Social Impact Day 2026 SIMIからのお知らせ

Social Impact Day 2026 開催報告

開催概要

● 日程:2026年6月17日(水)、6月18日(木)、6月19日(金)
● 場所:オンライン(Day1-3 セッション)/笹川平和財団ビル(Day2 懇親会)
● 主催:一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)
● 共催:公益財団法人社会変革推進財団(SIIF)
● 協賛:株式会社みずほフィナンシャルグループ、PwCコンサルティング合同会社、株式会社かんぽ生命保険、農林中央金庫、野村アセットマネジメント株式会社、インパクトサークル株式会社、株式会社博報堂、ニッセイアセットマネジメント株式会社、アンドパブリック株式会社
● 後援:金融庁
● 特別協力:中央日本土地建物株式会社、一般社団法人インパクトスタートアップ協会、一般社団法人IMPACT SHIFT、公益財団法人笹川平和財団

セッションレポート

※各セッションの概要・登壇者は、こちらをご覧ください


▼ Day1(2026年6月17日)
【オープニング】共創の航海、ここから始まる ― Social Impact Day 10年の軌跡と次の地平へ
【基調セッション】「コレクティブ・インパクト」の15年、そしてこれから

オープニングではSocial Impact Day(SID)の10年間の歩みを振り返り、続く基調セッションではコレクティブ・インパクトの最新トレンドと未来への展望が議論されました。

まず、SIMI評議員の渋澤 健氏より、10年の振り返りとして、社会的インパクト評価からマネジメントへの概念のシフトや、コロナ禍を経て人間活動が環境・社会に与える影響が数字を超えて可視化されたこと、また国の政策アジェンダに「外部経済の取り込み」が明記された経緯が共有されました。加えて、インパクトはレジリエンスと同義であるということや、今後のインパクトエコノミーにおいては、インパクトを生み出すナラティブが重要であるという点も示されました。

基調セッションは、佐藤淳氏のイントロで始まり、米国のコレクティブ・インパクト(CI)フォーラムから招かれた Jennifer Splansky Juster 氏が、自団体の歩みも含め、CIが提唱されてからの15年間の変遷を語りました。従来の「共通のアジェンダ」「共通の評価・測定システム」などの5条件を基盤としつつ、現在の複雑な社会課題に対しては「エクイティ(公平性・構造的不平等の解消)」を中核に据えた新しい定義へとCIが進化していることが示されました。特に、特定のコミュニティへのアプローチを通じて普遍的な成果を狙う「Targeted Universalism」の有用性や、成果を単独に帰属させずグループ全体で分かち合う「共創的リーダーシップ」の重要性が強調されました。CIの5条件に縛られることよりも、CIの参加者が共有の目標に向かってシステム変革の志を同じくする姿勢こそが、これからのインパクト・エコノミーを牽引する鍵になるとの言葉が残りました。


【協賛セッション①】農林水産業・地域活性化におけるインパクト創出・可視化の取り組み ~農福連携の現場の声を通じて~

本セッションは農林中央金庫の協賛セッションで、農林水産業や地域活性化の現場におけるインパクトの創出と、それを「可視化」することの本質的な意義について議論が行われました。

まず農林中央金庫の岡本氏から、全国組織の協同組織金融機関としてバランスシートの両面で自然資本に深く依存する同金庫が、なぜインパクト創出を経営の重要課題に位置づけているのかという戦略的背景が説明されました。
続いて、前橋地域における農福連携の実践事例として、長沼農園の長沼氏と障害福祉サービス事業所「ぶどうの木」の尾内氏が登壇し、インパクトサークルの大村氏と共同で作成した「インパクトブック」の具体的な取り組みが紹介されました。この取り組みでは、農作業が障害を持つ利用者の心にもたらす安らぎやワクワク感といったポジティブな感情変化を、現場で答えやすい独自の感情尺度(言葉を用いたアンケート)を用いて測定し、数値として可視化しました。

