Social Impact Day2023 SIMIからのお知らせ セミナー・イベント情報

Social Impact Day 2023 開催報告


 Social Impact Dayは、社会的インパクト・マネジメントに関する国内外の最新動向を発信する日本最大級のイベントで、おかげさまで今回で7回目を迎え、今回も前回同様、3日間オンラインにて開催いたしました。
 今回は、新しい経済の形ー「インパクト・エコノミー」の社会実装 と題し、『インパクト・エコノミーが従来の私的な経済的利益追求型の資本主義に対するオルタナティブ(代替)になりうるのか』『そのために、誰が、何をしていくのか』について議論を深めました。
 合計16セッションに55名の登壇者を招き、事業者(営利・非営利)、資金提供者、中間支援、行政、学術など幅広いセクターから630名が参加しました。

目次


開催概要

日時:2023年2月1日(水)、2日(木)、3日(金)
場所:オンライン
主催:一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)
共催:一般財団法人社会的投資推進財団(SIIF)
協賛:株式会社みずほフィナンシャルグループ、株式会社かんぽ生命保険、&PUBLIC株式会社、インパクト
   サークル株式会社、株式会社クレディセゾン、株式会社プレイド、株式会社博報堂
後援:国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所、独立行政法人国際交流基金、GSG国内諮問委員会、金融庁


セッションレポート

セッション詳細はこちらをご覧ください

セッションタイトルオープニング:
オープニング・トーク
登壇者渋澤 健(シブサワ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役 兼 コモンズ投信株式会社 取締役会長、一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ評議員)
モデレーター: 高木 麻美(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ理事、株式会社Stem for Leaves 代表取締役)

 オープニングでは渋澤健様にご登壇いただき、インパクト・エコノミーをめぐる動向のお話と、基調講演で登壇するロナルド・コーエン卿と藤沢久美様のご紹介をしていただきました。

 インパクト・エコノミーについては、昨年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)において、「インパクト」という概念が初めて盛り込まれたことの意義についてのお話がありました。日本は今年、G7の議長国を務め、5月には広島サミットが開かれます。グローバルのインパクトコミュニティは、日本がG7においてインパクトの概念を世界に向けて宣言できるのか、非常に注目しているようです。

 また、インパクト・エコノミーは、従来のリスク、リターンにインパクトを加えた3次元の価値判断をしていくこと、そのうえで、インパクト投資やインパクト会計が鍵となることをお話いただきました。さらに、新しい資本主義というのはインクルーシブな資本主義であるというお考えと、アフリカ向けインパクト投資を行う株式会社and Capitalを立ち上げたことについてもご紹介いただきました。

 短い時間ではありましたが、インパクト・エコノミーのエッセンスに触れることができ、今後に向けた期待が膨らむセッションでした。 

 最後に、基調講演に先立ち、ロナウド・コーエン卿を「インパクト投資の父」としてご紹介いただき、コーエン卿が語るインパクト・エコノミーの世界観に注目したいこと、藤沢久美様については、20年以上に渡り多方面でご一緒しており、最近ではグローバルヘルスに関しても共に取り組む「スーパーフリーター仲間」とご紹介いただきました。


セッションタイトル基調講演:
インパクト・エコノミーと日本への期待、日本の役割
登壇者ロナルド・コーエン卿(インパクト投資グローバル運営委員会(GSG)会長、ポートランド・トラスト会長)
藤沢 久美 氏(株式会社国際社会経済研究所 理事長)
モデレーター: 今田 克司(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ代表理事、株式会社ブルー・マーブル・ジャパン 代表取締役)

 基調講演では、インパクト投資の父と呼ばれるロナルド・コーエン卿(インパクト投資グローバル運営委員会(GSG)会長)と藤沢久美氏(株式会社国際社会経済研究所理事長)が登壇しました。

 コーエン卿からは、「インパクト革命」と呼べる大きな動きが世界を席巻しつつあるという言明がありました。「技術革命」、すなわちテクノロジーの飛躍的な進化が世界のあり方を一変させたように、「インパクト」による経済社会の変革が世界各地で進行しつつあります。特に未来の働き手としての若い層や消費者の間で大きな価値観の変化が表出しており、それを投資家が注目せざるを得ない状況になっているという説明が加えられました

