Social Impact Day2021 SIMIからのお知らせ セミナー・イベント情報

Social Impact Day2021 開催報告


Social Impact Dayは、社会的インパクト・マネジメントに関する国内外の最新動向を発信する日本最大級のイベントで、今回で6回目を迎えました。
今回は前回に続き、オンラインにて3日間開催されました。
今回は社会のインパクト志向を促進をするためのインパクト・エコノミーの3つの重点領域を設定し、合計15セッションに60名近い登壇者を招き、議論を繰り広げました。参加者は事業者(営利・非営利)、資金提供者、中間支援、行政、学術など幅広いセクターから580名を超えました。

目次


開催概要

日時:2022年1月21日(金)、24日(月)、25日(火)
場所:オンライン
主催:一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)
サポーター・協賛:一般財団法人社会的投資推進財団、株式会社みずほ銀行、公益財団法人笹川平和財団、株式会社かんぽ生命保険
後援:国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所、特定非営利活動法人NPOサポートセンター


セッションレポート

セッション詳細はこちらを御覧ください

セッションタイトルプレセッション:社会的インパクト・マネジメント入門セミナー
登壇者松井 孝憲氏(KIBOW社会投資インベストメント・プロフェッショナル/株式会社グロービス ファカルティグループ研究員)
相良 美織氏(株式会社バオバブ代表取締役)
源 由理子(明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授、一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ評議員)
千葉 直紀(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ事務局、株式会社ブルー・マーブル・ジャパン代表取締役)

社会的インパクト・マネジメント入門セミナーは、主にはじめての方を対象として、社会的インパクト・マネジメントの基礎を学び、これからSocial Impact Dayを渡り歩くための基本的な地図や共通言語を獲得することを目的として開催しました。本セッションは、独立行政法人 国際交流基金 日米センター(The Japan Foundation Center for Global Partnership:CGP)との共同講座で、「インパクト・アナリスト研修」の入門講座の位置付けでもあります。

はじめに、源由理子氏から「社会的インパクト・マネジメント・ガイドライン」に沿った基本的な内容や社会システムの変革の大切さについて解説がありました。パネルディスカッションでは、KIBOW社会投資の松井 孝憲氏、またKIBOW投資先企業である株式会社バオバブの相良 美織氏に登壇いただき、それぞれの事例紹介と源氏モデレートによるディスカッションが行われました。

松井氏からは、経済的リターンと社会的リターンの双方の追求や、社会を変えていくためには長期的な伴走支援の必要であること、相良氏からは障がい者雇用の現場で生まれている当事者や関係者の変化の様子が語られて、会社として目指す方向性が語られました。また相良氏からは、多くの投資家の中からKIBOWファンドを選んだ理由として「どんな世界を作りたいかを理解して伴走してくれる存在であるから。選んで大正解」というコメントが出て、印象的でした。会場からはKIBOWファンドとバオバブに対して、多くの質問が出るセッションとなりました。


セッションタイトルスペシャルセッション:パーパス経営と社会的インパクト
登壇者Bruno Roche氏(「Economics of Mutuality」プラットフォーム創設者)
梶原 ゆみ子氏(富士通株式会社 執行役員常務 CSO(兼)サステナビリティ推進本部長)
モデレーター:今田 克司(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ代表理事、株式会社ブルー・マーブル・ジャパン代表取締役)

本スペシャル・セッションでは、オックスフォード大学サイード・ビジネス・スクールと共同で「パーパス」を中心に置いた企業経営に向けた啓発をウエビナーやオンライン書籍の発行などで推進している、エコノミクス・オブ・ミューチュアリティ(Economics of Mutuality, EoM)の創設者であるブルーノ・ロシュ氏をゲストスピーカーに迎え、日本でも昨今話題になっている「パーパス経営」について、そのWHY(なぜ)とHOW(いかに)を解説してもらいました。

ロシュ氏の解説を受け、富士通株式会社の梶原ゆみ子氏より、同社でのパーパス経営に向けた取り組みの紹介がありました。なかでも、社員全体でパーパス経営の意義についての共感をつくっていくことの重要性が強調されました。日本には「三方よし」の考えがあり、これはEoMが推奨する相互性の資本主義とも通底するものがあるとの見解も示され、日本におけるパーパス経営の今後の発展を期待させる議論となりました。


セッションタイトルオープニング・トーク
登壇者渡部 カンコロンゴ 清花氏(NPO法人WELgee 代表理事)
工藤 七子氏(一般財団法人社会変革推進財団 常務理事)
ビデオメッセージ:アヒム・シュタイナー氏(国連開発計画(UNDP)総裁)