登壇者からは、この可視化によって単なるボランティアや慈善活動ではなく、農業者と福祉事業所の双方に実質的なビジネス・心理的効果がある実態が客観的に提示できたと語られました。可視化の意義として、支援員の新たな視点の獲得や、農業者が自身の仕事の多面的な価値に誇りを持つこと、外部のステークホルダーに対して農福連携の価値を説得力をもって説明するための強力な推進ツールになることが示されました。


【セッション①】新しい公益信託がはじまります!~第一号新規認可案件:認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ~

本セッションでは、2026年4月に施行されたばかりの新しい公益信託制度の概要と、その第一号新規認可案件となった認定NPO法人「むすびえ」の実践事例をもとに、新制度が持つ可能性と実務上の課題に関して議論が行われました。

内閣府の大野氏より、大正時代から続く従来の公益信託が抱えていた主務庁制による運用の硬直化や受託者の実質的制限、信託財産の金銭限定といった多くの制約が、今回の100年ぶりの大改革によって抜本的に見直された背景が説明されました。新制度では内閣府や都道府県による一元的な認可・監督体制となり、不動産や有価証券など多様な財産の信託が可能となりました。
むすびえの三島氏からは、地域における持続的な資金循環と市民参加の受け皿として新公益信託「むすびえ基金」を立ち上げた経緯が紹介されました。申請プロセスにおいては、受託者としての高度なガバナンス体制の構築や、信託管理人の独立性を担保するために外部の弁護士等の専門家ネットワーク(BLPネットワーク)から推薦を受ける仕組み、また目的設定の精緻化など、社会的な信頼性を確保するための具体的な工夫が共有されました。

今後の展望として、まだ世間の認知度が低い公益信託の認知拡大に向けた説明資料の整備や、審査に耐えうる内部体制の補強、伴走支援の担い手育成が不可欠であるとされました。また、行政の相談機会を積極的に活用しながら市民社会全体でこの新しいツールを育てていく重要性が強調されました。


【セッション②】B Corpムーブメントがにらむ「次なる資本主義」

本セッションでは、「Business as a Force for Good」を掲げてグローバルで1万社規模に拡大しているB Corpムーブメントの現在地と、2026年3月から導入された新基準の動向、そして日本における実践企業のリアルな声が共有されました。

B Market Builder Japanの溝渕氏からは、日本の認証企業が95社に達しアジア最大のコミュニティを形成していること、また従来の点数制から「コレクティブアクション」や「気候アクション」など7つのインパクトエリアの要件充足を必須とする新基準へ移行した背景が説明されました。

パネルディスカッションでは、バリューチェーンの川上(農業)の加茂谷スダチパーク・井出氏、川中(卸売業)のエヌ・ケー・中村氏、川下(製造・販売)のヘラルボニー・神氏が登壇しました。大量生産・大量廃棄のサイクルから脱却するための修理・メンテナンス体制の整備や、障害の有無といった違いを愛せる文化の醸成など、バリューチェーンの上流から下流まで行き渡る具体的な社会実装の取り組みが語られました。

登壇者からは、B Corp認証は単なる資格取得ではなく、自社の立ち位置を客観的に見つめ直し、同じ志を持つグローバルなネットワークと繋がるための共通言語であるとの認識が示されました。自分たちだけの正解に固執せず、他者との共創を通じてより良い社会を目指すための強力なツールとしてB Corpを活用する「次なる資本主義」の姿が提示されました。


【スペシャルセッション①】インパクトは何を変えたのか? ― 10年の軌跡と次の地平

本セッションは、SIMIおよびSocial Impact Dayの10周年を記念し、SIMI理事がこれまでの歩みを振り返り、次の10年に向けた本質的な論点を語り合う座談会として進行しました。

2016年当時、日本の社会的インパクト評価は海外から大幅に遅れているとされていましたが、2020年頃を境に政府のガイダンス策定や金融界によるインパクト志向金融宣言、UNDPのSDG Impact基準導入などが相次ぎ、プレイヤー層は一部の先駆者から経済界や政府全体へと急速に拡大しました。
この「制度化」と「普及」が進んだ現在地において、理事陣からは新たな課題が提起されました。認証の取得自体が目的化する「形式化・形骸化」や、既存の投資や事業のラベルを張り替えるだけの「再分類(リベリング)」が横行するリスク、さらには意図せぬハーム(弊害)への配慮不足への警鐘です。