 藤沢氏からは、SDGs(持続可能な開発目標)やESG投資が注目される中で、インパクトが政府、企業、非営利といったセクター横断の共通言語として育ちつつあるという観測が共有されました。社会的インパクトにまつわる一連の枠組み、すなわち目標設定、事業運営での活用、指標の設定と計測、報告等、インパクトは大きな考え方にとどまらず、実務に落としていくための具体的方法を提供しています。これを活用し、特に日本企業が持続可能な社会に向けて具体的にどのようなストーリーを構築し、語り、実践していくかが問われているという問題提起がありました。


セッション
タイトル
スペシャル・セッション①:
インパクト・エコノミーに向けて:ビジョン、イノベーション、デザイン
登壇者菅野 文美 氏(一般財団法人社会変革推進財団 インパクト・エコノミー・ラボ 所長)
米良 はるか 氏(READYFOR株式会社 代表取締役CEO)
林 篤志 氏(Next Commons Lab ファウンダー)
岩渕 正樹 氏(JPモルガン・チェース銀行 デザイン・フューチャリスト、東北大学
客員准教授)
銭谷 美幸 氏(株式会社三菱UFJ銀行 チーフ・サステナビリティ・オフィサー)
森脇 大輔 氏(株式会社サイバーエージェント AI Labリサーチサイエンティスト)
モデレーター: 工藤 七子 氏(一般財団法人社会変革推進財団 常務理事)

 今回のSIDのテーマである「インパクト・エコノミーの社会実装」について、その具体的なビジョンやそこへ至る道筋について、様々な切り口から議論を行いました。

 はじめに、菅野氏からインパクト・エコノミーの概念と「なぜ、今、インパクト・エコノミーの社会実装を追求する必要があるのか」その背景とその中でのSIIFの取り組みについて説明がありました。次に銭谷氏からは、近年ESGやマルチステークホルダーへの配慮への社会の要請の高まりから大企業を中心にチーフ・サステナビリティ・オフィサーという新しいポジションを置く企業が増えている潮流と、金融機関の立場から、現在の金融システムの変革には投融資先の企業の判断・評価基準に財務に加えてインパクトの観点を入れていく必要性が語られました。次に米良氏からは日本政府の掲げる新しい資本主義の解説とその中でインパクト・エコノミーの新たな担い手として注目が集まるインパクトスタートアップの可能性について説明がありました。次に林氏からは、これまでの大企業やスタートアップの視点とは一転して、ローカルの目線からインパクトエコノミーの新しいOSを構築する「第二の自治、Local Coop」という構想とチャレンジについて説明がありました。また、データサイエンティストの森脇氏からは、インパクトエコノミーのドライバーになるデータの活用における落とし穴やリスクの説明とともにそれらを解決するアイデアが提示されました。最後の発表者の岩渕氏からは、これからのインパクトエコノミーをデザインする手法として「未来の考古学」というアプローチの紹介がありました。

 インパクト・エコノミーという大きく抽象的なテーマに対して、様々な切り口から話題提供がなされたことで、参加者にとって具体的なイメージと多くの気づきを持ってもらえるセッションになりました。


セッションタイトルセッション①:
サステナビリティ経営における人的資本の位置づけと議論の現在地
登壇者園田 周 氏(金融庁 企画市場局企業開示課 国際会計調整室長)                   
五十嵐 剛志 氏(グロービス / KIBOW社会投資ファンド インベストメント・プロフェッショナル、公認会計士)
金井 郁 氏(埼玉大学経済学部教授)
モデレーター: 水口 剛(公立大学法人 高崎経済大学学長、一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ評議員)

 本セッションでは、国際社会において現在注目されている人的資本について多様な側面からの議論がありました。人的資本は、企業価値に関わるということ、また雇用や働き方についても密接にかかわります。この議論が進むことによって、企業行動がどのように変わっていくのか、議論を進めました。

 金融庁の園田氏からは、人的資本とサステナブル情報開示に関する金融庁の動向について説明がありました。金融庁では1年以上の議論を経て、有価証券報告書においてサステナビリティ情報開示を義務付けるべきという提言がなされました。特に人的資本についての開示について特に重視されている旨、またこれらは2023年3月期から適用予定である旨が話されました。

 埼玉大学の金井氏からは、人的資本の議論に大きく関わる「雇用や働き方」、特にジェンダーの観点からの発表がありました。日本では、無償のケア労働は女性が担うことが伝統的であり、それは企業の雇用区分上、企業の拘束性が低い(転勤や残業が無い等)を女性が選びがちであるという状態に繋がっていました。企業の女性役員割合の上昇を意図した時に、伝統的に女性はケア労働を担う前提で企業での労働を設計しているため、転勤や残業をしないことが「やる気がない」や「能力が低い」という評価に繋がっていました。プレゼンテーションでは、これらは主に女性の従業員の能力発揮を阻害しており、全ての労働者に対してケアの時間を保障し、尊厳ある働き方にすべきという提案がなされました。

