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【開催レポート】「3団体に聞く!! 現場の試行錯誤と意思決定」(3)団体活動紹介「サステイナブル・サポート」
社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(以下、SIMI)では、7月1日に、「~緊急時における社会的インパクト・マネジメント~『3団体に聞く!! 現場の試行錯誤と意思決定』」を開催しました。
(開催案内はこちら)
本開催レポートは、当日のディスカッションを書き起こし、整理したものです。
全6回に分けてお届けします。
【開催レポート】「3団体に聞く!! 現場の試行錯誤と意思決定」
(1)団体活動紹介「東の食の会」
(2)団体活動紹介「こおりやま子ども若者ネット」
(3)団体活動紹介「サステイナブル・サポート」
(4)パネルディスカッション前編
(5)パネルディスカッション後編
(6)[主催チームまとめ]緊急時における社会的インパクト・マネジメントのポイント
後藤 千絵氏
一般社団法人サステイナブル・サポート 代表理事
後藤)私たちの団体は障害者支援を中心に活動を行っています。
●コロナ前
〇ノックス岐阜
発達障害・精神障害のある人向けの就労移行支援事業「ノックス岐阜」を、2015年からスタートしました。“勇気を出して扉をノックすることから世界広がってくる”という想いで活動しています。就職活動プログラム、職場実習の提供、面談などを行なっており、1日に約20人の利用者さんが施設に通所しています。年間の就職者は10人~15人ほどです。
〇アリー
就労移行支援は利用期限が2年間と決まっておりまして、2年間ではどうしても就職が難しいという方たちが安心して通える場所を作りたく、昨年10月に「就労継続支援B型事業所アリー」をオープンしました。岐阜の川原町という景観地区にある歴史的な町家を改装し、地域の伝統産業である岐阜提灯や和傘とコラボレーションした作業や小物作りを行っています。現在の利用者は女性のみで、DVを経験してきた人も多く、コンセプトを“大人の女性も安心して通える場所”としています。
ノックス岐阜とアリーは福祉制度に則った事業です。
〇まゼこゼフぇス
障害者の就労支援だけでは、彼らが目指す生き方の実現が難しいなと感じまして、社会に向けた発信として、ダイバーシティ啓発イベントを行っています。義足のプロダンサー大前光市氏のパフォーマンス、アートのワークショップ、乙武洋匡氏を招いてのダイバーシティ講演会、ご当地アイドルと特別支援学級の生徒のファッションショー、岐阜市長とビリギャル小林さやか氏の対談イベントなど、障害者が中心のイベントとしてではなく、健常者も参加したくなるイベントに、障害者も当たり前に参加できる、“混ぜこぜ”なイベントを開催しています。
〇キャリア支援プログラム
私たちの施設は、知的の遅れのない発達障害や精神障害のあるの方が利用しています。そこで気づいたのは、彼らのほとんどが大学を卒業後、就職して、つまずいて、引きこもりやニートになり、2次障害を発症してから、やっと診断を受けて、福祉につながる、という現実です。利用者さんのうち半数以上が高等教育を受けている方々になりますが、ほとんどの人が卒業後に診断を受けており、福祉につながる時点では問題が複雑化していることも多いです。そこで、診断がないけれども発達障害特性の見られる、いわゆる“グレーゾーン”と呼ばれる学生に向けて、2017年に「キャリア支援プログラム」を開始しました。就職でつまずく前に適切な支援が入ることで、自分らしいキャリア選択につながる予防的な支援として実施しています。
2018年度より、風とつばさの水谷衣里さん、CSOネットワークの千葉直紀さんに伴走支援に入っていただき、社会的インパクト評価を実施してきました。2年間一緒に取り組み、研究会も発足させ、事業の価値を共有することができたというのは、非常に大きな成果だったなと思っています。これからこの事業をどのように社会に広めていくか、今そのターニングポイントに来ていると感じています。
弊団体の事業の規模は、理事を含めた有給スタッフが16人、年間の収入が7000万円強、平均して月500万円の固定費がかかっています。収入内訳のほとんどが事業収入で、現実には福祉制度の収入で他の活動を支える、という形になっています。
●コロナ後