議論の結論として、社会的インパクトの本質はシステムチェンジであり、その原点は「個人の意識変容」と「対話のプロセス」に他ならないことが再確認されました。インパクトマネジメントの実践が拡大する「量から質への転換期」において、うわべの数値や規格に捉われず、真の追加性(アディショナリティ)と実質的な社会変革を追求し続ける姿勢が、次の10年の地平を開くために不可欠であると結ばれました。


【協賛セッション⑥】「喜び」を生む体験設計が、持続的なインパクトを創出する ― 競合が共創する「DO REPAIRS」に学ぶ、生活者発想の社会実装

本セッションでは、アパレルやアウトドアブランドが競合の垣根を越えて共創するリペアイベント「DO REPAIRS」の事例が紹介されました。登壇したのは、立ち上げを主導したCYKLUSの平田氏、THE NORTH FACEの山下氏、体験設計を担当した博報堂Gravityの吉村氏、モデレーターの佐藤淳氏です。

『愛着を着る。』をステートメントを掲げるこのイベントは、修理を通じて「モノを長く使い続ける喜び」を伝える取り組みです。吉村氏は、人・社会を動かすには「環境のためにやるべき」という正論や義務感ではなく、純粋に「参加したい」と思える体験づくりが欠かせないと語りました。

競合するようなブランド同士が共創するための工夫や、運営側の工夫も明かされ、平田氏は「企業の壁を越えておこなう難しさがあるからこそ、越えたからこそ出せるインパクトがある」と強調。生活者のポジティブな体験を起点とすることで、ブランドを超えた持続的な社会変革を起こせる可能性を示す内容でした。


【セッション④】AI時代の社会的インパクト・マネジメントの設計論 ~価値形成・意味形成のプロセスを問い直す~

本セッションでは、生成AIの急速な普及が社会的インパクト・マネジメント(SIM)や評価の実務にもたらす変革と倫理的課題について、実践者による勉強会の成果と調査結果を踏まえた議論が行われました。

むすびえの伊藤泰久氏とオープンデータラボの長井英之氏らの報告によると、AIはリサーチやロジックモデルの構築、質的データの一次整理、報告書作成などの工程ですでに高い活用率を示しており、業務効率化の中核に組み込まれつつあります。一方で、AIが出力するデータの見かけの完成度の高さに人間が引き寄せられ、検証を怠ってしまうリスクや、ハルシネーション、マイノリティの声が平均化によって不可視化される弊害が指摘されました。
また、セッションでは、データから「価値」を判断し、組織や地域の文脈に落とし込む「意味形成(Sensemaking)」のプロセスこそが重要であり、ここにはAIが持ち得ない「動機」と「責任」を持つ人間が主導すべきであると定義されました。

対策として、ヒューマン・イン・ザ・ループによる二重のレビュー体制の構築や、AIを壁打ち相手として活用しながら人間が問いを再設計する仕組みが提案されました。AIによって生み出された時間的余力を、より深い仮説検証やリスクの予防、意思決定の質向上といった高度な価値創造に再配分する新たな設計論が示されました。


【協賛セッション②】インパクト“K”プロジェクト座談会 2026 ~実践から紡ぐ、インパクトの現場~

本セッションでは、LP投資家としてサステナブル投資に注力する株式会社かんぽ生命保険と、同社が出資するインパクト・キャピタル株式会社から高塚清佳氏が、日本PMIパートナーズ株式会社から川本めぐみ氏が登壇し、インパクト投資の現場における実務と課題について率直な対話が交わされました。