 KIBOWの五十嵐氏からは、インパクト加重会計の必要性や、定義、具体的な手法について提示されました。インパクト加重会計が目指すものは「経営者や投資家が、自社の利益や損失だけではなく、企業が社会や環境に与える広範なインパクトに基づいて十分な情報を得た上で意思決定を行うことができるような総合的な業績を示すこと」です。現行の会計基準では「人的資本」は損益計算書上は、費用に計上されています。これでは企業にとっては、従業員のスキルアップや働きやすさへの投資などへのモチベーションは高まりません。インパクト加重会計では、これまで計上されてこなかったインパクトを起業の会計情報に組み込むことで、経営者や投資家に向けてその必要性を伝える材料になるということが提示されました。後半では、この3人の登壇者の提示した論点に対して、それぞれの立場でどのように考え、今後の企業行動の変容に活かしていくかという点について議論を行いました。


セッションタイトルセッション②:
生まれた時から問題だらけの社会を生きるZ世代
登壇者竹下 友里絵 氏(タベモノガタリ株式会社 代表取締役社長)                       
勝見 仁泰 氏(株式会社Allesgood 代表取締役/CEO)
渡辺 創太 氏(Astar Networkファウンダー、STAKE TECHNOLOGIES Pte Ltd CEO)
モデレーター:大島 暁 氏(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ事務局)

 本セッションでは、社会課題解決や持続可能な社会の実現を起点に事業を立ち上げたZ世代(20代半ば)の起業家3名をゲストに迎えて、ディスカッションを通してZ世代の持つ特有の価値観や、インパクトを意識した企業や個人がこれからの社会をどう変えていけるのかをディスカッションを通して深掘りしました。

 前半は、3名の登壇者それぞれに起業を決意するに至った背景や想いを自身の取り組む事業内容と合わせてお話いただきました。具体的な経験は異なるものの、3名とも海外での体験をもとに社会問題への関心が高まり、よりインパクトが出せることは何かと考えた結果起業に至ったという共通点がありました。

 後半はパネルディスカッション形式で、起業家として社会課題解決に取り組むZ世代の価値観などを深掘りしました。現代の日本社会について感じている危機感や期待感、それぞれが考える「幸せ」や「豊かさ」をどう捉えているかなど、事業に邁進する背景にある思想を語っていただきました。

 それ以前の世代と比べ社会問題への意識が高いと言われるZ世代はいわゆる失われた30年の中に生まれ育ち、経済成長を体験したことがありません。しかし、目指すべき社会や豊かさをそれぞれが再定義し、日本の明るい未来を見据え挑戦し続ける3名の登壇者の話は、視聴者を勇気づけてくれるセッションとなりました。


セッションタイトル協賛セッション①:
上場株ファンドでここまでできる!~“共創”による社会課題解決とインパクトエコノミー拡大への挑戦~
登壇者伊井 哲朗 氏(コモンズ投信株式会社 代表取締役社長 兼 最高運用責任者)          
荒井 直 氏(株式会社エスプール 取締役 社長室・子会社担当)
安部 敏樹 氏(株式会社Ridilover 代表取締役、一般社団法人リディラバ 代表理事)
河辺 智明 氏(株式会社かんぽ生命保険 市場運用部株式委託運用担当 課長)
芹沢 健自 氏(株式会社かんぽ生命保険 運用企画部責任投資推進担当 課長)
小林 巧 氏(株式会社かんぽ生命保険 運用企画部責任投資推進担当 専門役)
モデレーター: 鴨崎 貴泰(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ専務理事、日本ファンドレイジング協会 常務理事)

 本セッションは、アセットオーナーであるかんぽ生命が取り組むインパクト投資の実践を通じて、上場株式を対象にしたインパクト投資の現在地を探るセッションです。

 はじめに小林氏からかんぽ生命のインパクト投資の取り組みとして、かんぽ生命が独自の投資フレームワークとして開発した「インパクト”K”プロジェクト」の解説と、具体的な投資事例として国内上場株式を投資対象とした機関投資家専用ファンド「コモンズ・インパクトファンド〜共創〜」の説明がありました。

 後半のパネルディスカッションでは同ファンドの連携先であるアセットマネージャーのコモンズ投信、インパクト評価を担当するRidilover、そして投資先の1つである障がい者の就労支援を行う(株)エスプールを交えて上場株を対象にしたインパクト投資の現状を深掘りしていきました。