オープニング・トークは、本イベントの後援団体でもある国連開発計画(UNDP)のアヒム・シュタイナー総裁より寄せられたビデオメッセージで始まりました。広がる格差、気候変動など、持続可能で公正な社会づくりへの課題が大きくなり、SDGs(持続可能な開発目標)達成のために年間4.2兆ドルが不足していると言われる中、コロナ禍はグローバルな転換点(ピボット)とならなければならず、企業は経済的利潤に加え、社会的・環境的インパクトを経営の中枢に据えるべきとの激励がありました。UNDPではその具体的なツールとしてSDGインパクト基準を開発していることも紹介されました。

このメッセージを受け、工藤七子氏と渡部カンコロンゴ清花氏が登壇し、WELgeeの活動テーマである難民支援の分野やSIIFが進める課題解決・価値創造のエコシステムづくりでいかにインパクトを示すのか、その試行錯誤が話されました。自分たちの活動の成果が測りやすいデータで示しにくい、外的状況の変化でロジックやKPIを作ってもすぐに変更を余儀なくされてしまうような場合には、どうすればよいのか。「仮の地図」を作り、自分たちの価値を大事にしたマネジメントを心がけるなどのアイデアが共有されました。


セッションタイトル基調講演:テクノロジー活用による民からの社会システム変革- インパクト・エコノミー実現に向けて –
登壇者オードリー・タン氏(台湾デジタル担当大臣)
太田 直樹氏(株式会社 New Stories 代表、一般社団法人 コード・フォー・ジャパン 理事、東京都、群馬県、その他自治体のDX政策アドバイザー)
モデレーター:伊藤 健(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ業務執行理事、特定非営利活動法人ソーシャルバリュージャパン代表理事)

基調講演は、台湾のデジタル大臣であるオードリー・タン氏による講演と、デジタル庁のデジタル社会構想会議のメンバーでもある太田直樹氏との対談の形式で行わました。本セッションにご登壇頂いたお二人の共通認識は、SID2021のテーマでもある「インパクト・エコノミー」の実現のためには、社会的インパクトについてのデビデンスとなるデータに基づいた意思決定、それを政策形成のプロセスに取り込むことを可能にするテクノロジーの活用、そしてこうした社会的仕組みについて、ボトムアップでの構築プロセスへの市民参加を可能にする民主主義システムが必要との問題意識でした。

セッションでは、台湾でのデジタル・ガバメント政策、また日本におけるデジタル庁を含む行政やCode for Japan等の民間の取り組みが事例として提示され、私たちが志向すべき社会像はどのようなものか、また社会的インパクトマネジメントがどのように貢献できるかについてが議論されました。


セッションタイトル協賛セッション1:
アカデミアと金融の連携によるイノベーションの創出ーWell-being向上を目指して
登壇者春名 貴之氏(株式会社かんぽ生命保険 常務執行役)
山岸 広太郎氏(慶應義塾常任理事)
中村 雅也氏(慶應義塾大学医学部教授(整形外科学))
片山 敦司氏(株式会社かんぽ生命保険 オルタナティブ投資部長)
伊藤 健(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ業務執行理事、特定非営利活動法人ソーシャルバリュージャパン代表理事)
モデレーター:岸本 充氏(国立研究開発法人理化学研究所 経営企画部次長)

本セッションでは、かんぽ生命のESG投資の一環として、革新的な技術開発や事業への投資を通じて、Well-being 向上など社会課題の解決に貢献することを目指し、特に慶應義塾大学との提携によって計画する、医療・ヘルスケアについての社会的投資についての取り組みを紹介しました。セッションでは、アセットオーナーであるかんぽ生命、ヘルスケア分野で産官学の協働をすすめる慶應義塾から合計4名のパネリストが登壇し、インパクト志向の視点からの投資の新しい流れについて議論が行われました。


セッションタイトル協賛セッション2:投資家として求める社会的インパクト~ジェンダーの視点から~
登壇者依田 純子氏(SWEEF CAPITAL アドバイザリー・ボード 、Women of the World Endowment (WoWE) アドバイザリー・カウンセル)
古布 薫氏(インベスコ・アセット・マネジメント株式会社 日本株式運用部 ヘッド・オブ・ESG)
モデレーター:松野 文香氏(笹川平和財団 ジェンダーイノベーション事業グループ グループ長、アジア女性インパクト基金 ディレクター)