かんぽ生命の小林氏からは、経済的・社会的リターンの両立を目指すファンドへの出資を社内で適切に管理するための認証制度「インパクト“K”プロジェクト」の仕組みが紹介されました。この制度では、意図性や追加性、測定可能性といったグローバル標準の要件を言語化し、社内推進の軸としています。
高塚氏と川本氏からは、インパクト投資の現場におけるリアルな壁が語られました。既存の市場区分に囚われず社会課題軸で市場規模(TAM)を再定義することや、投資家ならではの貢献(インベスター・コントリビューション)を具体化する重要性が共有されました。また、すべての社会課題が投資の対象となるわけではなく、新技術やビジネスモデルによって採算化が可能な領域を見極めるリスクテイクの姿勢が重要であると指摘されました。

推進にあたっては、型化できる領域と属人性を残す領域のバランスを考慮し、数年単位の改善サイクルを回すための共通言語化と、社外の関係者を巻き込んだ外堀形成が有効であると結論づけられました。


Day2(2026年6月18日)
【スペシャルセッション②】日本のインパクト・エコノミー10年の歩み

本セッションは、2026年1月にオックスフォード大学Skollセンターが公開した「日本のインパクトエコノミー構築に関するケースシリーズ」をもとに、日本のインパクト投資の歩みと今後の展望について議論が行われました。

日本のインパクト投資市場はこの10年で18兆円規模に拡大し、政策の成長戦略にも明記されるなど大きな変化を遂げています。一方で、その内訳の約9割が融資等のデットであり、未上場株式へのエクイティ投資は2%に留まるという資金の偏りや、知恵・人材の不足といった課題も浮き彫りになっています。
また、資金提供者側の論理(大規模化やスピード)が先行することで、地域社会の実態やニーズとのミスマッチ(サイズや条件のズレ)が生じるリスクも指摘されました。

パネルディスカッションでは「あなたにとってインパクトとは何か」という本質的な問いが投げかけられ、投資家自身が現場に足を運び身体知を踏まえて謙虚に学ぶ姿勢や、地域住民一人ひとりの「変わった」という実感を循環させる重要性が語られました。

次の10年に向けて、日本が持つ「時間をかけて丁寧に聴き、包括的かつ合意形成型で進めるアプローチ」や「官民連携・協調型の意思決定モデル」は、非欧米型の発展モデルとして世界に貢献できる可能性を秘めており、当事者の声を意思決定に組み込み、資金が届きにくい現場へとリソースを大胆に動員していくシステムチェンジが今後の鍵になると示されました。


【セッション⑤】資本が「めぐる」地域をどうつくるか ―地域資本循環とインパクトの新しい視点―

本セッションでは、自然・文化・信頼などの地域資本を地域内で循環させる実践と、そこへ政策・大企業・CVCがどう関与しうるかについて議論が行われました。

中小企業庁からはローカル・ゼブラ企業の育成を地域資本循環の担い手育成として推進し、社会的インパクトを評価する「ものさし」づくりに取り組む方針が示されました。
地域の実践として、東近江市(東近江三方よし基金)は八千代エンジニヤリングと協働して流域データに基づき自然資本を可視化し、「三方よし森里川海インパクトファンド」の構想を共有しました。また、石見銀山(群言堂)は生活文化の継承や空き家を改修した場づくりを通じて外貨を獲得し、地域へ再投資する自治の仕組みを紹介し、それがヤマハ発動機のリジェネラティブを軸とした戦略と重なり、石見銀山でのモビリティ試行がされていることも紹介されました。

ディスカッションでは、共創の本質は組織ではなく人同士の共感や現場への純粋な関心であることが強調されました。最後にモデレーターのPwCコンサルティング北原氏から、地域共創を「社会貢献」や「現場の良い取組」で終わらせず、大企業の人的資本・事業構想力・顧客理解・将来の事業機会にどうつながるのかを協働R&Dを通じて可視化する構想が紹介されました。


【セッション⑥】進むTISFD基準の策定 〜ルール形成に関与するチャンス!