 パネルディスカッションでは、①上場株でのインパクト投資の重要性(自社にとってどう重要か)②上場株インパクトファンドならではの大変さ(KPI設定、ロジックツリー、その他)③上場株インパクトファンドを通じて実現したこと、すべきこと、期待④上場株インパクトファンドではなかなか解決できないこと⑤インパクトエコノミー拡大に向け、何が必要か、の5つのテーマについて立場の違うパネリストそれぞれの観点から意見交換が行われたことで、参加者にとっても上場株式を対象にしたインパクト投資の現在地が多面的に理解できるセッションになりました。


セッションタイトルエンゲージド・メンバー限定セッション:
組織におけるサステナビリティ経営/社会的インパクト・マネジメントの実践へのチャレンジ
登壇者赤堀 久美子 氏(リコージャパン株式会社 経営企画本部コーポレートコミュニケーション部SDGs推進グループ リーダー)        
浜辺 真紀子 氏(浜辺真紀子事務所(IR/ESGコンサルティング)代表、(株)大塚商会 独立社外取締役)
モデレーター: 松島 拓(一般財団法人 社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ事務局、
認定特定非営利活動法人 日本ファンドレイジング協会 社会的インパクトセンター ディレクター)

 昨今、社会的インパクト・マネジメントや非財務情報の開示等に関する関心が高まる一方で、組織内におけるサステナビリティ経営/社会的インパクト・マネジメントへの実践に向けては依然として課題を抱える事業者が多い状況があります。そこで、本セッションでは、どのように組織内でサステナビリティ経営/社会的インパクト・マネジメントへの理解を醸成・浸透させ、部署を超えて連携して取り組んでいくことができるかという問いをテーマとして、赤堀 久美子氏(リコージャパン株式会社 経営企画本部コーポレートコミュニケーション部 SDGs推進グループ リーダー)より、リコーグループにおけるサステナビリティ経営の取り組みをご紹介いただきました。

 リコーグループでは、企業理念の「リコーウェイ」にもとづき、2036年までに「“はたらく”に歓びを」を実現していくことを目指し、マテリアリティ・ESG目標・サステナビリティ目標を設定しています。リコージャパンではこれらの方針にもとづき、社会課題起点で 業務に取り組むという「事業とSDGs の同軸化」を掲げ、SDGsキーパーソン制度によるSDGsの社内浸透や、SDGs強化月間による社員による具体的なアクションの促進、循環型社会に向けた新たな技術開発など多岐にわたる取り組みを実施しています。

 後半はモデレーターとして、SIMIエンゲージド・メンバーでもある浜辺 真紀子 氏(浜辺真紀子事務所(IR/ESGコンサルティング)代表、(株)大塚商会 独立社外取締役)をお招きし、エンゲージド・メンバーの皆様とともに、サステナビリティ経営/社会的インパクト・マネジメントの実践へのヒントを紐解いていきました。


セッションタイトルスペシャル・セッション②:
SDGインパクト基準が創る未来 ‐ 世界初の公式研修実施の学びと、認証制度に向けたグローバルの最新動向
登壇者ファビエンヌ・ミショー 氏(UNDP-SDGインパクトチーム ディレクター)   
末吉 光太郎 氏(みずほフィナンシャルグループ兼みずほ銀行 サステナブルビジネス部副
部長 兼 法人業務部サステナブルビジネス企画室室長 兼 SDGsビジネスデスクデスク長)
モデレーター: 伊藤 健(一般財団法人 社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ業務執行理事、特定非営利活動法人ソーシャルバリュージャパン代表理事)

 本セッションは、国連開発計画(UNDP)が発表して以降、日本での注目が高まるSDGインパクトについて、世界初のSDGインパクト基準研修を受けたみずほフィナンシャルグループ、みずほ銀行の学びについて末吉氏から共有があり、また多くの関心が寄せられているSDGインパクト基準の認証制度についてアップデートについてUNDP SDGインパクト ディレクターのファビエンヌ・ミショー氏より発表がありました。

 まずミショー氏は、昨年のSocial Impact Day2021で発表されたSDGインパクト基準のアップデートや、より重要と思われる箇所、また認証制度の2023年中の計画について発表しました。認証制度は現在、パイロットプログラムを実行する予定であり、認証機関および認証を受ける企業の選定と、認証機関向け研修を行い、実際の認証プロセスを2023年中に行う予定であるということでした。

