SIMI:取り組み事例

2020年09月07日

【開催レポート】「3団体に聞く!! 現場の試行錯誤と意思決定」(5)パネルディスカッション後編

社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(以下、SIMI)では、7月1日に、「~緊急時における社会的インパクト・マネジメント~『3団体に聞く!! 現場の試行錯誤と意思決定』」を開催しました。
(開催案内はこちら

本開催レポートは、当日のディスカッションを書き起こし、整理したものです。
全6回に分けてお届けします。

【開催レポート】「3団体に聞く!! 現場の試行錯誤と意思決定」
(1)団体活動紹介「東の食の会」
(2)団体活動紹介「こおりやま子ども若者ネット」
(3)団体活動紹介「サステイナブル・サポート」
(4)パネルディスカッション前編
(5)パネルディスカッション後編
(6)[主催チームまとめ]緊急時における社会的インパクト・マネジメントのポイント


パネルディスカッション後編

(「パネルディスカッション前編」からのつづき)

山崎)ありがとうございます。では次の質問で、「今後の景気後退の収入源、利用者減、事業収入源や寄付金の減少について、いかがでしょうか。これから未来は間違いなく事業的に厳しくなると想像します。未来の事業の厳しさに対して、動いていることありますか?」皆さんいかがですか?

高橋)我々の業界が食産業ということでビジネス寄りなので、事業収益をしっかり上げるという事は、すごく重要だと思っています。一方で社会福祉の領域の課題は、これからどんどん問題が根深く大きくなっていく。社会や世界中で起きている分断や貧困の問題が加速していることを踏まえると、我々のようなNPOはますます事業収益をしっかり上げて、課題の大きな非収益事業にどれだけファイナンスできるか、ということを考えなければならないと思っています。収益事業と非収益事業の両輪を回すというNPOの経営マネジメントスキルは、試されているなと思っています。

山崎)稼げる事業を作るということを意識してやられているのであれば、未来の予測をして「この領域で稼ごう」という種まきはされていますか?

高橋)食の領域なので、この状況下でも胃袋の数は変わっていないし、コロナで食べる量が少なくなっているわけではないので、マーケットサイズは変わっていない。チャネルが変わった。今はチャネルで差が出ているので、もっと工夫の余地はあると思っています。

後藤)私たちの事業も元に戻すのではなく、支援のやり方や仕組み自体をアップデートしていかなければならない、と思っています。今回、就労支援事業をオンライン化しまして、学生支援事業の方もオンラインを取り入れいく計画です。そのことで私たちの対象者が一気に地域を超え、今までアクセスできなかった人にもサービスを届けることができるようになる。誰にとっても使いやすいユニバーサルデザインに近づくのかも知れません。そういう意味では新たなマーケットであり、良いきっかけとして新しい進め方を検討していく岐路にいるのかなと思っています。

山崎)すごいよく分かります。僕が大事にしている言葉に「必要は発明の母」というのがあって、マザーハウスでも新規事業が3つ生まれました。高橋さんの話もそうですが、制約はあるけれども、必要なのだから、やらなければいけない。みんなが同じ共通認識を持っている中で、新しいことにチャレンジする良い機会とも言えますね。

高橋さんのおっしゃっていた通りで、Whyは同じなかで、What・Howをどう変えるか。売るモノを変える、売り方を変える。実際に売るものは支援事業だけれども、リアルなのかオンラインなのか、というHowを変える。高橋さんの事業はWhyとして、第1次産業の人たちだけれども、そのために飲食業が必要だからWhatの向きを変えた。売るものを変える、売り方を変えるという形で、新しい事業が生まれている。

マザーハウスのある新規事業は、海外の事業がロックダウンで止まったので、その修理工場でバッグを修理することができなくなった。そこで日本のバッグ工場で解体して作り直すというリサイクルのバッグの事業を、7月から開始します。サプライチェーンが分断されたので何も作れなくなったのですが、それなら素材を日本のお客様からもらえばよいじゃないか、ということで、お客様の使い古したバッグを回収して、解体して綺麗にして作り直して新しいバッグにするという事業を日本でやる、と。まさに制約条件から始めてWhatを変えた事業です。

鈴木)今後のことで言うと、自分たちのネットワークには自治体と仕事をしている団体もありまして、ある自治体は次年度予算を何パーセント減という方針を出しています。要はステークホルダーの役割が減る方向で動いている。ではどのようにして減らすのか、本当に減らしてはいけない部分はどこなのか。自分たちはそこを訴えていく立場だと思っています。プレッシャーをかけるわけではないのですが、自治体の役割は何か、一方で自治体が減らしたものに対して我々がフォローせざるを得ないので、それに対する市民活動の資金の流れを変えていかなければならない。寄付付き商品など検討し始めており、自分たちも新たな領域に進まなければいけないと感じています。