本セッションでは、気候変動や自然に続く「社会版」のグローバル開示フレームワークである「TISFD」の概要と論点が共有されました。TISFDは2025年に設立され、2026年5月にベータ(試行)フレームワーク・バージョン1を公表したところ。2027年後半に最終フレームワーク完成を目指しています。

基本思想として、自社従業員、バリューチェーン上のすべての労働者、消費者、影響を受けるコミュニティの4領域の「人」を経済・社会の中心に据えることや、インパクト(I)・依存(D)・リスク(R)・機会(O)の「IDRO」を概念枠組みとして活用することが推奨されています。注目すべきポイントとして、インパクトの観点からにせよ、財務の観点からにせよ、企業のマテリアリティから出発してIDRO評価を行うことが有効と考えられることや、個別の負の外部性が累積して生じるシステムレベルリスクが大きなテーマとして取り上げられていることが挙げられました。システムレベルリスクは、企業の長期的パフォーマンスに影響を与えることから、個々の企業がビジネス上の理由からもこれにいかに対処するかを検討することが不可欠です。

最後に、策定過程のフレームワークに対して積極的にコメントをインプットしていくことや、TISFDアライアンスに加盟してともにこれを作っていくことが推奨されました。


【セッション⑦】民官共創による、地域における社会的インパクト創出の可能性を探る ~「スポーツ」を活⽤した取り組み事例を通じて~

本セッションでは、人口減少やコミュニティ縮小が進む地域において、世代を超えて人々を巻き込める「スポーツ」を軸とした民官共創による、課題解決の可能性と課題が議論されました。

まず官民共創HUBより、課題の背景について、旧来制度と現代の実態との不整合から生じる「社会システムエラー」という捉え方と、その解決に向けた要素として、多主体連携や中立的な中間支援機能の重要性が提示されました。続いて株式会社shikakeruより、スポーツが共創を加速させる「アンプ力」「ボンド力」「レバレッジ力」の3つの機能が紹介されました。そして湘南ベルマーレからは、そのshikakeruとの具体的な協働実践として、小学生の探究学習を通じてサステナプレイヤーを育成する「サステナトレセン」におけると茅ヶ崎市の連携事例が共有され、子供たちのアイデア商品化やSROI(社会的投資収益率)取り組みという成果が示されました。また北海道上川町は、ミズノと協定を締結して屋内競技「Baseball5」を教育や地域経済のハブとして導入し、「始めるのは行政、続けるのは民間」という民間自走モデルへの移行事例を共有しました。

今後の課題として、より公共性の高い地域づくりへ座組みを開きつつ、事業としての継続性をいかに持たせられるかという点が挙げられつつ「スポーツを活用した地域における課題解決」に向けた展望や可能性が共有されました。


【協賛セッション③】ローカルスタートアップエコシステムはユニコーンを創出することが出来るのか? ―地方の社会課題解決型スタートアップ企業成長のための課題解決を目指し―

本セッションでは、地域発スタートアップのスケール条件やインパクトの増幅・増殖による地域エコシステムの構築がテーマになりました。地域発スタートアップがスケールしにくいボトルネックとして、マインドセットを持つ人材の不足や、身近な地域課題を起点とする事業のスケールしにくさ、ロールモデル不在の構造が指摘されました。

広島ベンチャーキャピタルからは「つなぐ広島」などの仕掛けを通じた地域エコシステム形成や、若手経営者とスタートアップの掛け合わせによる新規事業創出の活発化が共有されました。
休眠預金等活用のための指定活用団体であるJANPIAでは、新たに始まっている投資事業において、インパクト創出を最優先する「インパクトファースト」の方針を掲げています。これが呼び水となって多様な資金のバトンリレーをつなぐ重要性が強調されました。
鳥取発のONESTRUCTIONは、最初から県外・海外を見据えるマインドがあれば地域発でもスケールは可能であるとし、自社が成長企業として地域に資金循環や寄付の流れを生む土壌を作る決意を示しました。

総括として、ユニコーンを企業価値の基準だけでなく地域に雇用や産業を還流させる存在と捉え、ステージに応じた資金の役割分担や、多様なプレイヤーを巻き込んだ継続的な横の連携が重要であることが確認されました。