また、昨年は世界で初めての研修が実施された年でもあります。SIMIとソーシャルバリュージャパンの認定講師が、みずほフィナンシャルグループおよびみずほ銀行に対して研修を提供し、30名の修了者が生まれました。登壇した末吉氏は、「SDGインパクト基準は、企業の社会的意義の大転換を促し、株主資本主義からステークホルダー資本主義への転換を促す枠組み」であることや、研修で得た知識を活用し、金融・非金融の両面において新たなサステナブル・ファイナンス商品やコンサルティングサービスを創出することへの意欲が示されました。

 また、本セッションでは参加者からの質問も寄せられ、活発な議論となりました。その一つが、「ESG vs サステナビリティ」の考え方です。ESGに対する懐疑的な目線がある旨が紹介された上で、SDGインパクトのESGとの差異、またSDGインパクトはどのようにサステナビリティを取られているのかという点について言及がありました。2023年以降は、研修の新たなコースの発表、認証制度のパイロットプログラムの実施等、大きくプロジェクトが進む年となります。SIMIではこの動きについて最新トレンドを継続して日本の皆さんに伝えていきます。


セッションタイトルセッション③:
インパクト・アナリスト養成から見えてきた地平 〜インパクト・アナリスト研修の学びと修了生の実践のシェア〜
登壇者宇根 尚秀 氏(インベストメントLab株式会社 代表取締役CEO)             
後町 陽子 氏(株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ キャピタリスト/ マネジャー)
井浦 広樹 氏(りそなアセットマネジメント株式会社 株式運用部 チーフ・ファンド・マネージャー)
千葉 直紀 氏(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ事務局、株式会社ブルー・マーブル・ジャパン 代表取締役)
モデレーター: 須藤 奈応 氏(インパクト・フロンティアーズ ディレクター、一般社団法人社会変革推進財団リサーチフェロー)

 本セッションは、SID参加者に研修の学びやインパクト・アナリスト養成から見えてきた視座を共有をすること、そしてインパクト・アナリストのコミュニティの輪を広げることを目的に行いました。登壇者として、SIMIが2022年度から開始したインパクト・アナリスト研修の受講者3名(インベストメントLab株式会社 代表取締役CEO 宇根 尚秀 氏、株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ キャピタリスト/マネジャー 後町 陽子 氏、りそなアセットマネジメント株式会社 株式運用部 チーフ・ファンド・マネージャー井浦 広樹 氏)+事務局であり本研修担当の千葉直紀が登壇し、モデレーターには本研修の実践編で講師を務めたインパクト・フロンティアーズ ディレクターの須藤 奈応 氏を迎えました。

 事務局からは、研修概要の紹介と研修成果として受講者アンケート結果やインタビューによって把握した受講者の変化を紹介しました。受講者3名からは、研修の感想や学び、実務へ活かしていることなどを語っていただきました。感想としては、「他の研修仲間のインパクト・ファイナンスに対する取り組みの姿勢から刺激を受けたこと」、「投融資における社会的インパクトを考えることで受講者自身の価値観・人生観が変わったこと」、「はじめは個社のみの目線で考えていたが、インパクト・ファイナンスを取り巻くエコシステム目線に変わったこと」、「当初自分が求めていたIMM(インパクト測定・マネジメント)についての明確な正解はないということがわかったこと」などが聞かれました。

 2023年度以降も本研修を通じて、インパクト・アナリストの輪を広げていきたいと考えています。


セッションタイトルランチタイム・セッション:
非営利組織にとっての「社会的インパクト・マネジメント」を考えてみよう!
登壇者平尾 千絵 氏(株式会社ファンドレックス パートナー、認定ファンドレイザー)
モデレーター: 伊藤 枝里子(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ事務局長、特定非営利活動法人ソーシャルバリュージャパン コンサルタント)

 非営利組織は、必ずしもサービスや事業の対象者から売上を生むことが可能ではないため、事業により社会的インパクトを創出すると同時に、その事業実施ための資金を獲得するという2つの側面で両立することが求められています。しかし、この両方で成功することは容易ではなく、事業と財源に一体的に取り組み、相乗効果を生み出していく必要があります。

 そこで、本セッションでは、登壇者として平尾 千絵氏(株式会社ファンドレックス パートナー、認定ファンドレイザー)をお招きし、モデレーターの伊藤 枝里子(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ 事務局長)とともに、非営利組織にとって、事業の社会的インパクトを向上させていく一連の取り組みである「社会的インパクト・マネジメント」と、事業のための資金や人材を戦略的に強化していく取り組みである「ファンドレイジング」がどのような意義を持つのか、そしてどのように相乗効果を生み出していけるのかなどについて紐解いていきました。