こおりやま子ども若者ネット事業報告資料より

山崎)そうですね、応援者や支援者の方からしっかり資金をお預かりしていく、その体制を整えていくタイミングかなと思います。

次の質問ですが、「緊急時には事業の対象者のニーズに違いが出てくるのでは。その際にどう対応されたか?」ということですが、ニーズの変化に対して柔軟に対応されたか、何を重要視してコミュニケーションされたのか、どうでしょうか。

後藤)私たちは、まだこれからだと思います。オンラインの件はその通りで、他にも個々のニーズの違いにやっと気づいたところで、それをこれからどう修正して行くのか、コロナの第二波、第三波やこれからの時代に、私たち自身ができること、現場の声をいかにキャッチして対応していくか、その必要性は感じています。

鈴木)僕らも自分たちが関わっている子ども・若者たちはサイレントマイノリティだと思っていて、後藤さんも“声”と表現されていましたが、声を形にする所から始まると思っています。ニーズは多様化するという仮説はあるけれども、その声は実際に何なのか、というところを捉えたい。僕の行動原則は「まず声、その後お金」でして、まず声を聞き、対応していく、資金を調達していく、ということをやっていこうと思っています。

高橋)おっしゃるように、食の一次生産者、二次加工業者の状況はまちまちです。それをヒアリングして、ニーズを細かく把握することが大事だと思っています。その上で我々は民間なので、えこひいきをしてもいい、と。「平等性にこだわらない」ということは、前からずっと言っておりまして、顕在化しているニーズがあればやりますし、そうでなければやらない。形式的な平等性・公平性を気にするよりは、大変な人がいることははっきり分かっているので、その人たちへ引き続き支援をし、余裕がある人には支援側に回ってもらう、ということは柔軟にできているかなと思います。

山崎)そこはトップとして高橋さんが調整をしているのですか?いい意味で「えこひいき」をするには、誰かの主観が必要ですよね。そこを納得してもらうためにはコミュニケーションが必要で、それは高橋さんがやっているのでしょうか?

高橋)団体の立ち上げ当初から「全員を救うことは残念ながらできないので、自分達が確認したニーズに対してすぐ対応する」ということでやってきています。公言してきているので、コロナ禍でも理解してもらっているのかなと思います。

山崎)はい、明言しておくのはいいことだと思います。

次の質問で、「緊急時に巻き込むステークホルダーに関して、変化はありましたか?こういう時だからこそコレクティブな動きに発展させていくチャンスだと思うのですが、コラボレーションや共創などは生まれていますか?」まさに“ピンチはチャンス”という話ですよね。コロナ禍だからこそできたことや、新しいステークホルダーの巻き込みなど、いかがでしょうか?

高橋)プラットフォームは志向しているので、“コレクティブ”というのは以前から意識していて、垣根や障壁は作らない、あらゆる壁をぶっ壊していく、ということはずっとやってきています。例えば「美味しいデモ」というプロジェクトは、仲間や知人と連動しながら東北を超えて全国でやっています。今後も意識してやるべきだと思っています。

後藤)私の領域では、これからだと思います。食や教育はすでに動いていますが、まだステイホームの時期が続いており、これから就労・雇用の問題が大きく出てきます。学生支援事業では今後難しさが顕在化してくるので、すでに組めている大学だけでなく、今まで組めていなかった大学とも連携するチャンスかなと思っています。

山崎)最後の質問で、「経営者として今回一番悩んだ、重かった、経営者としてせざるを得なかった決断は何ですか?」この期間、経営者としてとても苦しかったと思うのですが、いかがでしょうか?

鈴木)そうですね、僕らが大切にしている子ども・若者、排除されがちな人への支援という軸はありつつ、そこに従事する人たちをどう守っていくのか、考えています。従事する人たちはどちらかと言うと、我が身を省みず、なところがあるので、彼らをどう守るか、一緒に支え合っていくのか。東日本大震災の時に経験したのは、3年目以降にバーンアウトの方々がたくさん出ました。ここにいらっしゃる皆さんもそうだと思いますが、普段の活動をしながら、コロナに対応したり、災害に対応したりと、どんどん背負うものが増えてくる中で、苦労や負担が増えていくと思うので、僕はそういった方々や自分たちの仲間を、今後どうケアして行くか、そこに悩んでいます。

後藤)いろいろ悩んでいたと思うんですけれども、その時期が過ぎると思い出せないぐらいバタバタしていましたね。安全面の確保と運営をどう両立させていくか、収益事業をどう継続して行くか、そのバランスは判断でした。決断としては「就労支援を頑張りたい、利用者さんに同行して企業さんを訪問したい」という職員を、確かにすごい大事だけれども、うちの事業の価値なんだけれども、そのリスクも考えて行動制限しなくてはいけない。そこをどう利用者さんにもスタッフにも理解してもらえるか、安全を確保していくか。最終的に私が決定して、伝えていくのですが、そこはお金を借りるよりも一番気が重かったです。先が不確かな中で、「今は待って」とお願いするのは苦しかったです。