【セッション8】Value to Society × Value to Business

本セッションでは、インパクト会計や社会的価値の可視化を経営の意思決定へどう接続していくかについて、実務者の視点から議論が行われました。

B.LEAGUEの菅原瑠美氏は「感動立国 地域創生リーグ宣言」のもと、2026年9月から昇降格制度を廃止する「B.革新」により、地域密着・愛着を軸にしたサステナブルな事業成長を目指す方針や、可視化の事例として琉球ゴールデンキングスを挙げ、経済波及効果に加え、観戦による生活習慣改善や地域への愛着といった社会的価値の金銭換算(Willingness To Payによる182億円)を紹介しました。
アドバンテストの大杉健一氏は、自社の負荷(Own Footprint)だけでなく、製品が社会にもたらす価値(イネーブルメント・バリュー)を含めて「Value to Society」を定義し、VBA(Value Balancing Alliance)に参画して進めているパイロットスタディの実態を共有しました。
VBAのChristian Heller 氏は、金銭換算がサステナビリティの情報をCFOや投資家が理解する共通言語(貨幣)へ翻訳する有望な手段であることを強調しました。

パネルディスカッションでは、金銭換算を報告目的ではなく「意思決定のためのツール」として活用すること、そして数値以上に因果関係(ロジック)を明確化することが重要である点が確認されました。


【セッション⑨】インパクトフィランソロピー:社会変革を生み出すために

本セッションでは、米日財団在日代表の岡部晴人氏と、公益財団法人社会変革推進財団(SIIF)業務理事の工藤七子氏を迎え、社会変革を生み出すためにフィランソロピーが果たすべき役割を議論しました。

モデレーターのJapan Impact Instituteの松島拓は、社会変化への意図を起点に、資源や関係性を戦略的に設計し、学習を重ねる「インパクトフィランソロピー」の視点を提示しました。
岡部氏は、行政や市場では対応しにくい実験的な取り組みや、まだ社会課題として十分に認識されていない領域を支えることを、フィランソロピーの重要な役割として説明しました。また、米日財団による中間支援組織への助成、ネットワーク形成、日米の実践者の接続など、課題解決を支えるエコシステムへの投資を紹介しました。
工藤氏は、フィランソロピーを「社会にとってのリスクキャピタル」と表現し、失敗や批判の可能性を引き受けながら、誰も着手していない課題や社会システムの変革に挑む意義を強調しました。一方、自由度が高いからこそ、独りよがりに陥らないための規律と、インパクトに対する専門性が不可欠であると指摘しました。

議論を通じて、自組織の強みと役割を問い直し、支援先や他の資金提供者との対話を重ねながら、意図と社会のニーズを接続していく重要性が共有されました。


【協賛セッション④】インパクトの主流化へ 〜3メガバンクによるインパクトエコノミーの形成

本セッションでは、日本の3メガバンクグループが、インパクト志向の金融に関する戦略や具体的取組を共有しました。

みずほFGは、途上国への気候資金統計において純粋民間資金が算入されていない統計の課題を指摘し、民間金融の広範な役割を強調しました。また、気候変動「適応」ファイナンスの潜在市場の大きさを指摘し、ASEANにおける適応向け投融資ガイド策定への関与などを紹介しました。
三井住友FGは、新中期経営計画とともに「社会的価値創造宣言」を発表し、インパクトを活用した目標設定や開示、ビジネス展開を推進しており、アフリカのタクシードライバー向け融資事業(HAKKI GROUP)へのインパクト投資や東大との連携による心理・経済的アウトカム分析、法人営業へのロジックモデル導入を行っていることが紹介されました。
三菱UFJFG(MUFG)は、社会課題解決と経済的価値の両立を追求し、「先義後利」の価値観を存在意義に据えることを基本に、公的資金を組み合わせて民間資金を呼び込むブレンデッド・ファイナンスに注力し、適応分野に特化した「GAIAファンド」へのアンカー投資や地熱発電開発へのプロジェクトファイナンス等を行っている説明がありました。