本セッションでは、投資ファンドより依田 純子氏、古布 薫氏をゲストに迎えて、松野 文香氏がモデレートを務めました。SWEEF CAPITALは、シンガポールに拠点を持つ独立系インパクト投資ファンドです。依田氏からは、ジェンダー視点のプライベート・エクイティ投資の戦略やプロセスなど、詳細の説明がありました。古布氏からは、内閣府調査の「企業と投資家の認識ギャップ」が示され、機関投資家の視点から見て、取締役会、執行役員、従業員における多様性の重要性、そして多様性を高めるための経営陣のコミットメントの必要性についてのメッセージがありました。

セッションの最後のまとめでは、今後国内でジェンダー・インパクトを重視する投資を成長させるめには、まず企業の現状の認識を可視化することが必要で、そして企業の行動変容につなげるためには経営陣の多様性への理解と腹落ち感、そのためにガバナンスと透明性の重要性を再認識することが必要であるとメッセージがありました。


セッションタイトルセッション1:【事例セッション】社会課題解決に向けた支援の現場から
登壇者今井 悠介氏(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン 代表理事)
森山 奈美氏(株式会社御祓川 代表取締役、いしかわ地域づくり協会 コーディネーター)
モデレーター:高木 麻美(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ 理事、Stem for Leaves代表)

本セッションでは、今井悠介氏、森山奈美氏から、それぞれが実践する社会的インパクト・マネジメントを共有していただきました。チャンス・フォー・チルドレンでは、他地域への展開の際のステークホルダーを巻き込んだ検証や、ビジョン・ミッション、事業計画、職員の個人目標がつながるように内部マネジメントためのKPIを設定するなど、インパクト・マネジメントが組織に浸透している様子がうかがえました。

御祓川は、能登の民間まちづくり会社として様々な事業を実施してきており、近年、休眠預金を活用した「TANOMOSHIプログラム」を開始しました。同プログラムでは、支援の対象であった中小企業同士の支え合いの仕組みが生まれ、それに合わせて御祓川の役割が変わっていったことをお話しいただきました。これは、組織としての学びの例です。異なる領域で活動する2者ですが、両者とも事業の転換点においてインパクト・マネジメントが活きていると感じさせられました。


セッションタイトルセッション2:インパクト加重会計の概要と展望(IWAI Japan)
登壇者渋澤 健(コモンズ投信株式会社取締役会長、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役、一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ評議員)
柏倉 美保子氏(ビル&メリンダ・ゲイツ財団日本常駐代表)
五十嵐 剛志氏(公認会計士、ビッグ・ソサエティ・キャピタル財務マネージャー)
モデレーター:高木 麻美(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ 理事、Stem for Leaves代表)

インパクト加重会計は、従業員、顧客、環境、より広い社会に対する企業の正負のインパクトを財務指標に反映させることにより、投資家や経営者がインパクトに関する広範な情報を得たうえで意思決定を行うことを目指す取り組みです。本セッションでは、Impact Weighted Accounts Initiative (IWAI) Japanのメンバーである、渋澤健氏、柏倉美保子氏、五十嵐剛志氏から、インパクト加重会計の必要性や方法について解説がありました。

さらに、インパクト加重会計に日本企業が取り組む意義や、多くのインパクト・マネジメント関連手法が海外発のもので、日本は後追いになる傾向がある中で、日本が強みを発揮することができ、貢献できる事項についても議論をしました。持続可能な社会を実現する上で、投資や経営の意思決定のあり方に大きな影響を与える仕組みであるインパクト加重会計に今後も注目していきたいと思います。


セッションタイトルスペシャルセッション2:SDGインパクト認証が進める社会的インパクト・マネジメント
登壇者Fabienne Michaux氏(Director, SDG Impact)
渋澤 健(コモンズ投信株式会社取締役会長、シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役、一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ評議員)
モデレーター:今田 克司(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ代表理事、株式会社ブルー・マーブル・ジャパン代表取締役)

本スペシャル・セッションでは、昨年のSocial Impact Day に引き続き、国連開発計画(UNDP)が開発しているSDGインパクトを取り上げました。SDGインパクトは、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた民間資金の流れを拡大するためにUNDPが進めているイニシアチブで、SDGsに資する事業運営を行うための「SDGインパクト基準」と基準に合致した企業等の認証や、投資対象となる途上国のビジネス情報を検索できる「SDG投資情報プラットフォーム」などが開発されています。本セッションでは、SDGインパクト基準のうち「企業・事業体向け」基準の内容や認証に向けた仕組みづくりについて、ファビエンヌ・ミショー氏から解説がありました。

