1章 社会的インパクトについて考える
概論編では、社会的インパクトに関連する基本理念について、SIMIとしての概説を加えます。概説は、「社会的インパクト」→「社会的インパクト志向」→「社会的インパクト・マネジメントの概要」→「社会的インパクト・マネジメントの実践」の順になります。本章の主要テーマは「社会的インパクト」です。
なお、最近では、社会的インパクトの「社会的」を取って、単に「インパクト」と表現する場合も増えていますが、このガイドラインでは一貫して「社会的インパクト」の用語を使います。
1節 社会的インパクトとは
社会的インパクト
社会的インパクトとは、「短期、長期の変化を含め、当該事業や活動の結果として生じた社会的、環境的なアウトカム」のことです。この定義は、内閣府による「社会的インパクト評価の推進に向けて―社会的課題解決に向けた社会的インパクト評価の基本的概念と今後の対応策について―」(2016年3月)の定義を踏襲しています。
以下4点は、社会的インパクトの捉え方についてのSIMIの整理です。
<社会的インパクトのポイント>
- 長期的な取り組みによるものだけではなく、短期で生じる変化も含む。
- 大規模な取り組みによるものだけではなく、小規模のものや心理的変化(それが複数の人々へ波及する可能性がある場合は個人のものも含め)なども含む。
- 数値化(定量化)されたものだけではなく、定性情報でも表すことができる。
- ポジティブ、ネガティブの両方の変化を含む。
※上記の変化は、ランダム化比較試験等の厳密な評価デザインによって確認できる(取り組みによる純粋な変化量を確認できる)ことが最も望ましいですが、実際にはそのような評価デザインが採用できない場面も多いと考えられます。そのため、ここで定義される「社会的インパクト」はそのような厳格な評価デザインによって明らかにするものに限定されるわけではありません。
様々な取り組みにおいて「どのような変化を社会的インパクトとして設定するか?」は、その影響の内容・程度や、関係者間での合意、社会的な合意などにもとづき判断されることになります。また、社会的インパクトの可視化においては、後述するように「どのような根拠でそれを言うことができるのか」というエビデンスの提示が重要となります(「6章 Step4:事業計画と評価計画の策定」を参照)。(Step4:事業計画と評価計画の策定を参照)