高橋)まだ渦中ですけれども、自分の組織自体は幸いそれほど問題なかったのですが、コロナを受けて世の中にある課題が噴き出してさらに大きくなってきた。もともとのミッションに対する活動がやっと前進して、まだやるべきことが残っているという状況で、ゴールをすごい遠くに持っていかれたという感じです。課題が遠くに、食産業というだけでなく、ひとり親家庭の苦しさ、貧困や格差の問題、それを端緒とする分断が世界中で進んでいる。とんでもない課題をどんどん突きつけられて、自分たちがどの課題に向かうべきなのか、自分はどの課題を解くべきなのか、今そこに悩んでしまっています。色んなことをやりすぎてもインパクトが出ないし、目の前にこんなに大きな問題があるのに、目を瞑っているわけにもいかない。あがきながら色々やりつつ、インパクトを一番出せるところに特化していくのでしょうが、まだ試行錯誤の渦中です。福島の水産業の問題も残っているし、その中でどう優先順位付けをしていくべきか、悩んでいるというところです。

山崎)はい、ありがとうございました。そろそろこのパネルディスカッションを締めくくりたいと思います。最後にお三方から一言ずつ、聞いていただいた方にメッセージを届けていただけたらと思います

鈴木)自分の気づきとして、今日はどう意思決定したのか?ということが一つの論点でしたが、自分はもしかしたら意思決定をあまりしていないのではないか、自分の役割は、メンバーがどう思っているか、過去の経験がどうだったか、意見やデータを提示して促すファシリテーターの役割を、リーダーとしてやってきていたのかな、と思いました。それらの意見やデータを見ながら、みんなで判断していたのだなという気づきがありました。今日はありがとうございました。

後藤)今日は社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブのセミナーということで話すと、私たちは社会的インパクト評価に取り組んでいまして、平常時には事業の価値と、活動がどう次に繋がっていくのかを常に意識しながら事業を進めることをやってきました。それがこの緊急時に少し活きたように感じていて、これが次の何に繋がっていくのか、私たちが目指す社会や活動の目的にどう繋がっていくのかを考え、即席でロジックモデルを作り、それをどんどん修正しながら進んでいく。そういう思考の癖みたいなものが、この2年間で身に付いてきたなと感じることができました。本日はありがとうございました。

高橋)最後なんで言いたいことを言ってしまうと、後藤さんも話されていた「元に戻さない」ということが大事だと思っています。世界の復興セッションの中で、アチェとルワンダとニューオーリンズの方々が共通して言っていたのは「ビルドバックベター」ということです。ものすごい災害に襲われた後に、元に戻すのではなくて、より良い社会を築いていく、ということを共通に話されていました。ルワンダはあの大虐殺が起きた国で、今は世界を代表するICT立国になり、ビジネス環境は日本よりも優れていて、議会の女性比率も世界一になっている。アチェは、スマトラの大津波の時の内戦を1年後にやめて復興している。ニューオーリンズはハリケーンから復興し、全米一位の若者が起業する街になった。あれだけの災害のあった国々が、新しい社会を本当に作っているということに、自分はすごい勇気づけられたんですね。コロナが落ち着いて色々と動けるようになった時に、私たちがどういう社会を創っていくのかを、本当の意味で試される。「元に戻さない」東北はそのミッションを背負っていると個人的に思っているので、新しいモデルを東北から創っていく。東北の仲間たちとどんどんチャレンジしていきたいなと思っています。以上です。ありがとうございました。

山崎)ありがとうございます。簡単にまとめさせて頂いて、終わりたいと思います。本当にお三方にすごい印象的だったのは、まず「何のために、誰のために」ということが、めちゃくちゃ明確。ここに尽きます。これから先、コロナが収まっても何が起こるか分からない時代に、HowもWhat思い切って変えなければいけない状況は確実に来ます。その時に、誰のために何のためにやっているのかということを、強く持っている人たちこそ、イノベーティブに動ける人たちなんだということを、一つ目に思いました。

二つ目に、現場主義だということ。とにかく現場のそういった人たちの声や、現場まで行って判断し、もしくは現場の判断に任せること。声に対してすごく正直であるということ。

最後三つ目が、こんなに足元を見たくなるタイミングでも、次の時にはこうしたい、これを活かしていきたい、いろんな人と組んでいきたい、未来を変えていかなければいけない、そういう未来志向であるということ。どんな苦しい時でも未来志向を持っている人こそが、僕はリーダーだと思うので、それを皆さんにもぜひお伝えしたい。

実際にコロナはこれからどうなるか分からないですが、これを聞いてくださった方も本当に社会を変えたいと思っている人たちですよね。それぞれの現場に戻られて、リーダーだったり、現場だったり、色んなことや役割があると思いますが、基本的にはポジティブに、オプティミスティックにいてほしいと思います。良い未来を創るんだ、と思って、それぞれの現場に帰っていってほしいなと思います。

今日改めてお三方に、素晴らしいお話をありがとうございました!
拍手マークお願いします!!ありがとうございました!!


【開催レポート】「3団体に聞く!! 現場の試行錯誤と意思決定」
(1)団体活動紹介「東の食の会」
(2)団体活動紹介「こおりやま子ども若者ネット」
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