この解説を受けて、SDGインパクトに日本から運営委員として参加している渋澤健氏が、昨年のこのセッションからの1年で、日本でも新しい時代の流れが顕在化してきていること、そこでは従来の市場競争の尺度に変容を迫る考え方が見られることを指摘しました。従来は外部性として企業価値に反映されていなかった企業活動の社会や環境に対する正負への影響を捉え、これを測定・開示し、さらには組織の意思決定に統合していくことが大切だと述べました。その意味で、SDGインパクトは有用なツールであるとの認識が共有されました。


セッションタイトルセッション3:テクノロジーが促進する社会のインパクト志向
登壇者関 治之氏(政策起業家)
Sasha Dichter氏(60 Decibels共同創設者)
モデレーター:落合 千華氏(ケイスリー株式会社取締役、慶應義塾大学政策・メディア研究科研究員)

本セッションでは、60か国50億人から直接声を集める体制を構築し、課題抽出からインパクトの可視化までを行うスタートアップ60 decibelsのSasha Dichter氏、組織の枠を超えて様々な人がオープンにつながり社会をアップデートする政策起業家の関治之氏を迎え、社会的インパクト・マネジメントを活用したプロダクトを提供するケイスリー株式会社の落合千華氏が進行しました。

議論は、社会的インパクトはユーザーの声を直接聞くことが最も重要だ、というSasha氏の話しから始まり、関氏からはCode for Japanが加古川市などで行うMake our cityの取り組みから、市民主体でどのように政策課題、まちの課題に取り組めるのか、どのように持続可能にできるのかの論点を提供いただきました。その後、テクノロジーの特性に触れながら、市民参加の重要性に関する議論に発展していき、立場の異なる両名が同じメッセージにいきついたのが印象的でした。


セッションタイトルセッション4:休眠預金等活用の社会的インパクトを考える〜活用開始から3年の現在地と今後の展望を考える〜
登壇者鈴木 均氏(一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)事務局長)
番野 智行氏(NPO法人ETIC. ソーシャルイノベーション事業部 事業統括/シニアコーディネーター)
白井 智子氏(新公益連盟代表理事)
モデレーター:鴨崎 貴泰(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ専務理事、日本ファンドレイジング協会 常務理事)

本セッションでは、日本の社会課題の解決のためにかつてない規模の民間への資金提供と「社会的インパクト評価」の導入など業界へ激震を走らせた休眠預金制度の運用開始から3年間が経過した現在地と今後の展望や可能性について当事者と一緒に振り返り、議論を行いました。スピーカーは、休眠預金全体の管理を行う指定活用団体JANPIAの鈴木 均氏、休眠預金を助成等でNPO等(実行団体)に提供する資金分配団体であるNPO法人ETIC.の番野 智行氏、休眠預金制度の運用に関して国のレベルで審議する内閣府休眠預金等活用審議会委員であり、社会的企業・NPO団体の連盟組織、新公益連盟の代表でもある白井 智子氏の3名でした。

休眠預金は、運用開始から3年で600を超えるNPO等へ約123億円の助成を実施し、その中で休眠預金だからこそ生み出せたインパクトについて以下のような言及がありました。

まず、実行団体/資金分配団体ともに、まとまった期間(3年)とまとまった規模の資金があることで、腰を据えて新しいチャレンジができた点、他にも休眠預金によって特に地方の小さな団体が地域課題解決にチャレンジできるようなった点、子ども食堂など民間での資金調達が難しい領域にも資金提供ができていることなどが挙げられました。
申請や報告など事務手続きが複雑・煩雑で現場団体の負荷が高いなど運用上の課題はあるものの、そういった課題も実行団体、資金分配団体、指定活用団体が対話と連携を続けながら一緒に改善していこうとする当事者の姿勢が印象的でした。今後もSIMIでは休眠預金活用の進捗とそこから生み出された社会的インパクトについて注目していきたいと思います。


セッションタイトルセッション5:サステナブル・ファイナンスにおける情報開示とインパクトの主流化
登壇者井口 譲二氏(ニッセイアセットマネジメント チーフ・コーポレート・ガバナンス・オフィサー執行役員)
園田 周氏(金融庁 企画市場局企業開示課 国際会計調整室長)
モデレーター:水口 剛(公立大学法人 高崎経済大学学長、一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ評議員)

本セッションでは、ここ数年大きく動いているサステナブル・ファイナンスにおける情報開示について、最新の動向の解説がされました。この分野においては、CDP、CDSB、GRI、IIRC、SASBなど*、「アルファベット・スープ」とも揶揄される複数の開示基準が併存して混乱を招いているような状況がしばらく続いていましたが、昨年来、基準の整理統合の動きが始まっています。こういった流れを冒頭にモデレーターの水口剛氏が解説したのち、特に注目すべき動きである国際サステナブル基準審議会(ISSB)について、園田周氏からの概説があり、民間の側からこの動きに携わっている、井口譲二氏から特にISSBにおけるインパクトの情報開示について解説がありました。