 なお、本セッションは認定特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会と協働で、同協会が開催した「FRJ2023|ファンドレイジング・日本 2023」との連動企画として実施しました。


セッションタイトルセッション④:
インパクト・キャリアの積み方 〜個人のストーリーから考えるインパクト領域で活躍する人材のキャリア構築〜
登壇者林田 稔 氏(野村證券株式会社 IBビジネス開発部 財務戦略グループ 兼 サステナブル・ファイナンス部 エグゼクティブ・ディレクター)
太田 圭哉 氏(株式会社UNERI マネージャー 、株式会社Ridilover 事業開発チーム)
鎌倉 幸子 氏(特定非営利活動法人エファジャパン 海外事業担当、かまくらさちこ株式会社 代表取締役、一般社団法人インパクト・マネジメント・ラボ 共同代表)
モデレーター: 千葉 直紀(一般財団法人 社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ事務局、株式会社ブルー・マーブル・ジャパン 代表取締役)

 インパクト・エコノミーを社会に実装させていくためには、社会的インパクトというものを深く考え、それを適切に扱える人材が欠かせません。そのため本セッションでは「個人」に焦点を当てて、キャリアの視点から深堀しました。登壇者として、太田 圭哉 氏(株式会社UNERI マネージャー 、株式会社Ridilover 事業開発チーム)、林田 稔 氏(野村證券株式会社 IBビジネス開発部 財務戦略グループ 兼 サステナブル・ファイナンス部 エグゼクティブ・ディレクター)、鎌倉 幸子 氏(特定非営利活動法人エファジャパン 海外事業担当、かまくらさちこ株式会社 代表取締役、一般社団法人インパクト・マネジメント・ラボ 共同代表)の3名を迎えて、セクターは違えども現在第一線で活躍する彼らが、どういう経緯でこの領域に関心を持ち、何を考え、どのような紆余曲折があってキャリアを積んできたのか、実務を通じて考えてきたことなど、個々のストーリーを話していただきました。

 フリーランスとして複数の組織に所属して活躍されている太田氏からは事業主としての考え方・動き方について、林田氏からは大学の研究者からはじまり証券会社にいる現在に至るまでのキャリアがすべてインパクトで繋がっていること、鎌倉氏からは、NGO現場にいた時代から個人のファンドレイザーとして独立したこと、そして中間支援からNGO現場職員に戻られた現在に至るまでのキャリアの積み上げを紹介いただきました。

 組織の視点ではなく、個人の視点での力強い歩みや想いを知ることができて、大変勇気づけられるセッションでした。会場からの質疑応答では、社会的インパクトに関するスキルの身につけ方や統計などの専門的な知識の獲得についての質問が挙げられました。

 キャリアについてのニーズは顕在化してきたように思いますので、今後も個人視点でのセッションを考えていきたいと思います。


セッションタイトル協賛セッション②:
インパクト・エコノミーを先導するインパクト・スタートアップ
登壇者末吉 光太郎 氏(みずほフィナンシャルグループ兼みずほ銀行 サステナブルビジネス部副
部長 兼 法人業務部サステナブルビジネス企画室室長 兼 SDGsビジネスデスクデスク長)
星 直人 氏(ユニファ株式会社 取締役CFO)
松田 崇弥 氏(株式会社ヘラルボニー 代表取締役社長)
松田 文登 氏(株式会社ヘラルボニー 代表取締役副社長)
水野 雄介 氏(ライフイズテック株式会社 代表取締役CEO)
モデレーター: 高木 麻美(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ理事、株式会社Stem for Leaves 代表取締役)

 政府は、「経済財政運営と改革の基本方針2022」、いわゆる骨太の方針において、スタートアップを、イノベーションの創出と社会課題の解決に貢献する「新しい資本主義」の担い手と位置付けています。昨年11月末には「スタートアップ育成5か年計画」が発表され、育成にあたっての3つの柱に沿ったロードマップが示されました。

 スタートアップの中でも、「社会課題の解決」を成長のエンジンと捉え、持続可能な社会の実現を目指すことを明確に打ち出しているインパクトスタートアップがあります。本セッションでは、インパクトスタートアップであるユニファ株式会社、株式会社ヘラルボニー、ライフイズテック株式会社と、これら3社も立ち上げに関わったインパクトスタートアップ協会、さらにスタートアップと共創するみずほフィナンシャルグループからご登壇いただき、それぞれのお取り組みについて伺いました。

