6章 社会的インパクト・マネジメントの実践ステップ
Step 3: 戦略策定・検証(第1ステージ:計画)
事業目的と実施する事業内容との整合性を検討し、事業戦略を策定します。社会課題解決や社会価値創造にいたる道のりと必要な資源について整理し、事業目的を達成する上で重要となる具体的な目標・成果(アウトカム)を明確化・特定します。その実現のために必要なアクションを設定するとともに、それらが事業目的と照らし合わせて妥当なものかどうかを検討します。
意思決定の視点 | 評価の視点 |
【目的】 ・課題の解決や生み出したい社会的価値を創造するための事業戦略を決定する。 【作業例】 ①事業戦略の策定にロジックモデルを使うのか、セオリー・オブ・チェンジを使うのか、その他の方法を使うのかを決定する。 ②右側(評価の視点)から得た情報をもとに事業戦略を決定する(どのような戦略をとるかを意思決定する)。 ③上記をもとに「事業計画書」を作成する。 | 【目的】 ・事業戦略(例えばロジックモデル等)を作成し、それがある程度は妥当といえるかを検証する。 【作業例】 ①ロジックモデルやセオリー・オブ・チェンジなどのツールを用いて活動から成果までの関係整理や事業戦略を図示する。 ②上記①で作成したものに沿ってインプット調達計画(ヒト・モノ・カネを調達する道筋)を作成する。 ③ロジックモデルやセオリー・オブ・チェンジなどのツールによる関係整理や事業戦略と先行研究の知見を対照させ、妥当な内容であるかを検証する。 ④事前調査・テストマーケティング(取り組みの試験的な実施)を行い、ステークホルダーからのフィードバックを得る。 ⑤上記①~④を踏まえ、事業は実施可能か、マイナスのインパクトを生まないかなどの懸念点の洗い出しを行い、対策を検討する。 |
図表16:実践 Step3 戦略策定・検証のポイント
実践のヒント
- 学術研究などの情報を収集し、既存のエビデンスや理論をもとに介入戦略を立てることができるかを検討する。
- アウトカムの明確化・特定化には、ステークホルダー間で合意できる共通のアウトカムを言語化するとともに、必要であれば、直接関わるステークホルダーごとのアウトカムを確認する。
- アウトカムの増大を図るためには、他団体との協働や他事業との連携の可能性を検討する。
- ステークホルダーと情報を共有し、共通認識を得る。
社会的インパクト・マネジメント原則の留意点
a. ステークホルダーの参加・協働 | 【意思決定の視点】事業の戦略の策定やその妥当性の検討は、可能な限り、組織内部、事業の対象者・受益者、資金提供者、その他事業により影響を受けるステークホルダーといった組織内外のステークホルダーと協働して行い、合意形成に努める。 |
【評価の視点】事業の戦略策定やその妥当性の検討において協働したステークホルダーと、データ収集や分析においていかに協働関係を維持するか、検討する。 | |
b. 重要性 (マテリアリティ) | 【意思決定の視点】事業のアウトプットやアウトカムを検討する際には、事業目的の達成のために必要な変化や、事業や取り組みが組織内外のステークホルダーに与える影響の大小の観点から、特に重要なものを選択するようにする。 |
【評価の視点】組織内外のステークホルダーへの影響が小さいと予測されるアウトプットやアウトカムについては評価の優先順位は低くなる。 | |
c. 信頼性 | 【評価の視点】戦略策定に参照した学術研究の信頼性や学術的根拠の程度について、必要があれば専門家の助言も仰ぎながらその妥当性や有用性の検討を行う。 |
d. 透明性 | 【意思決定の視点】事業の戦略策定やその妥当性の検討について、適切な範囲での情報開示を検討する。 |
f. 状況適応性 | 【意思決定の視点】このStepで行う課題の特定、事業の戦略策定は、一度行って終わりではなく、状況の変化に目を配り、必要に応じて再検討ができるように常に準備しておく。 |
関連コラム