ISSBは、国際会計基準(IFRS)を管理するIFRS財団に設立されたもので、昨年11月に英国グラスゴーで開かれたCOP26(国連気候変動枠組条約締約国会議)の最中に発表されました。今年、ISSBが開発するグローバル・ベースラインをもとに、日本を含めた各国の規制当局が国内規制を整備していくこととなります。討議では、企業にとってのマテリアリティ情報の開示の扱いやグローバル基準づくりへの日本からの参画方法などが話し合われました。

*Carbon Disclosure Project(CDP)、Climate Disclosure Standards Board(CDSB)、Global Reporting Initiative(GRI)、International Integrated Reporting Council:国際統合報告評議会 (IIRC)、Sustainability Accounting Standards Board:サステナビリティ会計基準審議会 (SASB)。このうち、昨年、2IIRCとSASBが統合してValue Reporting Foundation:価値報告財団(VRF)が誕生している。

セッションタイトル協賛セッション3:金融における中堅中小企業のインパクト志向支援~本質的なサステナビリティ経営への変革を目指して
登壇者末吉 光太郎氏(みずほフィナンシャルグループ 法人業務部 サステナブルビジネス企画チーム次長)
大谷 智一氏(みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社 コンサルティング本部 グローバルイノベーション&エネルギー部グローバルイノベーションチーム 次長)
ピーター D. ピーダーセン氏(NPO法人NELIS代表理事)
モデレーター:鴨崎 貴泰(一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ専務理事、日本ファンドレイジング協会 常務理事)

​​本セッションは、経済全体をインパクト志向に変革していく上で震源地となるサプライチェーンの99%を占める中小企業がインパクト志向でサステナビリティ経営に取り組むための方法とその中での金融機関の果たす役割について議論をしました。

スピーカーは、みずほフィナンシャルグループで社会課題解決型ビジネス開発・支援とインパクト投融資を推進する末吉光太郎氏、みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社でSDGs、サステナファイナンスに関する商品開発を主導している大谷智一氏、NPO法人NELIS代表理事で株式会社丸井グループ社外取締役として同社のサステナビリティ戦略を主導しているピーターD .ピーダーセン氏の3名です。

セッションでは、2020年代に入り企業を取り巻く環境は新たなステージである「Regeneration & Restoration(再生・修復・創生)」に突入しており、「パーパス」と「インパクト」を目指して進化する必要性がある点が強調されました。また、中小企業がインパクト志向のサステナブル経営に取り組むにあたり、どこから始めれば良いのか、その他インパクト測定・マネジメントの取り組みなどについて国内外の先進企業の事例をもとに議論しました。さらに、企業がサステナブル経営に変革するインセンティブとなる金融商品の開発、提供による金融機関が行うサポートの重要性についても議論しました。


セッションタイトルクロージング
登壇者SIMI理事

クロージングセッションでは、SIMIの理事5名(伊藤健、今田克司、鴨崎貴泰、幸地正樹、高木麻美)が3日間のSocial Impact Day 2021を振り返り、印象に残ったこととその理由を共有しながら、学びを深掘りしていきました。全てのセッションに参加することができていない方にも全体の概観を伝えるセッションとなりました。
各理事が担当するセッションを中心に議論が進む中、多様な関係者の関心と連携が高まり、デジタル化が進む社会において共通して重要だと認識されたのは、何のための社会的インパクトなのかを問い続けることと、我々一人ひとりによる市民参加が鍵をにぎるということでした。

また、これからの1年で注目する社会的インパクトに関する動向については、SDG インパクトなどグローバルの潮流やローカルでの取り組み、また、より多様な視点、特にこれからの世代の視点を取り入れていく重要性もあげられ、次回Social Impact Dayへの期待もにじませつつ、3日間の総括としてのクロージングセッションを終えました。

参考資料

Social Impact Day2021を終えて(SIMI代表理事 今田克司)
開催報告(PDF版)

これまでのSocial Impact Day

第5回(2021年1月23日、25日、26日)3 days – Act on your Social Impact
第4回(2019年7月2日)インパクト測定とインパクト・マネジメントのエコシステム形成に向けて
第3回(2018年6月27日)社会的インパクト「評価」→「マネジメント」へのシフト
第2回(2017年6月29日)社会的インパクト評価推進に向けたロードマップ
第1回(2016年6月14日) いよいよ動き出す社会的インパクト評価の未来


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