ディスカッションでは、各行・FGとも社会の安定が自行の成長の前提であるとの認識が示され、それぞれが特徴ある試みを継続・拡大していくことで、社会全体におけるインパクト志向が進んでいく構想が示されました。


▼ Day3(2026年6月19日)
【セッション⑩】インパクト・ファイナンスにおけるインパクトの検証・保証の動向 〜BlueMarkの知見から

本セッションでは、グローバルでインパクト検証を牽引するBlueMark社の年次レポート「Making the Mark」第7版が2026年5月に公表されたことをもとに、独立第三者によるインパクト検証・保証の市場動向と日本市場への示唆が議論されました。

BlueMark社のLeijonhufvud氏によると、検証市場は拡大しており、共通指標の不在による横比較の困難さが指摘されています。インパクト測定・マネジメント(IMM)の実務者からは、「意図せざる負のインパクトのレビュー」や「イグジット時のインパクト持続性確保」が依然として大きな課題として取り上げられています。UBSのLee氏からは、アセットオーナーの視点から、第三者検証が「品質保証の印」として機能し、実質を伴わない粗雑な取り組みとの差別化や学習の機会に有効であるとの指摘がありました。

日本市場は融資が中心である特性を踏まえ、BlueMark社と格付投資情報センター(R&I)が共同で、日本の銀行の融資商品に焦点を当てた独自の検証プロダクト「Instrument ID」を開発中であることが発表されました。さらに、小規模ファンドに対するコスト障壁を解消するスライディングプライスの導入や、大量の文書処理や定性情報の要約における生成AIの活用など、実務を効率化・高度化する現実的な展望が語られました。


【セッション⑪】ラベルから対話へ ~デットのインパクトファイナンスにおけるエンゲージメントの最前線

本セッションでは、デット(融資・債券)領域におけるインパクトファイナンスの「質」を担保するための「エンゲージメント(対話や働きかけ)」について議論が行われました。インパクト志向金融宣言の融資債券分科会が策定したガイダンスを題材に、金融機関の実務者らが現場のリアルな課題や実践知を共有しました。

ガイダンス策定の背景には、ラベル付きファイナンスの拡大に伴い、形式的なKPI報告にとどまっている事例が見えていることが、インパクトファイナンスの伸長に対するリスクとして捉えられていることがあります。真のインパクトを発現させるためには金融機関による意図的な関与が不可欠であるという問題意識があり、ガイダンスでは、融資・債券の理想的な進め方を示す5ステップモデルや、適切な企業側カウンターパートを選定するための組織内関係者マップなどの「暗黙知の可視化」について記載しています。

現場の課題として、地域金融機関における行員の対話力不足や、大銀行における「インパクト」の定義の不一致、通常業務への組み込み(アドオン化)の難しさが挙げられました。これに対し、製造業の企業と5〜6年にわたり段階的に高度化を進めた長期伴走の成功事例や、担当者交代による意図の喪失でエンゲージメントにおける関係性が悪化した失敗事例が率直に共有され、組織的コミットメントの継続や金融機関自身の自己変革の重要性が確認されました。


【協賛セッション⑤】IMMの“壁”を越える-実務者のリアルから紐解く、インパクト測定・マネジメントの実践知

本セッションでは、「必要性は感じつつも進められない」というIMM(インパクト測定・マネジメント)のリアルな現場の壁を越えるための実践知が共有されました。

専門家であるImpact Circleの高橋氏は「可視化は手段であり目的ではない」と強調し、巻き込みたいステークホルダーごとに同じインパクトをそれぞれの「価値の言語」に翻訳・変換してコミュニケーションを設計する原則を提示しました。実践事例として、ONESTRUCTIONの佐藤氏は、建設DXにおいて日本語と英語版のTheory of Change(ToC)を公開し、専門用語を排した言語化により社内外の共通言語化や海外投資家との対話、地域連携を加速させた成果と指標選定の課題を報告しました。サイレントボイスの尾中氏は、リソース不足や「測定=大規模調査」というイメージが障壁となり、まだIMMを実施できていないというリアルな現場感を話しました。

