1章 社会的インパクトについて考える

2節 社会的インパクト志向とインパクト志向宣言

社会的インパクト志向

 社会的インパクト志向とは、「社会課題解決や社会価値創造に資する様々な事業や取り組みにおいて、その取り組みの⽣み出す社会的インパクトを重視し、その向上を⽬指す考え⽅」のことです。社会的インパクト志向は、単に「インパクト志向」と呼ぶこともできます。

*志向:意識が一定の対象に向かうこと。考えや気持ちがある方向を目指すこと。

 SIMIでは、2017年にワーキンググループを結成し、社会的インパクト志向のあり方について協議し、それを「宣言」という形でまとめました(注:当時は「原則」と呼んでいましたが、2020年のSIMI法人化以降、これを「宣言」に言い換えました)。宣言は、社会的インパクト志向で事業や取り組みを実施するための基本的な考え⽅を表明するものです。

 ワーキンググループでは、「なぜ社会的インパクト志向をもつことが必要なのか(WHYの問い)」から始め、それを「社会的インパクト志向検討の背景」(関連コラム参照)にまとめました。国内外で山積する社会課題の解決や新しい社会のあり方を構想する社会価値創造の試みをより加速させ、より効果的なものとするには私たちは何をすべきなのか(WHATの問い)についてSIMIとしての問題意識を簡潔にまとめ(「検討の背景」)、では具体的にどうするのか(「志向宣言」)を提示しました。「はじめに」で述べたように、このガイドラインでは社会的インパクト・マネジメントの「HOW」について概説しますが、その前に、「WHY」と「WHAT」をしっかり押さえておくことは、なんのために社会的インパクト・マネジメントを行うのかに立ち返るために必要なことです。

 「社会的インパクト志向宣言」は、以下の内容です。

社会的インパクト志向宣言

 私たちは、⽴場や役割の違いにかかわらず、よりよい社会をつくるために、以下のように社会的インパクト志向で事業や活動に取り組むことを⽬指します。

1. 社会的インパクトを重視した事業開発・改善に取り組むこと

 ⽬指す社会課題解決や社会価値創造の実現に向けた道筋、期間、資源を⻑期的な視野で明確化し、成果として定義した社会的インパクトを評価しPDCAサイクルを回しながら事業に取り組むこと、またそうした社会的インパクトを重視した事業を積極的に支援することを⽬指します。

2. 多様な主体で協働して取り組むこと

 NPO、企業、資⾦提供者、中間⽀援組織、市⺠、⾏政などが業界や活動分野を越え、互いに知識、経験、技術などの強みを持ち寄って、協働して社会課題解決や社会価値創造に取り組むことを⽬指します。

3. 事業モデルを普及させること*

 個別の取り組みから得られた知⾒を積極的に発信・共有して他の地域や分野にも普及可能な事業モデルを創出し、その事業モデルを普及することで社会的インパクトの向上を⽬指します。

*社会的インパクトを向上・拡大させることが目的であり、その手法として事業モデルを普及させることが必要であるという位置付けになります。事業モデルの普及のみならず、その他の社会的インパクトの向上・拡大に資するアプローチ(営利企業の事業拡大、コレクティブ・インパクトなど)についても歓迎されます。

図表1:インパクト志向宣言と社会的インパクト・マネジメント・ガイドライン

関連コラム

社会的インパクト志向検討の背景
社会的インパクト志向宣言を実行可能なものにするために

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