施設では2月中旬頃からコロナ対策を開始しました。職員の外出を自粛、徹底的な消毒・マスクなどです。その頃は、もし緊急事態宣言が出たら休業要請の対象になるだろうと思っていました。
ところが2月下旬の厚労省から通達は、人員配置など柔軟な対応を認めつつ「基本的には運営を継続してください」ということでした。就労支援事業を行っている私たちとしては、「えっ、やるの?就労支援は不要不急なのでは?」と思いました。医療と同じで、福祉サービスを受けないと生活が困難な人々がたくさんいらっしゃるということは理解できますが、福祉サービスは範囲が広く、外出自粛や企業には在宅勤務、休業要請が出ている状態で、就労支援は今必要な活動ではないのでは、とは思いました。
一方で、私たちの収入のほとんどは施設での就労支援による事業収入であることを踏まえると、休業して収入がなくなると固定費の確保が非常に厳しくなるという現実もありました。休業要請の対象ではないので、休業協力金なども受けられません。
何よりも利用者の方がセンシティブな状態になっており、支援自体は継続して行う必要があるなと考えました。
そこで、どうしたら最も安全に事業運営できるかを考え、3月中旬くらいから在宅支援の準備を開始しました。利用者にアンケートとり、PCを10数台購入し、オンラインを使ったプログラムを検討したりして、準備を進めていきました。3週間ほどで準備を整えて、その直後に岐阜県でクラスターが発生して県は4月10日に独自の非常事態宣言を発令し、当団体は4月13日から在宅支援を開始することになり、タイミングとしてはギリギリでした。
2月~3月、厚労省の方針にモヤっとしながらも通達を読み、利用者の状況を踏まえ、地域の感染の広がりを調べ、施設運営の継続と休業のリスク、中長期的な活動を考え、「ではどうやったら安全に運営できるか」ということを検討し、実際に行動し、不具合を修正していくというプロセスを、ひたすら行っているような状態です。また経営者として一番腹を括ったのが、最悪のケースが起こった時のことです。スタッフや利用者に感染者が出たり、施設でクラスターが起こった時にどうするのか。そのための備えとして3月に、法人を立ち上げてから過去最高額の借り入れを、銀行から行いました。
しかしながら、福祉事業を実施していて感じるのは「なんやかんや言っても制度事業は恵まれている」ということです。先日、厚労省から福祉職員に対する慰労金や感染対策に要した費用補助の通達があり、後からお金が補填されるのは制度事業が故だと感じています。もちろん先んじて動いた際には見えていなかったのですが、結果的にはそうなりました。助かる反面、本当にそれで良いのか、この状況で様々な福祉サービスを同列に扱って良いのか、就労支援事業を続けるのが正しいのかどうか、という疑問に向き合って、アクションしていくべきと感じています。
一方で、学生支援「キャリア支援プログラム」は止まっており、今こそ学生支援が必要なのですが、実態としては活動資金が調達できていません。この間、何度もスタッフとオンラインミーティングを重ね、改めてコロナ禍におけるニーズ・セオリー・プロセス・成果とは何かを検討し、「やる」と決めまして、現在準備中です。就労が困難な大学生の就職は、世間の景気が良い時にはなんだかんだ就職できてしまって、彼らの困り感は表面化して来ないです。コロナの影響によって就職活動が非常に難しくなることが予測される今だからこそ、彼らの困り感というのが、多くの人の課題になっていくのではないかと感じています。この予防的支援は非常に画期的な事業なのですが、大学生支援の必要性を理解してもらうのが難しく、社会的インパクト評価なども導入していますが、安定的な活動資金を得るまでにはまだ時間がかかりそうです。もしかしたらこのコロナがチャンスかも知れず、困惑する大学生がクローズアップされてくるかも知れません。彼らへの救済策が安易な雇用施策だけにならないように、彼らにとって真に必要なサポートとは何か、それをいかに提案していくか、もう一度見直して活動していく局面だと考えています。
これらが私たちの活動となります。
(「サステイナブル・サポート」からの活動紹介は以上です。)
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(2)団体活動紹介「こおりやま子ども若者ネット」
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