 全員でのクロストークでは、インパクトスタートアップやそれらと共創する立場ならではの意義や課題、人材採用、報酬、情報開示等について、視聴者からのご質問も交えながらお聞きしました。

 リスク、リターンにインパクトを加え、成長を図るのは容易なことではありません。しかし、登壇者の熱い想いと地道な取り組みをうかがい、インパクト・エコノミーの実現に対する大きな期待が芽生えるセッションとなりました。


セッションタイトルセッション⑤:
行政が民間に求め始めた社会的インパクト・マネジメントの実践
登壇者中井川 季央 氏(内閣府 成果連動型事業推進室 参事官)                
中村 香織 氏(東京都政策企画局戦略事業部 国際金融都市担当課長)
寺田 光一 氏(豊中市健康医療部参事兼健康政策課長(豊中市保健所))
モデレーター: 幸地 正樹(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ理事、ケイスリー株式会社 代表取締役社長)

 官民連携としてのインパクト・マネジメント実践というテーマで、内閣府成果連動型事業推進室より中井川氏、卒煙SIBに取り組む豊中市健康医療部の寺田氏、ソーシャルインパクト投資ファンドの取り組みを開始した東京都政策企画国戦略事業部の中村氏に登壇いただきました。

   中井川氏よりPFSの説明、国内案件は100件の事例が生まれ、中でも医療・健康、介護分野がその3分の2を占めていること、検討自治体が増えていることについて共有がありました。

   続いて、豊中市が禁煙の社会的要請、その効果の明確性という観点で卒煙SIBを実施し、質の高いサービスを提供する民間事業との連携で3か年の事業で目標値達成見込みであるという共有が寺田氏からありました。

   中村氏からは東京都のインパクト・ファイナンスの取り組みの共有、特に官民連携の文脈からも重要であり、IMMを実施することが重要だと位置付けているという話がありました。

   いずれの役割や事例から考えても、社会的課題解決を目指してインパクトを定義、目指していくことにより、官民一緒に肩を並べて取り組んでゆくことで、成果達成というだけでなく、互いにとってよりよい事業実施につながるということが議論されました。


セッションタイトルスペシャル・セッション③:
B Labと国内B Corp企業登壇!〜B Corpムーブメントから見る未来の企業のあり方~
登壇者Bart Houlahan 氏(B LAB 共同創設者)
鳥居 希 氏(株式会社バリューブックス 取締役 いい会社探求)
酒井 里奈 氏(株式会社ファーメンステーション/Fermenstation 代表取締役)
戸田 満 氏(一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)Impact Economy Lab, Impact Catalyst)
モデレーター: 今田 克司(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ代表理事、株式会社ブルー・マーブル・ジャパン 代表取締役)

 企業の社会性の認証ラベルとして知られている B Corporation(B Corp)。米国の非営利団体、B Lab が始めたこの民間認証制度は、いまや89の国で合計6000社以上が取得するものになっています。日本においても、ここ1-2年の間に「第二波」と呼べる動きが起こりつつあり、2022年終わりまでの認証取得企業16社のうち、2022年1年間で取得したのがその半分の8企業です。

 最初に登壇したB Lab 共同創業者 の一人のBart Houlahan 氏は、B Corp が、Business as a Force for Good(企業を世界を良きものにする力のために)をスローガンに展開しているグローバル・ムーブメントの旗頭であるという説明がありました。日本で B Corp に対する関心が高まっていることを歓迎し、世界の中でもリーダーシップを発揮していってほしいという期待の表明がありました。

 これを受けて、日本における取り組みをそれぞれの角度から担っている株式会社ファーメンステーションの酒井里奈氏(サーキュラーエコノミーの実現を目指し昨年B Corpを取得)、株式会社バリューブックスの鳥居希氏(昨年『B Corpハンドブック〜よいビジネスの計測・実践・改善』の翻訳出版を手がけ、その際に生まれたコミュニティを今後の機運づくりにも活用)、一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)戸田満氏(SIIFで進めるインパクト・エコノミーづくりの取り組み等の解説)が登壇し、日本でもBムーブメントが大きな力になりつつあることの紹介となりました。

   いずれの役割や事例から考えても、社会的課題解決を目指してインパクトを定義、目指していくことにより、官民一緒に肩を並べて取り組んでゆくことで、成果達成というだけでなく、互いにとってよりよい事業実施につながるということが議論されました。


