4章 インパクト・マネジメント・サイクルの回し方

 本章では、社会的インパクト・マネジメントの実践の要諦であるインパクト・マネジメント・サイクルの回し方についての、基本となる考え方を解説します。

1節 意思決定の視点と評価の視点

 社会的インパクト・マネジメントの特徴はその定義にあるように、「事業や取り組みがもたらす変化や価値に関する情報」を「各種の意思決定や改善に継続的に活用」することにあります。そのために必要となるのが、事業や取り組みを進めていく上での「意思決定の視点」と、事実特定と価値判断からなる「評価の視点」を意識的に使い分けて、往復させることです。

 図表5は、意思決定の視点と評価の視点で行う内容を例示したものです。例えば、事業や取り組みの目的・目標を設定するのは、組織等における意思決定に該当するので、意思決定の視点で検討・判断を行います。その際に、例えば「特に深刻な問題は何か?」という問いを立て、社会問題に関する指標を調査してその程度を把握し(事実特定)、それが重大なものか軽微なものかを判断する(価値判断)するのが評価の視点です。

図表5:意思決定の視点と評価の視点の例

 図表5の青い矢印は、各項目において意思決定の視点と評価の視点を往復させることを表しています。それにより、意思決定の質を向上させていくことを意図しており、そこに社会的インパクト・マネジメントの機能としての     特徴があります。

 また、同図表の赤い矢印で表しているのは、同一の視点間での往復です。意思決定の視点において、目的・目標の設定をした次のステップとしては戦略と計画の策定がありますが、その検討を行う中で、目的・目標の再検討を行う場合もあるでしょう。また評価の視点においても、「適切に事業は実施されているか?」という問いを検証する中で課題を発見した場合には、前の問いである「計画は実現可能なものか?」で検証した内容を改めて確認することが必要になるでしょう。このように、同一視点間での往復があることでも、各検証内容や判断、意思決定などの質の向上が図られていきます。

 以上のように、青い矢印で示す横方向の往復、赤い矢印で示す縦方向の往復があることで、よりよい意思決定や改善を生み出していくことを企図しているのが社会的インパクト・マネジメントの特徴であり、それがインパクト・マネジメント・サイクルを回していく際のポイントにもなります。

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