして、現状での新型コロナ対応をしています。失敗と改善をし続けることで、雛型みたいなものを自分たちのなかで作り出そうとしているところです。
〇経験を活かした新型コロナへの対応
コロナの場合は、2月27日に全国で学校が臨時休校になり、学童保育やこどもの居場所などの現場の団体さんはかなりきつい状況だったので、そこに対して助成をすることを27日から助成できるようにしていました。同時に助成先や個別団体のヒアリングをして状況を確認して、CSO全体の被害状況アンケートも取って全体の困り感を共有して対策を考えました。
そのエビデンスをもとに要望書を佐賀県や市の行政及び議会に提出して、コロナ禍でのCSOへの支援制度の設計と実践を官民協働で行いました。ふるさと納税を原資にしたマッチングギフト方式での約1,000万円の「佐賀型CSO持続支援金」という助成事業を協働で作って、CSOへの給付をしていったという流れがあります。
おかげさまで現在2,500万円ぐらい集まっていて、今も助成を継続しています。それでも足りない分野やエリア、そして支援活動に対しては休眠預金事業(新型コロナ枠)を活用して助成事業を展開しています。
現状では全体で2億円を超える程度で、高齢福祉の分野、多文化共生の分野、そしてコロナ禍での複合災害対応という大きく3つの分野の助成事業も行っています。その他にも、医療従事者支援や、奨学金、サガン鳥栖などのスポーツ、飲食店などの支援などは、現行の支援制度などでは不足している部分を補完するような、地域独自の小さな支援助成金も行っています。
自分たちの地域なので、地域のみんなで力を合わせて乗り越えていきたいと思ってやり続けています。これからもよろしくお願いします。ご清聴ありがとうございました。
(「公益財団法人佐賀未来創造基金」からの活動紹介は以上です)
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