セッションタイトル協賛セッション③:
社会的インパクト・マネジメントの実践例・支援ツールと最新トレンドを一挙公開
登壇者インパクトサークル株式会社 様                 
株式会社クレディセゾン 様
株式会社プレイド 様
&PUBLIC株式会社 様
モデレーター: 幸地 正樹(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ理事、ケイスリー株式会社 代表取締役社長)

 インパクトサークル株式会社様からは、インパクト投資に関するプラットフォームの構築、可視化ファイナンスサービスについてのご説明をいただきました。貧困削減事業を中心に、投資のリターンについても可視化やレポーティングが可能となっています。

  株式会社クレディセゾン様からは、ファイナンシャルインクルージョンに関する融資を中心に取り組んでいらっしゃること、全社的な意識としても高まっており、多様な連携を行っていきたいというお話をいただきました。

 株式会社プレイド様からは、自治体向けのサービスとして、企業向けのマーケティングサービスを横展開した形でのEBPM推進サービスやスマートシティ構想サービスの展開を行っていることについてお話いただきました。

 &PUBLIC株式会社様からは、インパクト・マネジメントに関する研修を行っていること、インパクトマネジメントツール、パーパスボードというロジックモデル作成のツール作成を行っていることについて、お話をいただきました。

   いずれの役割や事例から考えても、社会的課題解決を目指してインパクトを定義、目指していくことにより、官民一緒に肩を並べて取り組んでゆくことで、成果達成というだけでなく、互いにとってよりよい事業実施につながるということが議論されました。


セッションタイトルクロージング:
総括的ディスカッション
登壇者今田 克司(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ代表理事、株式会社ブルー・マーブル・ジャパン 代表取締役)
鴨崎 貴泰(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ専務理事、日本ファンドレイジング協会 常務理事)
高木 麻美(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ理事、株式会社Stem for Leaves 代表取締役)
幸地 正樹(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ理事、ケイスリー株式会社 代表取締役社長)
モデレーター: 伊藤 健(一般財団法人 社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ業務執行理事、特定非営利活動法人ソーシャルバリュージャパン代表理事)

 統括的ディスカッションでは、本年のSocial Impact Dayで議論になったポイントや、昨年から今年にかけての注目すべき動き、また2023年中に各理事がこの業界をどのような動きとなると予想しているかという点について共有を行いました。

 議論の中では、「プレイヤーの多様性」、「多様なプレイヤーの共通言語としての”インパクト”」、「インパクトのマネジメントへの活用」という点について言及する理事が多くいました。

 例えばプレイヤーの多様性として挙げられたのはZ世代や、上場株投資においてインパクト志向を志すプレイヤーの増加などです。「エコノミー」のエコシステムを豊かにするために、これまでの限られたプレイヤーだけで進めるのではなく、多様なプレイヤーの参画を促していく仕組みの重要性が示唆されました。

 また、その多様なプレイヤーが一つになって物事を促進できる理由の一つに「インパクトの共通言語化」が挙げられます。例えば行政のセッションでは、行政と民間が「発注者、受注者」という関係性を超えて、インパクト創出という観点で事業成果を考えるようになるという効果が挙げられました。それは「インパクトのマネジメントへの活用」にも繋がります。これまでは「インパクトを測定」することの手法開発やその精度についての言及が多くありましたが、「インパクトデータをどのようにマネジメントへ活用し、より良い社会成果を上げるか」という点に注目が高まってきています。企業、非営利組織にとってはその新しい枠組みとしてSDGインパクトがあるのではないかという点にもコメントがありました。

 2023年が「インパクト・エコノミー」促進のために非常に重要な年であるということについては、SIMIに限らず国際会議など様々な場で言われています。SIMIでは、多様なプレイヤーの挑戦を促進し、インパクト・エコノミーの社会実装に向けて2023年の事業に取り組んでいきます。

参考資料

インパクトを社会づくりの真ん中に〜Social Impact Day 2023 を終えて(SIMI代表理事 今田克司)
開催報告(PDF版)

これまでのSocial Impact Day

第6回(2022年1月21日、22日、23日)インパクト・エコノミーへの転換点– 社会的インパクト時代の到来 –
第5回(2021年1月23日、25日、26日)3 days – Act on your Social Impact
第4回(2019年7月2日)インパクト測定とインパクト・マネジメントのエコシステム形成に向けて
第3回(2018年6月27日)社会的インパクト「評価」→「マネジメント」へのシフト
第2回(2017年6月29日)社会的インパクト評価推進に向けたロードマップ
第1回(2016年6月14日) いよいよ動き出す社会的インパクト評価の未来


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