これらの課題に対し、最初から完璧を目指さず、優先テーマを絞った設計から「小さく・軽く」始めること、そして取得したデータの手法や範囲を明示することでインパクトウォッシュを防ぐ誠実な開示姿勢が、現場のIMMを持続可能にする鍵であると結論づけられました。


【セッション⑫】こども視点が金融と社会を変える ―― 日本におけるChild-Lens Investing(CLI)の幕開けと官民共創の現在地

本セッションでは、投資プロセスにこどもの権利とウェルビーイングの視点を組み込む新たなアプローチであるチャイルド・レンズ投資(Child-Lens Investing:CLI)について、グローバルでCLIを牽引するUNICEF、こどもとともに成長する企業構想を推進するこども家庭庁に加え、国内で先駆けてCLI導入を検討する三菱UFJ銀行で、日本へのCLI展開に向けた現状と展望を議論しました。

こども家庭庁からは、子ども・子育て支援への取り組みが企業の持続的成長や企業価値向上に寄与するというエビデンスが複数示され、こどもとともに成長する企業構想に基づき、今年度中に各種取組を推進する方針が共有されました。三菱UFJ銀行からは、新興国向けの官民連携デットファンド「プロジェクトGAIA」等の投資事例が紹介され、こども関連のKPIを形式的ではなく、社会的に意味のあるアウトカムを重視して設計する実務でのポイントや、公的資本と連携したリスク分担(ブレンデッドファイナンス)の有効性が共有されました。

日本市場はインパクト投資市場の成長や国の政策の後押しを含めCLIの有望な市場として世界から注目されており、国内での実践事例を積み重ねてグローバルへ逆輸出していくエコシステム構築の展望が語られました。


【セッション⑬】企業の社会的価値志向経営モデル

本セッションは、企業が「社会的価値」と「事業的価値」を相乗効果のある形で両立・制度化する仕組みを明らかにする共同研究の中間報告です。国際的な評価フレームワークの共通要素から「意思」「戦略」「ガバナンス」など5つの必要要件を抽出し、それらを実際の経営に組み込むための仕組みを4領域に再整理しました。

有識者インタビューからは、大企業とスタートアップのモデルの相違やルールメイキングへの関与、経営者の内発的動機、非財務的力学などの8つの重要論点が紹介されました。また、4領域間の動態的関係を「ダイナミクスパターン」として類型化し、社会性への志向を起点に経営全体が自律的に動く「内発的動機ドリブン(クラダシの事例)」や、共通規格を策定し市場環境を形成する「ルールメイキング(ヤマハの事例)」などが解説されました。

実務の観点からは、大企業における社会的価値創出の属人性の高さ、短期評価と長期の経済合理性のジレンマなどの現場の壁が指摘されました。これらを乗り越えるため、社会的価値を本業のコア事業の価値と直結させ、組織内の「要所の結節点」を押さえた人事・報酬制度や意思決定原則の明文化を通じて、持続的な仕組みとして制度化していくことの重要性が議論されました。


参考資料

Social Impact Day 2026 を終えて(SIMI理事 高木麻美)
開催報告書(PDF版)

これまでのSocial Impact Day

第9回(2025年5月14日、15日、16日)インパクト・エコノミー地殻変動
第8回(2024年5月15日、16日、17日)インパクト・エコノミーが実現するシステム・チェンジ
第7回(2023年2月1日、2日、3日)新しい社会経済の形〜インパクト・エコノミーの社会実装
第6回(2022年1月21日、22日、23日)インパクト・エコノミーへの転換点– 社会的インパクト時代の到来 –
第5回(2021年1月23日、25日、26日)3 days – Act on your Social Impact
第4回(2019年7月2日)インパクト測定とインパクト・マネジメントのエコシステム形成に向けて
第3回(2018年6月27日)社会的インパクト「評価」→「マネジメント」へのシフト
第2回(2017年6月29日)社会的インパクト評価推進に向けたロードマップ
第1回(2016年6月14日) いよいよ動き出す社会的インパクト評価の未来

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